ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。
川邊透
2025-10-14 18:21:48
「それってなんなの?」。菅野隼人さんは常に「問い」を見つけ、「問い」を深めています。「問い」好きが高じて、「それ哲ラジオ」というポッドキャスト番組を始めてしまったほどです。
そんな菅野さんがイシス編集学校と出会いました。いったいどんな変化があったのでしょうか。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は、菅野さんの哲学×イシスという「探検」をお送りします。
■■宝物のぬいぐるみはどこにある?
なぜ、ある人にとっては「古びた汚いおもちゃ」が、別の人にとっては「宝物のぬいぐるみ」でありうるのか。
この問いが、私の思索の原点にあります。世界は「もの」の集まりです。ぬいぐるみは、誰が見てもぬいぐるみ。しかし関わる人によって、その意味は正反対にまで変わります。よくよく考えてみれば、とっても不思議です。
けれどもこの不思議さは、3年ほど前、西田幾多郎の弟子である山内得立(やまうちとくりゅう)の哲学と出会い氷解しました。
「意味の世界は必ずしも事物の存在とは同一ではない、それはそれ自らとして一つの世界を構成している」(山内得立『意味の形而上学』岩波書店)
彼は、「ものの世界」とは別に「意味の世界」があると明言します。コップは何かを入れる「もの」ですが、時には遊び道具になったり武器になったり、その意味を大きく変えます。私たちが何気なく「それは何?」と尋ねるとき、そこには「ものの世界」だけでなく、「意味の世界」が開けています。
では、この「意味の世界」とは、どのように生きるものなのでしょう。
この問いが、ここ数年の私の大きな壁でした。そもそもこれは、解けるような問いなのか。手がかりすら見つけられないまま、何かが手に入ると信じ、様々な哲学を学び続けてきました。
(その軌跡を、ポッドキャスト「それ哲ラジオ」として公開しています。)
▲「哲学の面白さを広めたい!」と2022年5月に始めた「それ哲ラジオ」。すでに配信回数は350回を超えた。
そんな時に巡り合ったのが、イシス編集学校です。
ここに、壁を壊すきっかけがあるかもしれない。縋るような気持ちはありつつ、けれど期待をし過ぎないようにして、入門しました。
下げた期待とは裏腹に、編集学校での日々は衝撃の連続でした。「きっかけ」どころか「工具一式」があるじゃないか。「意味単位のネットワーク」を活用して「38パターンのわたし」に気づいたり、「見立て」によって本来は無関係の「バラン」と「怪獣」がつながったり。1つ1つのお題で学ぶ型が、私にとっては「長年向き合ってきた壁を壊せる工具」だったのです。
そしていま、[守]を卒門し思うこと。それは、編集とは「意味の世界で豊かに生きる術」ではないか、ということです。
「ものの世界」に囚われているかぎり、コップはコップであり、汚れたぬいぐるみはそれ以上の何物でもありません。しかし、編集は「すべての事物は多様であることを前提とする」と学びました。ここでこそ、1つのコップが持つ意味は豊かに広がり、「宝物のぬいぐるみ」は「意味の世界」から姿を現してくれるのです。
編集という術に出会ったことで、私の「意味の世界」での探検が、やっとここから始まります。
より深く編集を学ぶことで、より豊かに「意味の世界」に生きることができるはず。
この確信が、次の学びへと私を導いてくれています。
文・写真/菅野隼人(55[守]類想ゼスト教室)
編集/チーム渦(角山祥道、大濱朋子)
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【稽古期間】2025年10月27日(月)~2026年2月8日(日)
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ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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