真夏の夜の日比谷公園。人知れず生まれ出たのは天使か悪魔か。
7月下旬から8月上旬にかけてはセミの羽化の最盛期。日没過ぎに近場の公園を散歩してみたら、生命の不思議にじっと見入るセイゴオ少年に出会えるかも。

「一人も入ってこないかもしれない」。
ゆうこ師範代がつぶやいた。7月8日、19時半。汁講の開始まで30分を切った頃だった。イシス編集学校の田中優子学長は、55[守]酒上夕魚斎教室の師範代の顔も持つ。教室では、親しみを込めて「ゆうこ師範代」と呼ばれる。その指南はスピード感にあふれている。部屋にいれば即レス。移動中にはスマホを駆使。問いを挟み対話を深める。回答前の挨拶から、お題を離れて雑談が広がることも。稽古と遊びが混じりあう濃密な教室だ。
そんなゆうこ師範代に初めての汁講の日がやってきた。辻志穂師範代率いるヤキノリ微塵教室とオンラインでの合同開催。ふだん学長として凛とした姿を見せているが、打ち合わせ中に不安の声が漏れたのも当然かもしれない。画面越しとはいえ、学衆と初めて対面するのだから。もちろん辻師範代も初めてだが、こちらの方が落ち着いている。笑顔で、ゆうこ師範代を励ました。好対照のコンビは息が合っている。
20時。ヤキノリ微塵教室の学衆がトップで入室してきた。汁講の2日前に行われた特別講義「佐藤優の編集宣言」で顔を合わせていた3人は、さっそく声を掛け合う。それが合図のように、次々と学衆が入ってくる。そのたびに名前を呼び掛け、顔をほころばせて出迎える。あっというまに場が温まる。「一人も来ないかも」は、まったくの杞憂だった。
自分を焼き栗に見立てた田中優子師範代
最初のプログラムは、お菓子にたとえて自分を語る「オカシな自己紹介」。ゆうこ師範代は自身を「焼き栗」に見立てた。そのココロは、一皮むかないと本物にはたどり着けないところ。殻をむくように徐々に親しくなり、打ち解けた相手とは深い付き合いになるところだという。ちなみに好きなお菓子も栗だとアピール。「モンブラン」と「小布施堂の栗きんとん」がお気に入り。「そのお店、近所です」という学衆に、思わず「うらやましい」と本音がこぼれた。
続くワークショップでは、名物お題の「ミメロギア」に全員で挑む。第2回番ボーのお題でもある。師範・師範代から数分置きにお題が出る。「蛍・蝉」「熱・光」「煎茶・ほうじ茶」…。テンポの速さに「千本ノックですね」という学衆も。それなのに、初めてとは思えない反応の速さ。チャット欄に回答が次々アップされる。そのひとつひとつにゆうこ師範代は即指南で応えた。
全員で記念撮影
歓談タイムの冒頭、「破に進んでほしい」とゆうこ師範代が熱を込めて語った。「できない、と思うかもしれないけれど、手を付けるとできてくる。みなさんの編集能力がやってくれるんです」。辻師範代も破で印象に残った体験を話す。守の先も見えてきたところで、学長でもあるゆうこ師範代に、質問が集まってきた。
「江戸を研究していて不思議な体験をしたことは?」
「軽やかな文章を書くには?」
「自分の回答に自信がないんです」
「回答に向かえるおまじないがあれば教えて」
どんな質問にも丁寧に答える姿はまるで人生相談。時間を延長しても話は尽きない。名残を惜しみながら、汁講は幕を閉じた。
「師範、汁講は1回と決まっているわけではないですよね」。そう口にしたのはほかでもないゆうこ師範代本人だ。気持ちはすでに、第2回、第3回に向かっている。
景山和浩
編集的先達:井上ひさし。日刊スポーツ記者。用意と卒意、機をみた絶妙の助言、安定した活動は師範の師範として手本になっている。その柔和な性格から決して怒らない師範とも言われる。
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