ほんとうは二つにしか分かれていない体が三つに分かれているように見え、ほんとうは四対もある脚が三対しかないように見えるアリグモ。北斎に相似して、虫たちのモドキカタは唯一無二のオリジナリティに溢れている。
編集学校の九州支所「九天玄氣組」は柚子胡椒も仕立てる。組員の技を生かし、九州の四季に遊ぶ、年に一度の恒例企画である。会場と材料を提供するのは42[守]ヤバケイ万全教室で師範代をつとめた田中さつきだ。田中が住む大分県耶馬渓町は柚子胡椒発祥の地にほど近い。庭には柚子の木がある。10月23日、田中家には組員の崟(たかし)智子、内倉須磨子とその友人、品川未貴が集った。
柚子胡椒の原料は柚子と青胡椒(青唐辛子)と塩である。柚子の枝にはかなり太い棘があり、触れてしまうと後々まで痛む。まだ青い実をいただくのだから、少々の犠牲は飲み込む。ちぎった柚子は軽く洗った後、おろし金を使って皮の部分を細かくおろす。さわやかな香りが一気に立ち上がる。塩漬けにしておいた青胡椒はミキサーにかける。ペースト状の青胡椒が放つ差すような刺激に涙をにじませながら、おろした柚子の皮とよく混ぜ合わせ、熱湯消毒をしたガラス瓶に詰めていく。この日は80瓶を仕上げた。できたての柚子胡椒は峻烈な味がする。
今年の柚子は裏作。庭の柚子だけでは足りず、田中が知り合いに声をかけて町内の柚子山で調達した。青胡椒の塩漬けは事前に仕込んでおいた。手仕事に欠かせないおしゃべりの種とおやつは各自が持ち寄る。今年話題にのぼったのは本の読み聞かせの語り方、おやつは内倉手づくりのいちじくケーキだった。柚子胡椒づくりは、組員が近況と心づくしを交歓する機会にもなっている。
3年前の九天10周年イベント「海峡三座」のお土産として好評を得た柚子胡椒「青郷(セイゴオ)」も、このようにしてつくられた。

石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
松岡正剛校長と歩んだ二十年、編集の志を継いで―玄氣玄影のつどい【九天玄氣組】
松岡校長への思いがひとつになった夜、九天玄氣組は二十周年を迎えた。 11月2日(日)、田中優子学長と福元満治氏をお迎えしての九天玄氣組20周年イベント「千夜千冊から九州を読み解く」が無事終了。午後7時からは福岡市天神・テ […]
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20年め。周年事業の軸として「九州の千夜千冊」を冠したQten Genki Book『九』を発行した。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつくる「三 […]
ゲストは田中優子学長!!「九州の千夜千冊」刊行記念イベント必聴です
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20年め。周年事業の軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠したQten Genki Book『九』の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつくる「 […]
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20年め。秋をめざして周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつくる「三十三冊 […]
【販売開始】11月2日(日)Qten Genki Book『九』刊行イベント-九州の千夜千冊vol.7-
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。秋をめざして周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつくる「三十三冊 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-30
ほんとうは二つにしか分かれていない体が三つに分かれているように見え、ほんとうは四対もある脚が三対しかないように見えるアリグモ。北斎に相似して、虫たちのモドキカタは唯一無二のオリジナリティに溢れている。
2025-12-25
外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。
2025-12-23
3Dアートで二重になった翅を描き出しているオオトモエは、どんな他者に、何を伝えようとしているのだろう。ロジカルに考えてもちっともわからないので、イシスなみなさま、柔らか発想で謎を解きほぐしてください。