松原: 穂積さん、ありがとうございました。私のリコメンドといえば、梅澤奈央さんが書かれた福田容子さんのワークショップ記事ですね。梅澤さんのエディストデビュー作です。これからのエディスト記事の、ひとつモデルにしたいと思いました。
金: 梅澤さんと話していて思ったのは、ちょっとした違和感をすごく大事にしている感じがしました。書くときも、この表現は使いたくないとか、違和感がその人のスタイルになる。
吉村: 梅澤さん自身が日常のコミュニケーションや社会の中で、違和感があるということをそのままにしない。それがベースにあって、基本的なライティングスキルがしっかりしているので、いい記事になりますね。
松原: そうですね。ポイントとして、編集学校の出来事を、「まだ編集学校を経験していらっしゃらない方々にも伝わるためには?」という、内と外のブリッジを考えながら、記事をまとめられたということでした。
吉村: 今年はひとつ、新しい連載企画があるんですよ。梅澤さんには、華厳の善財童子さながらに、編集梅子として編集道を探りながら、様々な編集先達をインタビューで数珠つなぎしていってもらおうかと考えています。
金: タイトルは「編集サプリ(仮)」で。梅子が師範から知識人まで突撃するという記事ですね。最終的なアウトプットを、本として出版できるくらいにやってもらいたいと思っています。今後、書籍化を目指した連載はいろんな人にチャレンジしてもらいたいですね。
川野: その話、この前も大阪で話題になりました。笑っていいとも!のように、話を聞いた先達が、次に話を聞く先達を指名する、なんていうアイディアも出てきました。実際どうなるか、楽しみですね。
吉村: 僕のオススメはやっぱり、シーザーDUST井ノ上ですかね。Dust王として、エディストでスタートからひとり突っ走ってくれています。エディストは多様でいいと校長も言っていますが、井ノ上さんがオープン以来、独自のDust路線で量産しているのは頼もしいです。どれがいいかというのは選び難いですが、どれも記事が短くて、軽快な記事ですよね。
金: これは取り上げられた人は実際どう思っているんですかね?
吉村: 喜んでいるっぽいけれども(笑)。この前、迫村さんにお会いして話したら、僕がまるで変人みたいじゃないですか、と言っていましたが、どこか楽しそうでした。感門司会の江野澤さんのリハーサルで涙流しちゃったという記事も、本人はうれしそうにしていましたよ。
金: そういうことでいうと、林頭が僕を取り上げてくれた「男は何をつぐなうのか」というのは、自分のことが記事になっていてうれしかったですね。骨を折って書いてくれているのが伝わってきますしね。編集学校の日々のことを書くのは、たとえDustであったとしても、いや井ノ上さんのDustであれば、なおさらみなさんうれしいと思います。
吉村: 講座からのニュースも、支所の記事も、役割が定まってきた感じがしますよね。何をどこまでやっていくのか、やっていきたいのがはっきしてきて、うまく回り始めてきた。これからもエディストを使い倒すくらいの気持ちで記事を書いてほしいです。
川野: 軽いタッチの記事群ですけど、井ノ上さんご本人はすでに「Dust道」みたいなのを意識しているふしがあります。凝り性の少年の編集を感じますね。対象のいじり方でいうと、吉村さんのほうが、もっとずかずかいじりに行く感じですよね(笑)
(ここで田中晶子花伝所長が乱入)
田中: 私はNest記事が好きです。小倉さんのいいですね。深谷さんもらしさがある。香保さんのは、マリークレールに出してもいいと思いますね。(そして、言い捨てて去っていく)
田中晶子 編集的先達:アーサー・O・ラブジョイ
吉村: 小倉さんの記事は、小倉さんのご著書の編集者であるCCCメディアハウスの方も気に入られているそうで、書籍化という話も少し出ているそうですよ。香保さんといえば、上杉くん。2020年は、上杉・香保音楽対談が連載になるんですよね。香保さんがピアノをひきながらやるということもあるの?
上杉: (ニヤリと笑いながら)あるかもしれません。
作曲家や演奏家、楽曲形式や和声などについて、編集工学的な視点での香保さんのお話を色々と伺っています。新年から連載予定です。大物ゲストもいずれ参加する予定なので、お楽しみにしていただきたいですね。
(離れたところに座っていた八田律師が口を挟む)
八田: 私はねえ、後藤さんの、本〆會の記事―。写真がいい。特に最後の、松岡さんの足を投げ出している写真は、後藤さんだから撮れると思いますねー。
八田英子 編集的先達:沢田研二
後藤: あれは校長のディレクションで(笑)
八田: 後藤さんの校長の写真のセレクトがすばらしい。何かを伝えようということが感じられますよね。
吉村: 校長への愛ですか?
後藤: 愛。もちろんあります・・・。
(沈黙に割って入る佐々木局長)
佐々木: はい。私は「編集かあさん」に一票。松井路代さん、吉野陽子さんのコンビに川野さんが指南をしていくというチームで、子ども編集学校プロジェクトとしても期待しています。
佐々木千佳 編集的先達:中村桂子
川野: トピックは大きくいえば「新しい教育」に向いてはいるんですけど、あくまでも我が子を側で見つめる視点から出発しているので、実感的なのがいいですよね。俯瞰的な視座からの考察ももちろんいるのですが、私も教員ですし、「現場からじわじわ考えていること」を開陳していく、ということを大切にしたいと思います。
金: みなさん、やっぱりそれぞれのスタイルを掴み始めていますね。12月に、[破]師範の渡辺高志さんの記事を見ましたが、最初の頃とは違って”たかしスタイル”ができてきました。景山師範も日刊スポーツデスクの本領発揮といいますか。スポーツ新聞記者っぽくなって、個性が出てきている感じがしますね。この短期間で、これはすごいんじゃないですかね。
吉村: 昨年末に編集工学研究所内で話をしていて、編集ライティング講座もつくれるかもしれないねという話をしていたんですよ。記事を書いて、そこに指南が入ってフィニッシュに持っていく、という一連のプロセスを、方法を意識しながら繰り返すことで記事が書けるようになっていくことを実感しますね。
松原: 今年、みなさんがエディストとして取り組んでいきたいことや抱負をお聞きしたいですね。今年は編集学校が20周年を迎えます。
後藤: 2010年の10周年のときに参加した感門之盟が本当に印象的で、その時に一番強く編集学校を意識したと思います。6[離]の退院式と校長校話で異世界を見た、という感じがしました。当時、私は[破]の学衆だったのですが、その場にいることがとても素敵な事だなと思えた。20周年では、今度は場を提供する立場として関わっていきたいです。エディストとしては、八田律師にも褒めてもらえましたし(笑)、写真でどこまで伝えられるか、ということに挑戦していきたいですね。
イシス編集学校 10周年 感門之盟「乱世の編集」
2010年7月31日(土)NEW PIER HALL(東京・港区)
能楽師・安田登さんも登壇し、1000夜『良寛全集』の一部を朗読した。
最後はお決まりの写真撮影。
上杉: 今はライターが目立ちますが、教室で師範代が記事を共有したり、SNSにあがったものをシェアしたり、リツイートしてくれる方がいらっしゃったり、色々な関わり方があると思うんです。そのあたりも、方法的に再編集し合えたら楽しそうですよね。
もうひとつは、エディストというメディアがあるからこそ生まれる新しい交流の機会が増えればいいなと思います。香保総匠との対談も、金さんからのやってみたらという無茶ぶりが始まりでしたが、実際やってみると、ものすごく面白い。ライターのみなさんも「この人から話を聞いてみたい」ということ、あるんじゃないかと思うんです。メディエーションの場としていい意味でエディストを使い倒すというか、口実にするというか(笑)。そうした交わし合いを記事としてアウトプットするのは、エディストライターとしてもいい編集稽古にもなると思います。
松原: 上杉さんの話にも重なりますが、私はエディストを「対話の場」にしていきたいですね。いろんな思いでみなさん編集学校に関わっていると思うんですね。そのいろんな思いがいろんな形で表れていて、それがまた対話を生んでいく。「編集は対話からはじまる」ということがありますが、まさに、多様な方々との対話から、誰も予期しなかったようなエディストを、みんなで生み出していけたら素敵ですね。20周年を超えてさらに、エディストが、内も外も境界も越えて、みなさんが交し合える場になるといいなと思っています。
川野: 「地域性」と「こども」という二つのお題をもらっていると考えています。ここまでもイシスがずっと考えつづけてきたことだと思うのですが、いよいよ人もノウハウも集まってきて、実際に世に問う局面になっているのだと感じています。編集を必要としている人に編集を届ける、ということを実現させる最先端に立っていると思って、お手伝いをつづけていこうと思います。エディストが発信源となるイベントも開催できたら面白そうですね。
吉村: システムな話ですが、エディストはコメントもつけられますからね。そうすると、メディアとしても対話的になっていくと思います。今年はそういう実験もしていきたいですね。お題を出してみるというようなインタラクティブな企画もやってみましょう。広本方印との当初のプランも成仏させたいですし(笑)。
金: いまエディストでは、編集学校内のコンテンツや出来事をどうやって記事にしていくかは、方法としてほぼほぼ書けるようになっていると思うんです。まだまだやりようはいくらでもあると思うけれど、汁講のことも、[守]や[破]の中での出来事もほぼほぼ修正なしでアップできるようになってきた。ニュースバリューが見えるようになってきたんですね。
それが出来たうえで、今度は梅澤さんの連載のような記事を書いていってほしい。エディストライター全員が連載もの、企画ものを抱えていてもいいくらいです。このあと、新年1月4日からは、田中優子先生のインタビュー記事が掲載されていきます。そこで優子先生が、イシス編集学校にある可能性をみていることが語られます。編集学校の人たちがどう学んで、どう生きていくのか。詳しくは読んでいただきたいのですが、将来的にはエディストがそこまでコミットできる場になってほしい。このメディアを通じて、実現したいことをみんながやれるといいのかな。現時点ではメディアとして内向きすぎだというコメントがあったりするけれども、そこが今年はだんだん払拭されていくんじゃないかなと期待します。
吉村: 1月から金くんも僕も関わっている多読ジムもはじまりますしね。
金: 多読ジムは読書なので、パッケージとしての本が介在する。おそらく、誰が読んで面白いものになると思います。また、多読ジムには、エディストからのお題もあります。果敢にチャレンジしてもらいたいですね。エディストは、それぞれの持ち味、スタイルを生かしたものになってきているので、多読ジムからも独自のスタイルが生まれてほしい。
吉村: 校長が、日本には今スタイルがないんじゃないかということを、昨年の本〆會で言っていました。なおかつ手続きがコンテンツになって、コンテンツが手続きだということも言われていた。今年はコンテンツと手続きを、まるごとエディストでつくっていきたいですね。それぞれの持ち味、関心、持っている能力を活かしたりしながら、多様なスタイル、モードで突出きていくといいと思う。
松原: 2020年、林頭としてやっていかれたいことは?
吉村: 20周年記念として、大きな感門之盟が2020年9月21日に予定されています。エディストとしても、感門に向けた企画をやっていきたいですね。20周年以降のNEXT ISISは、これまで編集稽古で充実してきたものを、リプレゼンテーションしていく、メディエーションしていくことが大事だと思っています。そのなかでも、遊刊エディストが一番のインターフェースになると思っているし、していきたいと思っていますね。
金: 20周年が、編集学校自体の大きな節目になれるよう展開できるといいですね。
おわり
2020年の遊刊エディストもどうぞよろしくお願い致します。今年が皆様にとって素晴らしい一年でありますように。
2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 前編
2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 中編
2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 後編
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
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