ゆっくり、のんびり、一瞬で――56[守]師範代へのエール【88感門】

2025/09/15(月)12:01 img
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 遅ればせで登場しながら、教室中の注目をかっさらう回答を放つ。高橋英子の編集センスはとびきり光っていた。
 
 2024年9月14日、私は〈斜格多義る教室〉の師範代として第84回感門之盟に臨んでいた。「すごいことに気づいてしまったんです」。開会の直前に会場に到着した高橋英子は、私の顔を見るなりそう言った。「私たちは編集を学びにきていたんですね」。編集学校に入ったのだから、そんなの当たり前ではないか、と思ってはいけない。これは、編集学校で学んでいたのは「編集とはなんたるか」という主題ではなく、私や世界を動かすための方法だったのだという、重大な気づきなのだった。その後高橋は、53[破]、43[花伝所]と進み、休まずその身に編集の型を通し続けた。
 
 そしてこの秋、彼女は56[守]師範代として登板する。第88回感門之盟の冠界式で授かった教室名は〈連菫ポレポレ教室〉。「ポレポレ(pole pole)」は、スワヒリ語で「ゆっくり、のんびり」を意味する単語から取ったらしい。学衆時代の高橋の稽古の歩調は、確かにゆっくり、のんびりだった。しかしその足取りは決して重くはなく、むしろ不思議と軽やかだった。その軽やかさは、どこまでも自由に飛んでいける連想力と、その連想をこともなげにきゅっと一瞬で、一言にパッケージできる要約力に由来する。高橋英子師範代は、その持ち前の編集センスで、対話を斜めに繋ぎ合わせ、教室を熱くたぎらせてくれることだろう。
 
 

イシス編集学校 第56期[守]基本コース募集中
申込締切:2025年10月12日(日)
稽古機関:2025年10月27日(月)~2026年2月8日

詳細・申込はこちらから
https://es.isis.ne.jp/course/syu
  • 青井隼人

    編集的先達:テッド・チャン。琉球諸語を専門とする言語学者で、助詞の一つに編集の魂を見出す師範。見た目そのままに実直な人柄で学衆からも慕われ、登壇すると待ってましたとばかりに青い風船を振って黄色い声援で迎えられる。