発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

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第54回感門之盟(37守)校長校話「伝承と継承」
2016/9/17 於:伝承ホール
このように、あるところまできたものは、継承のための伝承をつくらないといけない。しかも既存の伝承されているものには満足できないことも多々あります。水村美苗は、アメリカにニュートラッドがある、真似ばっかりの日本はこのニュートラッドを知らなければダメだと思ってアメリカにいくのですが、その姿にがっかりして帰国する。日本で改めてこのトラッドを探してみると、漱石にどうもそれがある。しかもその仕事は中断されている。水村さんは、残されたものを読むことで漱石になる、ということを自分自身のお題にしたんです。
このことは、最初に話した漱石が「馬か牛か」という鈍重な選択を持ったことも、いま僕がこの歳になってこうしてお話ししながら、継承されている、伝承になっていると思うこととも、すべて重なっているのだけれど、ここからが難しい。では「預ける」となって自分の足を抜こうとすると、吉村の八段錦や大音さんの伝承する覚悟なんかがくっついてきて、そこに僕がいないものかといえばそうでもない。もう渡したから充分だよね、と思っても、交わしあって起こっていることから足を抜くというのは、簡単ではない。先ほども康代ちゃんが上手に師範や師範代を紹介をしてくれましたが、ここにも僕の何かがあきらかに伝承されていますよね。それではと、僕が長靴だけをのこして、仮にそこに田母神の足だけ入れても、それだけだとどこかあわない。すると、長靴だけではなく、大音さんや康代ちゃんの声や、彼女たちが関わっている師範代や学衆、その関係にいたるまでありとあらゆるものが必要になりますが、そうやって沢山の人々が絡まるなかで足だけ抜こうとしても、これはなかなかうまくいかないものです。
経営の数字だけ残してやめていくというようなことはそれはそれでいいけれど、こういうふうに続いてきた感門之盟のようなものは、単なる文脈でもなく、超複雑に何本もの曰く言い難いナラティビティが複合的に編み重なっているわけなので、そう簡単に切り離せるものではないんですね。
編集学校で起こっていることは、諸君の37[守]で起こったことであり、僕の中の太古で起こったことでもあります。僕は僕なりに、馬か牛か、カエルかセミか、そういうことを相当選択して継承してきたほうです。だから、38番の中のいろいろなところにそういうものがはいっている。もしも諸君が編集学校を継承したいと思ってくれるのなら、編集学校にあるものを読み込んでほしい。イシス編集学校は、未完成の「明暗」です。だから読み込んでもらう以外ない。百人の水村美苗になってください。読むマルチチュードである必要がある。
ふたつめ。しかしながら、諸君も生活の中で選択をしていますね。ここには「アンダーシナリオ」、あるいは「ヒドゥンファクター」とも言うべきものが潜んでいます。お題や指南や千夜千冊を通して読むマルチチュードになることに加え、そこに潜んでいるアンダーシナリオを抜き出してもらいたい。それこそが継承であり、ヒューリスティック(発見的)なことになるでしょう。そういうことを委ねたい。
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■関連千夜
加藤めぐみ
編集的先達:山本貴光。品詞を擬人化した物語でAT大賞、予想通りにぶっちぎり典離。編纂と編集、データとカプタ、ロジカルとアナロジーを自在に綾なすリテラル・アーチスト。イシスが次の世に贈る「21世紀の女」、それがカトメグだ。
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。