恋した修行僧――花伝所・師範インタビュー

2025/09/24(水)08:17
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纏うものが変われば、見るものも変わる。師範を纏うと、何がみえるのか。43[花]で今期初めて師範をつとめた、錬成師範・新坂彩子の編集道を、37[花]同期でもある錬成師範・中村裕美が探る。


 

――なぜイシス編集学校で学ぼうと思ったのですか。

 

数学科の教員から探究科に異動することになり、どのような授業を組み立てたらいいか手探りだったので、色々調べたんです。そのとき、『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング)に出会いました。文系と理系という反する属性を合わせた、編集工学研究所って面白いと思い、読み始めました。根っからの理系で読書に苦手意識があったのですが、型を使って読むということが、面白いくらい読書イメージを崩してくれましたね。教材も提供しているということで、編集工学研究所に問い合わせて、そこで親身に対応してくれたのが佐々木千佳局長でした。すぐに対話の場を設けてくれて、やりたいこと引き出してくれました。授業で取り入れることになって、生徒に提供するなら、自分も編集を学ぼうと、入門しました。

▲新坂を編集工学へ誘った一冊


――なぜ師範代を目指したのですか。

 

型を絶対習得したい。それならば、教える側にならなければ身に付かないと思っていたので、迷いなく、47[守]・47[破]・37[花]と進み、50[守]師範代までやりました。愉しいから続けるというより、修行のような感じです。一度決めたらやり通す、みたいな。

 

――破の師範代登板には、少し時間があきましたね。

 

秋から春にかけては、学校のイベントが土日にあることが多いんです。[守]登板がその時に重なっていたので、へとへとになって、ひと息いれたくなりました。51[破]に登板しないか声をかけてもらったのですが、その時は忙しいシーズンだったので断りました。でも何か心残りがあって、次の期に、枠が空いてれば登板したいと連絡しました。

 

――師範としてみた花伝所はどうでしたか。

 

入伝生だった頃の師範の言葉がわかるようになりました。眠くてうつらうつらしながら書いた指南に、厳しい指導が返ってきて、こんなに頑張っているのに、どうしてこんなこと言われなくちゃいけないんだと思っていました。でも、頑張っていることを否定しているわけじゃないんですよね。見ている部分が違う。もっと先に向かって伸びていけるための言葉だったんです。一人一人とじっくり向き合って、この人にはどう応接しようかと、すごく時間をかけて考えている。その人の持ち味を磨くための言葉を放っている。師範をやってみて、それを強く実感しました。花伝所時代、道場で吉井優子花伝師範の研がれた言葉に涙したのですが、その言葉の背景が今ならわかる。

 

――道場付の錬成師範として見た道場はいかがでしたか。

 

私がいたしろがね道場の岩野範昭花伝師範は、24時間ゆるやかな臨戦態勢でした。ずっと見守っていて、道場での出来事を受け取りながら本質を突く。ここぞというときに方法によって背中を押す。道場生2名の途中離脱があったのですが、ずるずる負の雰囲気にならなかったのは、このカマエが効いていたと思います。こういうことが、自分にはない部分。入伝生に刺さるような言葉を発したいのに、できない。

 

――第88回感門之盟の冠界式では司会に抜擢されました。相方は中村麻人さんという、あの千夜の数学コンビでしたね。あの千夜が掲載された時、かなり驚きました。

 

私も驚きました。公開直後にたまたま本楼で汁講をしていて、その時に校長とお会いして、「どうだった」って聞かれたんです。どうもこうも、びっくりしたとしか言えず。だってインタビューしてないんですよ。すべて校長の想像。でも私が言いそうなことが書かれている。

 

▲新師範代たちを揺さぶった冠界式での数学コンビ

 

――お次は離に進むそうですね。決めたきっかけは。

 

忙しい時期に重なるのですが、開講時期が限られているし、“今”と思ったので。錬成指導で、[離]を経た師範がもつメッセージが強く、私もその強さを手に入れたくなりました。そして何より校長に会いたい。学衆の時に分からなかったお題や本の内容が、今になったら分かるようになっている。Season4「意識と情報のAIDA」を受講したのですが、その時ほぼわからなかったのに、今『擬』(春秋社)を読んで、見えてきた部分がある。校長の考えが再生される。だから、[離]ではたぶん校長と会えると思います。

 

花伝師範・岩野は、新坂のことを、コンスタントに場に出続けることができ、わからないことを、さっと相談できると評している。この新坂の修行僧のような筋の通った凛とした佇まいは、生徒から声をかけにくいと言われるらしい。しかし、道場についてたずねたとき、道場生一人一人を思い浮かべ、語る様子には熱がこもり、惜しみなく想いを吐露した。会いたい気持ちが、新坂を編集道の先へと歩ませる。その先では、花伝扇を受け取った新坂が、校長を再現する番だ。(中村裕美)

 

アイキャッチ・文/中村裕美(43[花]錬成師範)
文中写真/齋藤成憲(43[花]錬成師範)


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