発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

12月中旬、転界ホログラム教室の辻井貴之師範代はイレギュラーな夜勤が続いていた。汁講には夜勤明けで神戸から東京に向かい、その日の夕方の新幹線で帰って、再び夜勤に臨むと言う。計画段階では夜まで残って学衆たちと交流を深める予定だった。
「全てがうまくいけば1%ぐらいは免れる可能性もありますがほぼ避けられない状況です。無念。。」
辻井師範代だけでなく、全員が残念がった。
汁講当日の朝、辻井師範代から師範の大場宛に夜勤が長引いて1時間遅刻すると連絡が入った。メールには続きがあった。「昨晩の工程が予想以上にサクサク進んで今夜の夜勤が消えました!まさかの1%です」
起きた、1%の奇跡!!
教室にもあらためて連絡のメールが届き、その13分後には学衆から喜びの返信があった。転界ホログラム教室の名の通り、汁講のモードが転界した瞬間だった。
ランチ会場のインド料理屋に1時間遅れで現れた辻井師範代は、新幹線でも寝ずに来たと言う。それでも少しも眠そうな素振りは見せず、学衆の徳応さんが坊主頭にたっぷりと汗を浮かべながら食べたカレーを、あっさりと平らげた。カレーの辛さよりも、教室の学衆と会えたことが何よりの目覚ましだったに違いない。ランチ後の編工研訪問では、稽古の進みの遅い学衆をイジる余裕も見せた。
待望の夜の部は居酒屋に場を移し、転界ホログラム教室の参加者6名で本の交換会を行った。本のテーマは「教室に+1したい物語」。それぞれが持ち寄った本をシャッフルして順々に選び取っていった。最近短歌や俳句にはまっているという辻井師範代の手に渡った本は『北村薫のうた合わせ百人一首』(北村薫著、新潮社)。思わぬセレンディピティに師範代の頬が緩んだ。その辻井師範代からは『ユゴーの不思議な発明』(ブライアン・セルズニック著、アスペクト)が学衆の佐塚さんの手に渡り、佐塚さんからは『夏への扉』(ロバート・A. ハインライン著、早川書房)が徳応さんへ。それぞれが選んだ物語は1冊も被ることなく、多様なホログラムを描いた。
その後も羅甸お侠教室も交えた編集談義は止まらず、怪しげなビル奥の中華料理での2次会へと続いた。そこにはもちろん辻井師範代の姿も。師範代の夜は長い。
2019年12月21日(土)
「羅甸お侠教室、転界ホログラム教室」合同汁講
◎43[破]原田淳子学匠 八田英子律師
◎羅甸お侠教室 嶋本昌子師範代 渡辺高志師範
参加学衆:神戸七郎、玉井佑治、林春薫、脇ゆかり(敬称略)
◎転界ホログラム教室 辻井貴之師範代 大場健太郎師範
参加学衆:小林陸、佐塚琴音、徳應学、乗峯奈菜絵、山田立郎(敬称略)
大場健太郎
編集的先達:池澤夏樹
若手師範代時代から将来を嘱望されていたが、SNS伝奏連の活動、二度目の破師範代のあと満を持して師範へ。更なる研鑽を続ける。知性派のITエンジニアでクラフトビール愛好家。校長からは発泡する「破」の書を贈られた。
コメント
1~3件/3件
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。