マクラを投げろ、トミーと叫べ――声の48[守]

2021/10/31(日)13:00
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 48[守]は、トミーの声で幕を開けた。

 

 定常コース16教室、計117名の学衆とともに、10月18日に開講した48[守]だが、師範代は何日も前から開講準備に勤しんでいた。アイコンを作り、ウェルカムメッセージを整える。そして開講前日に、「編集稽古のしくみ」などを教室に届ける。
 多くの教室は、17日のお昼前後に投稿した。ところがこの男だけは違った。トミーこと「今さら今こそ教室」の國富敬二師範代だ。なんと日付が変わった途端、17日の0時19分に投稿したのだ。なぜそんなに早くしたのかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 

学衆さんが待っていると思いました

 

 トミーはすでに、まだ見ぬ学衆を抱きしめていた。こう思える師範代は強い。
 20数年前にイシスの存在を知りながら、傍観していた。「今さら」と思いつつイシスの門を叩き、「今こそ」と師範代として登板した。トミーの声を待っていたのは、学衆だけではない。自身も待ち焦がれていたのだ。それが深夜の第一声だった。

 

 このカマエは、シグにもあらわれていた。
「急がず休まずのトミーです」
「仮留め上等のトミーです」
 シグには、お題ごとに異なるキャッチフレーズが置かれた。これにいち早く反応したのが、学衆のK.Mだ。002番の回答で早くも「トミー師範代」と呼びかけたのだ。これには師範代も破顔しつつ、「今こそセブンズの皆さんも気軽にトミー師範代とお声掛けして下さると嬉しいな(^.^)」と即応した。じつはこう呼ばれることは、かねてからの念願だった。
 K.Mは点呼の応答の際に、「一つ一つをじっくり読んで動きが遅くなってしまっている」と漏らしていたが、この精緻なカーソルは、シグの「トミー」を見逃さなかった。
 トミーと呼ぶ声は、次第に広がってく。003番でもうひとりのK.Mが追随し、H.M、K.Y、O.H……と広がっていった。師範代のジンワリとした温泉の如き指南が、この呼び名を招き込んだといえるだろう。

 

 ちょっとした「声」が、じつは場を動かしていく。
 開講から10日を過ぎると、各教室では、師範が声を挙げ始める。師範は師範代のサポート役として教室を見守り続けているのだが、稽古に慣れてきたタイミングで、勧学会に手土産持参で立ち寄るのだ。森本康裕師範はクイズを持ち込んで学衆に語りかけ、梅澤光由師範は学衆の「声」を切り取ってみせた。
 山本ユキ師範代の「オリーブなじむ教室」に師範が持ち込んだのは、「マクラ投げ大作戦」だった。

 

 8名からなるオリーブなじむ教室は、今期1、2を争う<振り返り>の量と質を誇る。ユキ師範代の丁寧な型の手渡しによって、方法に貪欲な教室となっているのだ。すでに学衆T.Aによって、「地と図」を考察するスレッドが勧学会に立ち上がった。だが反面、開講して10日経ってもまったくマクラがない。ここでいう「マクラ」とは、落語のマクラに同じ。回答前のちょっとした挨拶のことだ。
 師範代も、マクラがないことをずっと気にしていた。

 挨拶文=マクラがなくたって回答は出せる。だが活発な言語コミュニケーションのためには適度な冗長性が有益なのだ。深谷もと佳花目付いわく、「無駄話は無駄ではない」。
 マクラに書けるのは時勢の挨拶だけではない。仲間の回答への感想を書いてもいいし、指南へのコメントを入れてもいい。近況報告をしてもいいし、数奇を溢れさせてもいい。
 
「マクラ」は、記紀や『万葉集』にも登場する古い言葉だ。語源は、霊魂を中に込めるために物を巻いて作ったことに由来するといわれる。そう、マクラには、いろいろな「わたし」を詰め込めるのだ。

 

 師範の放り込んだ「マクラ投げ大作戦」に対し、すぐに学衆Y.Kは、「遊びをせんとや生まれけん、ですね」と返してみせた。S.Hは実際に回答でマクラを投げてみせ、T.Y、S.Mも続いた。T.Aは千夜千冊1599夜「枕詞論」を引用し、マクラ談義を仕掛けて見せた。いったいこの数日間で、いくつのマクラが飛び交ったことか。
 きっとオリーブなじむ教室では、ここから「対話」が生まれ、「共読」が深まっていくに違いない。

 

 48守の学衆諸君。これから守の速修コースを受講しようか考えているアナタ。きみたちもマクラ投げで遊んでみないか。アナタの「声」をマクラに詰め込み、師範代に投げつけてやるのだ! 師範代もそれを待っている。

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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