編集的トポスへの新たな入口 ─多読アレゴリア×図書街─

2024/11/12(火)08:00
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千夜千冊は別世への「扉」だと、イシス編集学校の田中優子学長は言う。

 

【ISIS co-mission INTERVIEW01】田中優子学長―イシス編集学校という「別世」で

【ISIS co-mission INTERVIEW01】田中優子学長―イシス編集学校という「別世」で

千夜千冊は「扉」です。ひとつの扉を開けてみると、その本の内容がわかるだけでなく、ほかの本のつながりも見えてきます。

 

 

千夜千冊が別世への「扉」なら、多読アレゴリアは新たに生まれた編集への「入口」だ。

 

開講を1ヶ月後に控えた2024年11月3日、豪徳寺本楼で工冊會(こうさつえ)が開催された。多読を企む面々が一堂に会し、それぞれのプランを披露し、研鑽しあった。

 

現代社会は表現を制限し画一的になっている。システム維持のためにリスクを避け標準に向かう。多読アレゴリアはその逆をいく、別の焦点を持った方法だと吉村林頭は言う。

 

多読アレゴリアでは師範代がみずからクラブを立ち上げ、それぞれ異なるお題を掲げて活動する。読衆はクラブを選んで参加する。そこには当然、凸凹が生まれる。多様にならざるを得ない。だからこそシステム全体が編集を起こす。

 

多様なクラブが生み出すアウトプットは、イシス編集学校の内と外に現れ、社会のあちらこちらに根をはるはずだ。そのフィードバックは共有知となり、「図書街」という別の世界を構築する。

 

 

松岡正剛「図書街」

 

「図書街」とは、松岡正剛のドローイングをもとに構想された、ユニバーサル・コミュニケーションが可能な電子空間。800万冊の本の収納を想定。

制作 編集工学研究所/独立行政法人 情報通信研究機構

 

その本がどこから来たのか、誰がどう読んだのか、その背後や隣りにある本はなにか。本と本の関係を空間的に把握することで、新しい関係を見いだす。多読アレゴリアがつくる共同のトポスが、あらたな編集的マザー・プログラムとなる。

 

図書街構築メンバー:梅澤光由、齋藤彬人、滝本力斗

登壇した齋藤と滝本は「図書街」構想を説明し、ともに共有知を組み立てる仲間を募集した。(撮影:後藤由加里)

 

 

多読アレゴリア フライヤー(デザイン:穂積晴明)

 

多読アレゴリアが図書街という生きた空間を生み出す。新たな自己編成プログラムの創出だ。

 

0521夜『一般システム理論』ルートヴィッヒ・フォン・ベルタランフィ

ベルタランフィは生物を「開放システム」とみなし、生命体の各部がつねに「自己」をとりまく環境とのあいだを動的に調整しながらオーガニックな自己編成をしていると見た。

 

多読アレゴリアはイシス編集学校とは別の編集への入口だ。多様な企み、多様な場が用意されている。編集稽古体験の有無は問わない。むしろ編集学校の外からの来報を歓迎したい。

 

アイキャッチ撮影:後藤由加里

 

Info 多読アレゴリア

 

【URL】https://shop.eel.co.jp/products/detail/765

【定員】300名

【開講日】2024年12月2日(月)

【申込締切日】2024年11月25日(月)

【受講費】月額11,000円(税込)

 ※ クレジット払いのみ

 ※ 初月度分のみ購入時決済

  以後毎月26日に翌月受講料を自動課金

  例)2024冬申し込みの場合

    購入時に2024年12月分を決済

    2024年12月26日に2025年1月分、以後継続

 ※申込後最初の期間(2024冬)の間は

  イシス編集学校規約第6条に定める

  期間後の解約はできません。

  あらかじめご了承ください。

  → 解約については募集概要をご確認ください。

 

 *希望するクラブの申請はお申し込み後、

  随時希望クラブ申請メールをお届けさせていただきます。

 

2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。

1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、

そちらをご利用の上、2クラブ目以降をお申し込みください。

 

 

 

【多読アレゴリア開催期間】

2024冬:2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)

 

 

  • 阿部幸織

    編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。