自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
去ること、多読ジムseason19では「三冊筋プレス◎アワード」が開催されました。お題は「古典に親しむ三冊」。今回は古典にちなんで「八犬伝」仕立ての講評です。どうぞお楽しみに。
千夜千冊エディションvol.01『本から本へ』で、じつは他の千夜千冊では味わえない異彩を放つ一夜と、千夜ツウの間で珍重されているのが、998夜滝沢馬琴『南総里見八犬伝』です。
その滝沢馬琴や葛飾北斎、二人を結んだ蔦屋重三郎さえ作品中に取り込んでしまい、【虚】と【実】の世界を高速に往来させたのが、山田風太郎の『八犬傳』。2024年秋に公開された曽利文彦監督の映画は、この山田『八犬伝』を原作としています。
多読ジムseason19の三冊筋プレス◎アワード[古典編]は、時代劇ファンタジーと前評判も高かったこの映画の公開前日に発表されました。そのため、八人のエントリー勇者全員に、それぞれ「仁義礼智忠信孝悌(じんぎれいちちゅうしんこうてい)」の八徳の大珠を贈呈する仕立てといたしました。
それほどseason19の知文は全体的に完成度が高く、それぞれの古典へのリスペクト香るものだったのです。選ばれた「古典」には王道もあれば能舞台の橋掛りを思わせるものもあり、時も場も違いますが、いまのご自身が「伝えたい」メッセージを載せた作品となっています。
『論語』をひもといてみると
仁:己に克ち、他に対するいたわりのある心、思いやり犬江親兵衛に配当
義:社会的・人道的な正義。人間の行うべき筋道と道理犬川荘助に配当
礼:社会秩序を保つための生活規範、儀式、礼儀、作法犬村大角に配当
智:物事の本質を追究し、ぜひ・善悪をわきまえること犬坂毛野に配当
忠:自ら欺かず誠実。真心。主君に臣下の本文を尽くす犬山道節に配当
信:信頼すること。人を欺かないこと犬飼現八に配当
孝:父母を尊敬して慈しみ、大切にすること犬塚信乃に配当
悌:兄(弟子)を尊敬して従うこと。兄弟仲がよいこと犬田小文吾に配当
さて、エントリー勇者とそのキーブックに贈られたのは?
智:スタジオ∵ファジー:戸田由香さん『枕草子』清少納言、島内裕子校訂訳
忠:スタジオかのん:畑本ヒロノブさん『科学と仮説』アンリ・ポアンカレ
悌:スタジオ美ジョン:重廣竜之さん『古事記』池澤夏樹訳
仁:スタジオかのん:市川鉄彦さん『茶の本』岡倉覚三
礼:スタジオ*スダジイ:佐藤裕子さん『現代語訳 とわずがたり』後深草院二条、瀬戸内晴美訳
義:スタジオとぽろじー:猪貝克浩さん『愚管抄 全現代語訳』慈円、大隈和雄訳
孝:スタジオかのん:福澤美穂子さん『ヨブ記』旧約聖書
信:スタジオ*スダジイ:北條玲子さん『バガヴァットギーター』
となりました。
それでは、八人を代表して
【智】の宝珠と【忠】の宝珠を得られたお二人の創文をお楽しみください。
アイキャッチ画像:『百鬼夜行図』(国文学研究資料館所蔵)
出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/200016403
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
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2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
2026-01-12
午年には馬の写真集を。根室半島の沖合に浮かぶ上陸禁止の無人島には馬だけが生息している。島での役割を終え、段階的に頭数を減らし、やがて絶えることが決定づけられている島の馬を15年にわたり撮り続けてきた美しく静かな一冊。
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2026-01-12
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