「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
緑トマトと紫トマト
「5月に植え付け予定だから、そろそろ種まきしなきゃ」。2月の終わり、長男(13)が種の保管ボックスからトマトの種が入っている封筒を取り出した。昨年の7月、直売所でちょっとめずらしい5色入りのトマトセットを見つけて買った。長梅雨で暇だったから緑トマト(グリーントマト)と紫トマトの種とりしておいたという。
長男がトマトを育てるのは10回目である。
これまで赤トマト、黄色トマト、オレンジトマトは育てたことがある。しかし緑トマトと紫トマトは苗を見たことがない。特に、熟しても色が緑のまま変わらない緑トマトは、どんなふうに熟していくのか、収穫せずに置いておいた場合、色のさらなる変化はあるのかが気になっていた。
種の準備、栽培スキル、やる気の三位一体がそろい、今年ようやく実際に育ててみることになった。
種をまく
種まきトレー、品種名を書く札、鉢受け皿、培養土をベランダに出して、カメラを傍らに作業を始めた。
封筒から種を出して手のひらに載せると「薄い! ほかの種に比べると厚みのなさを感じる」。特に、緑トマトはへこんでいるように見える種もある。
種まきトレーに土を入れ、湿らせ、浅く穴をあけ、種を3粒から5粒置き、うすく土をかぶせる。長男の希望で、すべての行程で親の手出し無用である。もしうまく発芽しなかった場合もそのほうが納得できるからだ。
まき終わった後、種まきトレーを家の中に戻す。外はまだ気温が低すぎるので、しばらく部屋で管理する。
家の中は、温度は十分だが光が不足する。以前、それでひょろひょろの苗になってしまったことがあった。その経験を生かし、デスクライトを設置した。
発芽の「らしさ」
起きたらライトをつけ、寝る前にライトを消す。土が乾かないように気をつける。
最初に動きがあったのは紫トマトのほうである。
「ここ」と長男に指さされて目をこらすと、ごろごろした土の粒のなかに白い植物性の小さなものが見えている。
「種の殻が割れてきた」。
写真に撮ってもほとんどわからないぐらいの変化である。
多くの種はまず根っこが伸びる。土から水を吸いながら、茎の部分が少しずつ立ち上がり始める。くねりながら伸び、双葉が開くのは最後だ。
大きさやスピードには予想以上にバラツキがあった。茎まで伸びたが双葉が開かないもの、最後まで動かない種もあった。
「発芽」を辞書で引いてみると「芽を出すこと。植物の種子・胞子・花粉や樹枝の芽などが発育を始めること」とあるが、どの段階を発芽と説明するか。長男に質問すると、いろんな芽のことを思い出しながら「自分の感覚だと、色が緑色になって、長さ5ミリぐらいになったあたりかな」という答えが返ってきた。そこに発芽の「らしさ」だと感じるらしい。
想像力と想起力
紫トマトから数日遅れて、グリーントマトも動き始めた。
芽の大きさは紫トマトよりずいぶん小さい。
「もしかしたら種の大きさに関係してるのかもしれない。緑のほうはへこんでるのが多かった」。発芽率についても紫のほうがよかった。「緑は収穫時期の見極めがむずかしそうだから、未熟な種が多いのかもしれない。でも、八割ぐらいは出てよかった。心配してたけど、ほっとした」。
何度見ても、小指のさきほどのごくごく小さな芽である。
ここからどれだけ育つのか。花が咲き、実を収穫するところまで到達できるのか。
次の関門が室内から外に出すタイミングである。時には急な環境変化で枯れてしまうことがある。
「もう少ししっかりしたら、トレーの一部だけ切り離して先に出し、様子を見てみる。最初はベランダの中でも部屋に近いところに置き、ちょっとずつ外側へ移動させようと思う」
いろいろな作戦の素は想像力と、今までの「失敗」や本で読んだことを思い出す想起力だ。メモがわりにあれこれしゃべりしながら、お天気情報をチェックし始めた。
○編集かあさん家の本棚
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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