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ウィキリークスの機密文書暴露、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃、ジャスミン革命からアラブの春へ。渡會眞澄が師範代をつとめていた時期に起こった事件である。世界はきな臭く不穏な動きを見せていた。一方、イシス編集学校は10周年を越えて、松丸本舗とともに新たなスタートを切ろうとしている時代だった。渡會が師範代を全うして、その修了を祝うはずであった感門之盟。その2日前に3・11が起こる。
震災の負を抱えながら、2012年に第8季[離]に進んだ渡會は退院後、沖縄に移住する。沖縄で病院事務に携わり、三線を手習いし、イシス編集学校で師範、番匠、風韻講座の連雀を歴任。渡會が沖縄で考えつづけていたのは、内側と外側の問題、境界のことであったろう。うちなーんちゅにとっては、どこまでいっても自分は内地から来た人間である。自分は何が編集できるのか、何を語っていくべきなのか。ISISフェスタ(2020年)では、沖縄在住の師範代とチームを組んで「沖縄エディットツアー」を開催した。
師範代から10年。イシス編集学校20周年の節目に開座した多読ジムで、現在はスタジオゆいゆいの冊師として、日々の編集力、読書力の鍛錬に余念がない。イスラームにも関心を深めているという。10周年から20周年、そしてその先へ。世界の境界、社会の境界を凝視しつづけている。