炙られて敲かれた回答は香ばしい【89感門】

2025/09/20(土)19:46 img
img JUSTedit

おにぎりも、お茶漬けも、たらこスパゲッティーも、海苔を添えると美味しくなる。焼き海苔なら色鮮やかにして香りがたつ。感門表授与での師範代メッセージで、55[守]ヤキノリ微塵教室の辻志穂師範代は、卒門を越えた学衆たちにこう問うた。

「まだまだ炙られ足りないのではないでしょうか?」

辻は、教室に届いた300を超える回答に向き合った。回答をさらに香ばしくするように指南で炙ってきた。学衆と師範代のあいだをつないだのはヤキノリの香りだった。かつて42[花]入伝生であった辻が自身に刻んだ言葉がある。

「自らが敲かれ台になる」

他者の眼差しを受け容れて相互編集を起こすため、自らすすんで敲かれ台を差し出す。敲かれ台とはいわゆる仮留めのことだ。教室では仮留める勇気が必要だ。仮留めの姿勢を、辻はヤキノリを炙りつづけることで体得したのだ。

「たっぷりと炙られて、どんな微塵なものにも手を抜かず、世界を香ばしくしていきたい」

香ばしい世界を紡ぐため、辻は万全を期して55[破]に打って出る。

55[守]のチーム「彩蒐」(景山和浩師範、田中優子師範代)が辻の心の支えになっていた。

 

アイキャッチ/福井千裕

文/齋藤成憲(43[花]錬成師範)

  • イシス編集学校 [花伝]チーム

    編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。

  • しっかりどっぷり浸かりたい【89感門】

    ここはやっぱり自分の原点のひとつだな。  2024年の秋、イシス編集学校25周年の感門之盟を言祝ぐ「番期同門祭」で司会を務めた久野美奈子は、改めて、そのことを反芻していた。編集の仲間たちとの再会が、編集学校が自分の核で […]

  • ノリエ飛びこむ水の音【89感門】

    「物語を書きたくて入ったんじゃない……」  52[破]の物語編集術では、霧の中でもがきつづけた彼女。だが、困難な時ほど、めっぽう強い。不足を編集エンジンにできるからだ。彼女の名前は、55[守]カエル・スイッチ教室師範代、 […]

  • 本を纏う司会2名の晴れ姿【89感門】

    司会2人は本を纏った。  青井隼人師範と石黒好美番匠率いる第89回感門之盟が2025年9月20日、豪徳寺本楼でスタートした。 感門之盟のテーマは「遊撃ブックウエア」。EDITOR SHIP エディターシップを取り上げ、 […]

  • 渡を越え、カマエ直し継ぐ【88感門】

    五色の衣から二十の世界に着替え、56[守]へ走りだした。 今期の花伝所は勢いがあった。第88回感門之盟・放伝式冒頭で所長・田中晶子に「なつく」と評されたように、放伝生たちは、師範から技を盗もうと、何度も応答を繰り返し、ど […]

  • 沖縄から届け!──お菓子割込編集【88感門】

    機があれば、欲張りに貪欲に、くらいつく。 第88回感門之盟に参加できなかった43[花]錬成師範・新垣香子は、インターブッキングに参加することで、残念を果たしたはずだった。しかし、参加したいという念は、それだけでは消化でき […]