発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

編集稽古とは?指南とは?初めて編集学校を知る人に「編集コーチ」の醍醐味をどんな風に伝えようか。花伝所の指導陣6名は、いつも以上にドキドキしながら、8月21日(日)本楼に集った。
[花]のオンラインエディットツアーの参加者は、通常[守・破]の稽古を終えた学衆が多いが、今回は珍しく7割が編集学校初体験。とはいえ、花伝所がツアーを開催するからには、指南擬きと相互編集の価値を伝えるワークは欠かせない。回答と指南の共読で広がる編集の可能性を知ってもらうべく、参加者には、少し背伸びをしてもらい、学衆と師範代擬きの二刀流にチャレンジしてもらった。さて、どんな腕試しとなったのか。
当日の進行役は林朝恵花目付。冒頭で編集学校のしくみを説明しながら、「編集は不足から生まれる」「問いを持って情報を見る」という2つのキーフレーズを掲げて先の道標を示した。
牛山惠子師範(右)は、アイスブレイクの自己紹介ワークをフレッシュにスタート。「部屋にないものに「ご主人様である、あなた」について語ってもらいましょう」と、あえて身近に「あるもの」から離れた自己紹介を試みてもらう。
「部屋にないもの」の回答は多様に広がる。「牧草がない」「目覚まし時計がない」「浴衣がない」「ピカソのゲルニカがない」「食器棚がない」「ピアノがない」。一つとして重なる回答がない。「ないもの」から連想される「わたし」は不思議とその人の特徴を纏い出す。「なぜないのか?」その問いを受け、紡がれる言葉から個々の数寄や背景が滲み出る。「編集は不足から生まれる」に通じる。
問いに応じるステージから、他者の回答をよくよく観察して言語化する「師範代メガネ」を借りるステージへ。吉井優子師範は、他者の回答を発見的に見ることを促す。多様な回答を導き出す編集稽古において、指南がどのような役割を果たすのか、発見の目をどれだけ持てるかがカギとなる。
[守]の回答例「扇子を【ウィダーインゼリー】に見立てて、「ロボットの話が入る落語」をする」さて、これをどう指南するか?37[花]きっての名コンビの錬成師範、堀田幸義師範(左)、佐藤健太郎師範(右)は、参加者から指南の視点となる「発見」を引き出し、それを元に指南文を書き上げる。編集稽古における回答と指南の交わし合いをエディティング・モデルの交換と呼び、ここに無限の可能性が広がる。
表舞台から裏舞台へ。花伝の要でもある田中晶子所長は、オープニングからラストまでZoomの番人として場をサポート。編集稽古を始めれば、誰もが回答も指南もできるようになる。日常も社会ももっと面白くなる、そんな思いを重ねながら、この場に臨んでいた。
(1段目左から)本楼の全景、林朝恵花目付、吉井優子師範、高本沙耶師範代。(2段目左から)稲森久純師範代、山下雅弘師範代、牛山惠子師範、森川絢子師範代。(3段目左から)深谷もと佳花目付、田中晶子所長、佐々木千佳局長、佐藤健太郎師範。(4段目中央)堀田幸義師範。指導陣全員でスクショで記念撮影をパシャリ。スペシャルゲストとして参加していた新師範代4名の生き生きとした編集語りと参加者の意識の高さに次の守への期待が高まる。
顔もほころぶ新師範代からは、「刺激的な時間だった」「参加者の方々の積極性がすばらしい」「教室で活躍しそうな人たちばかり」と興奮気味に感想の声があがった。ついこの前まで学衆だった新師範代たちが参加者の前で堂々と花伝の体験を語る。このサイクルこそイシス編集学校の「わかるとかわる」であり、型が継承されていくということである。
50[守]はきっと特別な期になるだろう。
世阿弥の能が乱世で必要とされてきたように、今この時代だからこそ、編集へ。迷わず入門、入伝へ!
写真・文 林朝恵(花目付)
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イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
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43[花]特別講義からの描出。他者と場がエディティング・モデルを揺さぶる
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。