[週刊花目付#006] 父の肖像・母の面影

2020/12/01(火)10:00
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週刊花目付

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2020.11.22(日)

 

 道場に花伝式目の最終章「M5: Making」(組)の総論が配信された。
 
 式目M5にテキストが付されたのは34[花]が初めてだ。「先達に肖るゲームメイク」として世阿弥の稽古哲学を引きながら、錬成演習へ向かうカマエとBPTについて手短かに記されている。

 

 世阿弥の『花伝書』は、能楽の家に口述で秘伝される芸の極意を書き起こしたものだ。その稽古条条についてひたぶるに言葉を尽くす語り口は、ジャンルを超えて肖るべき教育論に昇華している。蓄積された経験知をそのまま次世代へ丸投げするのではなく、成長過程をステージングしたり(時分の花)、役ごとのプロトタイプを寸描したり(物学条条)と、芸道を多様なメトリックで分節して語り伝えようとする姿勢に貫かれている。


 たとえば美容業界は昭和の頃まで「技術は見て盗め」と闇雲に苦行を強いる教育が主流だったが、伝統芸能の本流にはむしろ言葉を尽くして語り聞かせる伝承スタイルがあったことに感嘆する。所作や風姿の継承は、言葉の継承なのだと強く思う。

 


2020.11.25(水)

 

 朝、エディスト仲間のUから電話が鳴る。父が倒れたと。涙声だった。

 

 Uとはこれまで家族の話などしたことがなかったが、父娘の綾が捻転しているらしいことを人伝に聞いていた。そのことに私は勝手な共感を抱いている。あぁ、だから同じ匂いを感じるのか、と。
 Uと私の最も重要な共通項は「ファザコン」なのだと思う。父性への屈折した憧憬は、語らなくとも嗅覚に響く。長すぎる反抗期を生きる者ならではのトーンが、エディティング・キャラクターに滲むのだ。

 

 親子の関係性は師範代と学衆との編集稽古にも似ていて、受容評価のバランスとタイミング次第で、セレンディップな相転移を招き得る。

 

受容と評価のマトリクス

 

受容と評価のマトリクス

編集稽古の場で、師範代が学衆の回答へ応接するスタンスは、この座標系の何処かに立脚する。縦軸の「受容」、横軸の「評価」とも、その測度は両極の間にシームレスなグラデーションで分布している。


 一般にファザコンと呼ばれる症例には、上図の象限Aに起因するタイプとBに属するタイプがあるだろう。タイプAの場合、子が父性への絶対服従を誓わない限り互いの反目が増長するばかりだが、子の独立心が旺盛な場合は両者の自立が促されたりもする。親子も師弟も「相性」に一喜一憂するより、「縁起」と捉えて編集可能性の拡張へ向かった方が良い。


 私自身は、拗れた相克を最期まで修復できずに父を見送ってしまったが、どうかUには相互編集の成就を願う。

 


2020.11.27(金)

 

 入伝式から丸5週間。 34[花]の錬成場が開いた。

 

 入伝生は、この指南錬成演習に及んで「出題される側」から「出題する側」へロールチェンジする。
 スケジュールに沿ってお題を配信し、錬成師範が学衆役となって回答する。その回答へ、入伝生が指南する。その指南ぶりを、錬成師範が指導する。
 指南錬成演習は、いわば仮免許の路上研修である。師範代としての実戦登板を目指して、2週間の集中乱取り稽古で指南編集力を磨き上げる。

 

 意気揚々と錬成場へ向かう者、恐る恐る間合いを探る者。多くは後者だが、是非ともこの得難い体験を糧にしていただきたい。

 何度も言うように、ここから放伝までのシークエンスが、困難との遭遇」から「目的の察知」へ至る通過儀礼なのだ。編集は直線距離では測れないから、角を曲がらなければ見えない風景に出会ってこそ起爆するエディターシップがある。

 

 

2020.11.29(日)

 

 仮免師範代たちが問感応答返をメイキングする様を、錬成師範たちが代わる代わる評価し、指導する。

 

 34[花]の指導陣は、半数が新任だ。

 今期はとりわけフレッシュな布陣だが、そもそも[守]の教室を新任師範代に託す仕組みがイシス編集学校ならではのユニークネスだ。ほんの少し前に編集的至高体験を経た者が「轍」となって、次の世代に「型」を継承する。

 

 イシスの師範代認定は、資質の有無や課題達成度によって可否を判断しない。自らがを体現する「となることを問う。型の継承プロセスこそが自己編集性を発動させ、エディティング・キャラクターがつぎつぎなりゆくのだ。

 

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