イシス編集学校にひとつのウワサがある。最近、“松岡正剛校長Love”な若手メンズが編集学校に急増しているらしい。エディスト編集部では、それらしき3人の若手メンバーにひとまず話を聞いてみることにした。すると、水を得た魚とはこのことか!息つく暇なく口をついて出てくるのは、松岡校長や編集工学へのあくなき思慕、秘めた思考や連想だった。
そこで場を改め、2022年8月某日、若きメンズの熱量と独自のアナロジーの源泉はどこにあり、どこへ向かうのか。その生態を紐解くべく、オンライン鼎談の場を用意した。
(聞き手:エディスト編集部 上杉公志、マツコ)
マツコ 今日はみなさんが“松岡正剛校長Love”だということでお集りいただいたのですが、そういうことでよかったですか?
網口、山内 うんうん、と、うなづく
加藤 小さくうなづく
マツコ よかった!ではお互いにほぼ初めての間柄ということなので、自己紹介からしてみましょうか。
網口 では先に。僕が松岡正剛さんに出会ったのは20歳ぐらいのときです。『嵐にしやがれ』(日本テレビ、2010年放映)で、松岡校長が嵐とマーキング読書法をやっていたんです。その時期は自分で読書をはじめた頃でもあり、ちょうど好きな書籍の個所が千夜千冊で取り上げられていたのをきっかけに興味を持ちました。その後はどんどん深みにはまっていきましたね。
1991年生まれ、大阪在住
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●編集学校歴:
<学衆として>
33[守]アルス・アクセル教室(野崎和彦師範代/竹川智子師範)
33[破]稜線シンデレラ教室(宮原由紀師範代/大音美弥子師範)
8[綴]モロイ・メロス文業(岡村豊彦師範代/森美樹師範)
36[破]庭先ホロン♪教室(野嶋真帆師範代/森井一徳師範)
27[花]からたち道場(竹島陽子花伝師範)
12[離]洞響院(小坂真菜美別当師範代/井田昌彦別番/福田容子右筆)
<師範代として>
42[守]初音ミク太郎教室(後藤由加里師範)
43[破]初音イズタロー教室(小路千広師範)
立正佼成会[縁]1期つもりつもって、つもり教室
山内 僕は高校の頃、入試の過去問を勉強している時に出会いました。もともと現代文を読むのが好き、解くのが苦手で点数は取れないんですが、ひたすら自習室にこもって現代文を読んで読書して帰ることが続きました。その中に、松岡正剛校長が書いたものがあって、おもしろい!と直感めいたものが走って、この人に師事しようと思いました。(参考:OTASIS26 国語問題のミステリー)
2001年生まれ。東京在住
●Edistで見る山内貴暉:
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●編集学校歴:
45[守]縁カウンター教室(後藤陽子師範代/森由佳師範)
48[守]はいから官界教室(竹岩直子師範代/中原洋子師範)
48[破]点閃クォート教室(大濱朋子師範代/渡辺高志師範、福田容子師範)
山内 塾で校長に出会った日、帰り道に書店で初めて手にした本が『擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性』(春秋社)です。この本は絶対に試験が終わった後に、ゆっくり腰をすえて読む!と決意して、決して開けないけれどもいつもバッグに潜ませておくという、奇妙な付き合いをしました(笑)
それをきっかけに、大学4年間は校長の本しか読んでいないといっても過言ではないです。90冊ぐらいあるんですよね、すべて読んでいます。もうすぐ終わってしまいそうで悲しい。でも、これからも新刊が出版されるので、昔の記憶と再編集しながら楽しみたいです。松岡歴は4年、まだまだ青いです。
マツコ 網口さんの松岡歴は?
網口 10年ぐらいです。が、青いです(笑)
マツコ いや、青くないですよ、むしろたぶん、濃ゆい(笑)
加藤 僕の松岡歴は1年?2年くらいです。小さいころから、「勉強」ではなく「学ぶこと」にずっと興味があったんです。でも、学ぶモデルというか、学びが深まっていくモデルが見つからなくて、それを探していたんだと今は思います。21歳の時、図書館でたまたまウロウロしていたときに、『多読術』(ちくまプリマー新書)と『知の編集術─発想・思考を生み出す技法』(講談社現代新書)を見つけてからですね。
マツコ 図書館をウロウロして校長の2冊に出会う確率は相当低いでしょうに。これは運命ですか?
1999年生まれ。東京在住
●Edistで見る加藤陽康:
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●編集学校歴:
47[守]アレンジ万端教室(中原洋子師範代/中村麻人師範)
47[破]レディ・ガラ教室(長島順子師範代/渡辺高志師範)
48[破]MOT勿体教室(岩橋賢師範代/竹川智子師範)
マツコ 皆さんにはぜひ「初めての松岡正剛体験」を伺ってみたいと思ってたんです。初めて出会った松岡正剛はいかがでしたか。
加藤 僕は守を受講し終わったころ、イサム・ノグチ展を見に上野に行きまして。あれは夏でした。行ったら、松岡校長がそこにいて……。
マツコ えーー、びっくりですね!!
加藤 校長ですか、と尋ねたら、「いかにも」、とおっしゃって。
網口 えっ、ほんとに「いかにも」といわれたんですか?
加藤 そうなんです。それで、今度の感門之盟にまいります、と伝えたら、(校長のような低めの声で)「はいはい」、と言われました。そのあと、感門之盟に参加してお話をさせていただいたときに、「あの時はよくわかったね」とおっしゃられたんだけど、美術館に入る前の売店のところで煙草をすっているところからして、校長そこにいるやん!と思って(笑)。最初は怖かったですね、緊張しました。
上杉 2021年に東京都美術館で開催された展覧会「イサム・ノグチ 発見の道」展ですよね。公式カタログに、校長が文章を寄稿していた関係で行かれてたのですよね。(参考)
マツコ 1年は365日もあるのに、同じ日の同じ時間にそこへ行っていた。なんて偶然!
加藤 しかもコロナ禍で、1時間ごとの入場制限もあったんですよ。
マツコ さらに出会う確率が狭まるのに、やっぱり運命ですか?!(笑)感門のときにも覚えていてくださったんですね。
加藤 はい、お話ししてくださってうれしかったです。松岡正剛という人物を何も知らずに、初めて触れたものが2冊の本でした。印象は実はあっさりしていたかもしれない。感門之盟ではリハーサルにも参加して、緊張しながらも校長の動きを追っていたんですが、常に面白さのために動くというか。その瞬間に思いついたものをどんどん入れていって形を変えていくことの一貫性が見えてきて、フットワークが軽やかだという気がしました。それが最初の印象です。
2021年の年末にも、本楼の本棚掃除に参加したのですが、校長の隣でドーナツを食べました。脂っこいから半分食べてよと言われ……
マツコ わー、その構図いい!
加藤 そこで校長が“オツ千がいいね”という話をして、吉村林頭やデザイナーの穂積さんが“ありがとうございます!”と答えていた雰囲気も、僕にはラフに見えたんです。この人には近づけないという感じより、よい距離感でいられそうな方なのだなと思いました。 (参考, 2020年末に実施された本棚掃除の様子)
網口 加藤さんが感じた松岡校長のラフさを僕が覚えたのは、師範代をやり始めてからですね。あんなにすごい人やのに、身近に接してくださるんですよね。
僕の最初の松岡正剛体験は、京阪電車の貸切りイベント「エディットトレイン」でした。2年ぐらいかけて、一人で本を50冊ほど読んで過ごした後、編集学校に入ろうと思ったんです。その2か月ぐらい前、松岡正剛が関西に来るということで、初めて生の松岡正剛を見にいきました。
ボアアダムス(バンド)のギターの方と、「進ぬ!電波少年」でケイコ先生役の方が浪曲をやり、松岡校長が稲垣足穂を朗読し、それらを混ぜ混ぜしながら5両の走る電車内でパフォーマンスをするんです。
2013年12月22日に催された「エディットトレイン」の様子
(出典:『アートエリアB1 5周年記念記録集 上方遊歩46景』(大阪大学出版会))
網口 枚方まで行って帰ってくる電車には、40人程が参加し座席に座っていました。それで、僕の座っていたところへ、松岡正剛が朗読しながら向こうから歩いてくるんですよ。そして一瞬バッと僕のほうを見た! 目の前に松岡正剛の顔がバンとあって。その時に感じた校長は重厚な感じでした。レオナルド・ダ・ヴィンチが好きなんですが、ダ・ヴィンチがワープして現在に現れたかのような存在感。
そのあとホールで実施したイベントも、一番後ろで見ていました。重たい声と存在感で、文化人というイメージでした。
加藤さんのドーナツという話がすごくうらやましいんですが(笑)、師範代になりはじめてからは「近所にいる和尚さん」というか、そういう気軽さを感じて、「尊敬と身近」という相反する2つのイメージが今はあります。
上杉 それは2013年にあった、大阪中之島のアートエリアB1の「鉄道芸術祭」ですね。松岡正剛プロデュースで、「上方遊歩46景」を2カ月ほど開催していたようです。(参考)
網口 松岡校長が撮影した、京都に住まわれていたころの思い出を語る写真が展示されたり、動画が流れていたり。終わった後も校長がウロウロしていらっしゃったのですが、その時は声かけずに帰りました。
マツコ そこにいるのに声をかけられずに帰った21歳の若かりし網口さんだったんですねぇ。
網口 何を話していいかわからなかったんです……。本物がいる!動いている。しゃべっている。という気持ちで。声の音圧も響いてくるので、すごいなと思ってただ見ていました。
山内 皆さん、いいですね。僕にはまだこれといった思い出がないんです。
上杉 やはり師範代をされていたりすると、松岡校長とも接点が持てるので、出会える機会が多くなるもしれないですよね。
山内 あの、実は僕、今までいちども直視したことがないんですよ。
マツコ ん?
山内 そもそも、電子を通じてしか、ネットワークを介してしか見たことがなくて。直接的に松岡正剛を網膜に投影したことがなくて。
一同 その表現!!(笑)
山内 「情歴を読む」のイベントに参加した時にはお目にかかれなかったんです。だから今からが、すごく楽しみなんです。
上杉 最近の佐藤優さんや村井純さんが登壇された情歴イベントの時には、ずっと本楼にいらしたんですけれどね。
山内 じゃあ、すれちがいでした。自分にとっては、大学入試が終わってすぐ読んだ本で松岡像を描いたのが最初でした、『擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性』(春秋社)です。松岡校長と同じく、なんとしても早稲田大学に行ってやろうと思って受験したのですが、結果は別の大学へ。しょうがないかと思いつつも、何としても思想は理解したい。だから、1回は校長を見てみたいですね。直接お会いして、印象を抱いてみたいです。
上杉 松岡校長はエディストをもれなく読んでいるそうです。この記事で山内さんの思いも校長に伝わっているはず。松岡校長、読んでますかー(笑)
マツコ じゃあ、山内さんが初めて松岡校長を網膜に直接投影した時には、記念して、ぜひEdistで記事にしてくださいね!
松岡談義はつづく……
次回は、松岡オシ若手3人衆のクロニクルに迫る。
(1)推し活の始まりはいつ? (現在の記事)
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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