アーキタイプを手にして、磨けミメロギアー49[守] 

2022/07/12(火)04:56
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 「サイダーと麦茶の略図的原型を考えてみましょう」と唐傘さしていく教室の師範代、大塚信子が汁講で学衆たちに問いかけた。出題されたばかりの第2回番ボーのミメロギアお題のひとつ「サイダー・麦茶」のワークに取り組む手前のことだ。

 情報の「らしさ」を掴むことができるのも、それを表現に活かすことができるのも、私たちのアタマの中で略図的原型(プロトタイプ・ステレオタイプ・アーキタイプ)が、はたらいているからだ。なかでも、アーキタイプは、人間の意識・感情・記憶、文化そのものの奥にひそむ共通イメージ。思考にも影響を与えている。

 

 大塚は、お題019番「社長のプロトタイプ」で、アーキタイプ探しに苦労した学衆たちに指南を届けたところだった。

  【アーキタイプ】は、物事の本質を知るのに適しています。
  そのため、【プロトタイプ】の林を抜け
  【ステレオタイプ】の草むらをかきわけたときに、
  みつける【アーキタイプ】はことのほか輝いているように
  感じます。

 

  簡単にたどり着けないのが、【アーキタイプ】です。
  見つかったときの喜びは格別ですよ。

 

 汁講最中の大塚からの突然の問いに、一瞬は静かになった面々だったが、数分後に弾むようにアーキタイプを辿りはじめた。子どもの頃の記憶と結びつけて、学衆Nが取り出したアーキタイプに感嘆の声があがる。ステレオタイプの「三ツ矢サイダー」「伊藤園の鶴瓶さんの麦茶」に頷きあいながら、更なるアーキタイプ連想の輪が広がった。

 【サイダー・アーキタイプ】
   ご褒美、発明、原動力、刺激、爽快、盛り上げる、はじける、
   清涼感、喉越しさわやか、懐かしさ

 

 【麦茶・アーキタイプ】
   労り、潤い、一服、もてなす、整う、やさしい、染みわたる

 

 「一緒にミメロギアをかじれたことが励みになりました」と一同は汁講後に番ボーラリーに突入した。期間中の学衆たちの回答には、毎度アーキタイプが添えられ、更新され続けた。大塚は、情報の「そもそも」や「ルーツ」を追い求める構えに目を細めながらも、「まだまだ」と「らしさ」に迫る手を緩めない。そんな中「そもそもこれって?と問いかけることによって相手への理解が深まったり、相手の行動の意味が分かったりするんですね。これは仕事にも使えそうです」と学衆Tが呟いた。編集術という唐傘を携えて、教室から飛び出していく日が近づいている。

 2022年7月2日(土)唐傘さしていく教室汁講でクルクルと傘を回しあった。

 学衆:高田智英子、沢村友希、S.M村瀬裕子、中垣理紗、M.A、中村亮太

 鈴木康代学匠、石井梨花番匠、大塚信子師範代、師範阿曽祐子

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。