偶有性の中で何が起こりうるのか。【180回伝習座】

2025/09/27(土)16:42 img
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仮面の下の素顔とは──?

壇上で、文化人類学者・今福龍太さんの新刊『仮面考』のカバーが外され、広げられて、裏返された。そこには大小さまざまなテキストの塊がびっしりと並んでいる。ぱっと目に入るのは、「離脱せよ」。重要なテキストは裏にこそあったのだ。

 

 

半期に一度の「伝習座」。イシス編集学校全コースの師範と師範代たちが本楼に介し、学衆に示すべき指南について交わし合う場で、今日9月27日で180回を数える。昨秋の178回から無料ライブ配信の形をとり、ISIS co-missionメンバーの講演と、守破離三匠による校長講話の再生の2部構成で展開してきた。

 

今回、第一部のゲストが今福龍太さんで、進行役を務めるイシスの左近、右近と「花綵列島の新たなる憲法」をテーマにセッションを行う。冒頭の一コマは、右近・小島伸吾が今福さんを迎えるにあたって明かした仕掛けのひとつ。いわば前口上だ。

「仕掛けはまだたくさんある。どこまで引き出せるかは、僕ら左近と右近、そして皆さんの引き出し次第。

落語や音楽ライブのように聴衆の食いつきで全てが変わっていく、その偶有性を楽しみたい」と場の形成を促した。

 

左近の金宗代もまた、「今日この場のコンティンジェンシーで何が起こりうるか」だと繰り返す。壇上のデスクに置かれた陶器の人形やマスクを指して「ここにも何か予兆というか、秘密を握った何者かがいますね」と意味を含ませた。

 

 

 

そしてセッションは始まった。今福さんはイシスの多読アレゴリアで「群島ククムイ」を慣習している。裏と表を行き来しながら、3人の乗せた難破船はどこへ向かうのか。

 

 

 

 

本番前の一コマ。金宗代の装いは花綵柄のインド更紗に黒の染めの「重ね」。小島伸吾の黒いソフト帽は今福龍さんの白と「対」で

 

(写真/細田陽子、今井早智)

  • 今井早智

    編集的先達:フェデリコ・フェリーニ。
    職もない、ユニークな経歴もない、熱く語れることもないとは本人の弁だが、その隙だらけの抜け作な感じは人をついつい懐かせる。現役時代はライターで、今も人の話を聞くのが好き。

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