新年度がはじまった。3月13日以降、マスク着用が個人の自由になった開放感からか、桜前線も最速のペースで日本列島を駆け抜けている。草木は新芽をつけ、学校は新学期を迎え、学生は新社会人へと衣替えをする。冬から春へ、新しい充足に満ちた季節が訪れた。
一方で、とこかの充足はどこかの「不足」を意味する。進学する学生は新しい環境に馴染めるか不安を抱いているかもしれないし、新社会人は学生のままでいたいと密かに思っているかもしれない。新年度は、誰しも「不足」と向き合う季節でもある。
イシス編集学校の春も例外ではない。2023年4月1日の守破合同の伝習座は、2人の不在があった。イシス編集学校の局長 佐々木千佳と校長 松岡正剛である。
佐々木局長は伝習座でオープニングメッセージを担当。その時々の社会が抱える課題を提示しつつ、その時こそ編集工学やイシス編集学校が求められるのだと、新師範代を鼓舞しつづけてきた。松岡校長は、伝習座のトリの校長校話で編集工学の奥底を多重多様な言葉やメディアで直伝してきた。
伝習座の導入と出口を担ってきたこの大きな「不足」をいかに編集していくか。八田英子律師と鈴木康代学匠がメッセージを寄せた。
佐々木局長のバトンを受け取ったのは八田英子律師である。[守]の新師範代は入門からわずか1年半で新ロールを迎える。そもそもが「不足」状態からスタートする師範代に向けて、2つの型で師範代のあり方を伝えた。
1.俳句をつくるように「注意のカーソル」をうごかす
最寄り駅である豪徳寺・山下から本楼への道すがら、どれだけの注意のカーソルを向けていたか。俳句をつくるつもりで注意のカーソルを向ければ、「桜」という情報も花びらの枚数や葉の青さ、風にのる香りや空との対比、など次々に情報が集まる。
学衆の回答も同じこと。学衆から届く回答のデノテーション(外示)を注意深く言葉にすることで、学衆のコノテーション(内示)も変わっていく。
2.「システム」としてイシス編集学校や教室をとらえる
[守]のお題に「公園をシステムとしてとらえる」という稽古がある。公園を「要素・機能・属性」に分けて情報を文節化することで、情報をより豊かにとらえられるだけでなく、情報の新たな可能性を引き出すことができる。それならば「イシス編集学校」や「教室」をシステムととらえてみほしい。
教室にいる「自分(師範代)」という情報を動かせば、同じく教室の要素である「学衆」も連動して動きやすくなる。たとえ1回で動きがない時も、もしかしたら30回繰り返せばそのループから抜けられるかもしれない。
学衆の学びもリニアではない。師範代の一言、番ボーや汁講といった講座イベントなど、あるきっかけで一気に加速する場面もある。システムとしてとらえることで、学衆のノンリニアな動向も編集していくことができる。
「今日は不在でも、松岡校長は今週も最新の千夜『男女両性具有Ⅰ・Ⅱ』(1820夜)を仕上げてくれた。師範代ロールは自分一人の既知ではとても間に合わないけれど、千夜千冊やエディション、遊刊エディストを手元に師範代活動をしてほしい」(八田律師)
堂々と壇上で振る舞う鈴木康代学匠は、実は舞台袖では緊張している。ギリギリまで手元のメモを見直し、事前の用意を欠かさない。「本番前に必ず声をかけ、ポンと背中を押してくれていたのが松岡校長と佐々木局長だったんです」と明かした康代学匠は、2名の不在の編集に『無名時代の私』(1292夜)を持ち出して、2つのエピソードを引用した。
1.「才能とは、自分が選択した方法と内容の関係」
師範代は不足が起きると自分のせいにしがちであるがそうではない。自分が選択した方法と内容の関係において隙間を見つけ、そこをブレークしていけばいい。師範代と学衆の関係、その間の編集に向かえば良い。
2.「考えていることは100だ。それを喋れば10だ。書けばそれが1になる。それに耐えきることだ」
これは、小説家で放送作家の藤本義一が、シナリオを学んだ川島雄三監督から受け取った言葉。シナリオだけでなく、指南にも言える。そもそもメッセージとは、あくまでイメージの「近似値」にすぎず、伝えようとしても伝えきれないモヤモヤがある。その不足ごと編集してほしい。
「佐々木局長っていつも、ふわっとしたスカートを履いていますよね」と、康代学匠は局長らしい装いで伝習座に臨んだ。
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上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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