近大生、目指すは「アレ」や-52[守]景山組ドキュメント(1)

2023/11/06(月)23:08
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 守護神の如くいつだって守稽古の現場に張っているのが52[守]で番匠を務める景山和浩だ。秘めたる涙もろさと機を逃さぬ俊敏さを武器に、近大生の編集稽古ドキュメントを連載し、エディスト紙上を席巻しようと目論んでいる。第1回は52[守]開講日に行われた交流会を取り上げる。


 

 11月なのにアツい。夏日が続く。大陸から暖かい空気が入り込んでいるのだと気象予報士が話していた。だが、大阪がアツいのは、それだけが理由ではない。阪神―オリックス、プロ野球日本シリーズのせいでもある。1964年の南海―阪神以来、59年ぶりの関西決戦。関西人の半数以上が未体験ゾーン。もちろんわたしも生まれていない。そんな歴史的なシリーズにふさわしい試合だった。8点取れば8点取り返す。サヨナラあり、エラーあり、完投あり。同じ関西を地元にするチーム同士、意地の張り合いのような試合は最終第7戦で決着がついた。勝ったのは岡田監督率いる阪神タイガース。38年ぶりの日本一。熱戦の余韻で、まだまだアツさが続きそうだ。

 

 阪神が日本一を決めた京セラドームから電車で25分。大阪の南に位置する近畿大学(近大、東大阪市)もアツい。52[守]に近大生17人が入門したのだ。開講日の10月30日には、近大ビブリオシアターで恒例の交流会が開かれた。

 

 稽古をフォローする「近大番」も現地に集った。50[守]で「釣果そうか!教室」師範代を務めた稲森久純、52[守]番匠の阿曽祐子、景山和浩の3人だ。今期は稲森組、阿曽組、景山組と分かれ、それぞれが5~6人を担当する。今まで以上に近い距離で稽古に並走する。いってみればサブ教室。よろず相談承ります。

 

 編集工学研究所からは学林局の衣笠純子がはるばる駆けつけ、Zoomの向こうには近大番をサポートする後藤由加里がスタンバイ。5人で近大生を囲む隙のない布陣を組んだ。ところが、リアル参加した学生は4人。オンライン1人。あれ? ちょっと寂しい。でも参加した学生はユニークだ。ある女子学生は、自己紹介で「元気に見えますが、いま『2徹』しています」と告白。2日間一睡もしていないとは、これが10代の体力なのか。そのまま稽古も走り続けてほしい。ついでにしっかり睡眠もとってほしい。

 

 景山組は6人のうち2人が参加。ともに4回生だ。週4回朝ジムに通うという法学部のHさん。マンガ雑誌を週5冊のローテションで読んでいるという。数寄は強み。マンガをぜひ回答に生かしてみよう。

 もう一人は、「若輩者ですが」と点呼に答えたら、同じ教室に小学2年生がいたという総合社会学部のMさん。昨年12月、近大で行われたハイパー・エディティング・プラットフォーム[AIDA]でプレゼンを担当したという。編集工学に既になじみはじめている。Editcafeの操作も慣れたものだ。

 

 交流会では001番のお題「コップは何に使える?」を全員で回答した。
 Hさん「グッズを製作できる」。なるほど、コップには絵を描いたり印刷したりできるし、形も加工できる。記念グッズも立派な使い道。いきなりそんな発想ができるなんて、すごいよ。
 Mさん「古代から進化しない形状に思いを馳せる」。おっ、ひねってきた。コップのプロトタイプとしての形は太古から変わっていない。歴史の主人公も同じ形のものを使ってきた。遠い過去へと思いをはせることができるコップは、情報を乗せたタイムマシーンでもあるんだね。

 欠席した4人も全員が001番を提出した。中には004番に進んでいる者もいる。いまは稽古のリズムをつくる時。回答を出し続けることが大事。どんどん進めていこう。

 

交流会ではEditcafeの使い方を説明、お題001番に全員で回答する

 

 日本一となった阪神は「アレ」をスローガンにした。「アレ」とは「ARE」。Aim(目標)・Respect(リスペクト)・Empower!(パワーアップ)の頭文字をとったものだ。でも、それは後付けだろう。岡田監督は就任以来、「優勝」を「アレ」と言い換え続けていたのだから。選手に余計なプレッシャーを与えない配慮。それをそのままスローガンにし、優勝したという言い替え編集の賜物でもある。

 

 近大生17人、景山組の6人も稽古は始まったばかり。大学生活で得られない体験ができるのがイシス編集学校。われわれも「アレ」をスローガンにお題に向かおう。


 [A]アナロジカルに、[R]リバースしながら、[E]エディティングを!

 

 みんなで編集稽古にバオ~ス(さあ、行こう)!

  • 景山和浩

    編集的先達:井上ひさし。日刊スポーツ記者。用意と卒意、機をみた絶妙の助言、安定した活動は師範の師範として手本になっている。その柔和な性格から決して怒らない師範とも言われる。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。