道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
全国的な通信障害、参院選中の銃撃事件。桜島は噴火をはじめ、コロナの波が急速に再び押し寄せる。
あたり前の常識は崩れ、「まさかないだろう」と思っていたことが現実になってしまう。日々の買い物でさえ、物価高が財布にチクチク針を刺す。
「現代は乱世である」——5月の入伝式で松岡校長が明かした衝撃の一言は、7月に入りますますその様相が色濃くなってきた。
「いつかよくなる」と根拠のない楽観をしていては何も変わらない。そうわかりつつも打つ手を持たず、悶々と日々を過ごしていはいないだろうか。
2022年7月30日、37[花]敢談儀の冒頭で、田中晶子花伝所長は「乱世の現在において、社会も型の重要性を感じはじめている」とその実感を吐露した。その相手は、「放伝生」と呼ばれる、花伝所(編集コーチ養成コース)プログラムを修了した29名である。
本楼スタジオに集う指導陣。守破学匠をはじめ講座を超えたイシス編集学校のメンバーもZoom越しで敢談儀のイニシエーションを見守る。
花伝生はプログラムを修了すると「放伝生」として「師範代認定」を受けとる。師範代となるお墨付きを受け取った放伝生は、今日の敢談儀を経て、「師範代」へとロールチェンジをしていく。
田中所長は、「型」を伝える編集コーチの重要性がますます高まりつつある今日で、敢談儀がどういう目的の場であるかを、校長松岡正剛の「花伝敢談儀」の書に託して共有した。
「『敢』は『敢然』のこと。今思っていることを『師範代』という立場で思い切って場に放つ。ただし、普通には戻らないこと」
「『談』は火が(二つではなく)三つになっていることに注目してほしい。『感知』の炎をメラメラと燃やし、特に何に感知したかに意識を向けてほしい」
「『儀』は『人』が二つ書かれている。それは、人と人との『あいだ』でおこなうのが編集であるため」
型やシステムを使うこと自体は、企業もしていることであり、むしろ得意とする領域でもある。しかし、時として「型」は形骸化し、本来の機能を発揮できなくなってしまう。田中所長は、イシスにはそうならない仕組みがあると断言する。
イシスには、型を伝える師範代を養成する花伝所プログラムの前に「守」「破」の稽古があります。このプロセスがイシスならではの仕組みです。
放伝生のみなさんも、「型を学ぶ学衆」から「型を伝える師範代」となるべく花伝式目演習の重ねる中で、「守」「破」で学んだ型や編集術が何度も呼び起こされたものではないでしょうか。
型をいかすには「連想」が必要になります。モード編集をはじめ連想力を高めるプログラムである「守」「破」が花伝所の前に設えられているのもそのためです。
ー田中晶子所長
これまでの常識や慣例といった「従来の型」がもはや通用しない現在は、未知を取り入れ新しい価値創造へ向かって再編集とアウトプットできる人材が、今までにもまして必要となる。一人ひとりがもつ編集の才能を引き出せる唯一のロールが「師範代」なのである。
「リアルヴァーチャルな空間で、特に師範代に擬いて発言や振る舞いをしていってください」という田中所長のエールで、敢談儀はスタートした。
校長松岡正剛による「花伝敢談儀」の書。よく見ると、火の粉のようにも花片のようにも見える朱が散らされている。
深谷もと佳花目付。「ライブでの問感応答返に徹してほしい」「共読してほしい。必ずしも共感する必要はありません」と敢談儀に臨むカマエを語る。
普段はビビッドなファッションが印象的な深谷花目付だが、今日の敢談儀では淡い色調でやわらかな素材の服をチョイスした。「元々シャープな服を予定していたけれど、今朝の天気と共読の場を想像してこちらに着替えることにしました」(深谷花目付)
校長松岡も絶賛する穂積晴明デザイナーは、Zoom用の待受デザインによって師範代へ向かう放伝生の背中を押す。
穂積は、文字そのものがもつ「型」を尊重しつつも、「(●などの)幾何学模様を入れる」「(横線を伸極端に伸ばすなど)対称性を破る」「(ゴンベンの「口」の部分を波状にするなど)ノイズを入れる」といったように、紋切り型にならないアウトプットを常に心がけているという。「ノイズを入れる方法として、今回は新たにネガポジ反転を試してみました(『談』の部分)」(穂積)
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)