「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
Q:姪っ子が漫画ばっかり選んで読むのはどうなんでしょうか? (Mさん・東京都)
A:
Mさん、ご質問ありがとうございます。
姪っ子さんが漫画ばかり読むのが心配なご様子。
漫画ばかりでいいのかな、字がメインの本も読んでほしいなというのがMさんの願いのようですね。
広義には漫画も本ですので、姪っ子さん、読書自体はお好きなのだとお察しします。
漫画には漫画で、独自の表現のバラエティがありますよね。テレビ時代劇もすっかり下火ですし、歴史的な描写などは、子どもにはむしろ漫画から入ってもらう方がいいくらいではないかと思います。
百聞は一見にしかずという、絵ならではの説得力は、子育てにも大いに借りていきたいところです。
煎じ詰めると必要になってくるのは、漫画から活字の本への橋渡しというところでしょうか。その方法について、ご一緒に考えてまいりましょう。
●漫画を読む時に起こっていること
文字を順番に読んでいく活字本に対して、漫画はひとコマの中に(あるいは、コマをまたがって)描かれている絵や吹き出し、擬音などの多くの要素を瞬間的に結びつけながら読みます。
場面やメッセージ性に合わせて、コマ割りや中の要素が配置されていますので、作品の世界観を感じとることも同時に行われます。
ストーリーを先読みしながら読む、という想像力も要求されます。
漫画読書にはそれらを読みとる面白さがあります。その読みの面白さを感じていくと、段々、自分なりの楽しみ方を発見していきます。
自分の読み方を見つけられると、活字の本はもちろんそれ以外の活動にも広がっていくように思います。漫画を読むことも編集なのです。
ちなみに、私の息子は幼稚園の時、好きなドラえもんの漫画を読みたがりました。読み聞かせてみると、「今、どこ読んでるの?」と、絵本の読み聞かせでは見せたことのない反応をしました。見開きのどこを見ていいのか分からないという息子の様子に、漫画の難しさに気づきました。そこで、吹き出しをひとつひとつ指さしながら読みました。1年ほど経った今は、自分で読み進められるようになりました。絵本とは違う読みの進み方をするということがわかりました。
●漫画から活字の本への橋渡し
ここでご提案ですが、Mさんと姪っ子さんがおもしろい漫画を貸し借りしていく間柄になってみてはいかがでしょうか。
その延長線上で、活字の本も「この本、面白かったよ!」と貸し借りしあえるようになると、自然に活字の本へも興味が広がっていくと思います。
今、姪っ子さんが活字の本を読まないか(選ばないか)の理由には、おもしろい活字の本に出会っていないことがあるかもしれません。
また、活字の本を読むスキルがないからおもしろさを感じられていないという場合でも、興味のあるものなら、少々難解な本でも、子どもは分かるところだけ拾って読んでいくことでしょう。
専門分野を舞台にした漫画もたくさん出ていますので、姪っ子さんの興味ありそうな分野の漫画を紹介してあげてはいかがでしょうか。
漫画から、姪っ子さんが興味のある分野を自覚するという展開もあり得ます。
姪っ子さんが、実はMさんの前では活字の本を読んでいる姿を見せていないだけ、ということもあり得ます。影で力を蓄えたい願望とでも言うのでしょうか。読書はプライベートな行為でもありますから、おかしなことではありません。無理なく「共読」への扉が開くとステキですね。「それ、私も知ってるよ」と匂わせられるようにしておくことがミソです。この人は話せる!と感じた時、子どもは心を開いてくるものですから。
Mさんと姪っ子さんの読書ライフが充実したものになりますように。
吉野陽子
編集的先達:今井むつみ。編集学校4期入門以来、ORIBE編集学校や奈良プロジェクトなど、18年イシスに携わりつづける。野嶋師範とならぶ編集的図解の女王。子ども俳句にいまは夢中。
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