ジャイアンとコップ――46[守]新師範代登板記 ♯3

2020/10/30(金)08:31
img

 10月26日、ジャイアンの長い一日が始まった。


 この日は46[守]の開講日だった。前日までに教室や勧学会の設えを整え、開講準備セットをアップした。
 実はこの時点で、33花同期の猛者からは、「きんちょーーーーする」という声が挙がった。誰の手も借りず「場」を整えるのだ。悩みは尽きない。
 当日、朝3時44分に目が覚める。開講はお昼なのでやることはないのだが、もう一度、001番のコップのお題をチェックする。朝の雑事をこなし、溜まっている仕事を片付ける。なかなか集中できない。

 

 11時31分、校長のメッセージが教室に流れる。
《いよいよ「守」が始まります。ここから諸君の「世界と自分についての見方」がおそらく劇的に変わるでしょう。それは私が保証する》
 きっと師範代も劇的に変わるに違いない。それを信じよう。

 

 12時ちょうど。学林局からの点呼が始まった。ジャイアンは昼飯を抜いて、パソコンの前にかじりついた。本当に点呼に応えてくれるだろうか。
 トップバッターは12時29分。来た! 4分後、「祝・入門&祝・第一声」の返信を送る。ジャイアンの鼓動は高鳴ったままだ。

 13時までに5人の学衆から応答があった。学衆の一人は、師範代からの「ようこそ」に返信までくれた。
 よし、ここだ。

 

 13時17分に出題スケジュールを投稿。その8分後に、001番のお題を出題する。
《まずは発声練習のつもりで、 \あ~~~~~/ と声を出すことを楽しんでください》
 と、ノリは「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんである。はたしてこの声は、学衆に届くのか。

 

 14時30分。ほぼ1時間後に、最初の回答が届く。
 守の時の師範代の声が甦る。姫路城を眺めて暮らす理系の師範代は、こう言ったのだ。
「最初の指南ですか? 書く時は手汗が止まらなかったですね」
 辻井貴之師範代どの、あなたの言っていたことは本当でした……

 

 集中しろ、集中だ。全集中の呼吸だ!
 もちろん、「守の呼吸 壱ノ型 コップ切り」が飛び出るわけではない。こんなことを口にしても緊張が増しただけだった。
 
 こんな時は、方法に戻るしかない。お題を読み返す。

 コップをひとつの「情報」として捉え、できるだけたくさんのコップをあげる。これがお題だ。そのためには、コップの素材や形に着目したり、誰が、何を、どうした、という主語や動詞を動かしていく必要がある。
 ん? 主語を動かす?
 ジャイアンは朝から(正確にいうならその前日から)「緊張する」という言葉を発し続けていた。この主語は誰だ?

 

 わたしは、緊張する。

 

 紛れもなく「わたし」ではないか。
 鳥の目になって、主語をズラしてみる。

 

 学衆は、緊張する。

 

 コップの中に答えはあった。学衆こそが与件だった。
 そうだ、「わたし」をズラしてしまえばいいのだ。自ずからやるべきことが見えてきた。ただ、回答にアフォードすればいいのだ。学衆に寄り添えばいいのだ。学衆の緊張をほぐすのは、師範代の言葉=指南ではないか。

 出題から135分後の15時39分、最初の指南を返す。
 もう緊張はない。その日届いた4本の回答に、その日のうちに指南を返した。コップにビールが入っていればゴクゴク飲み干し、ポッキーが入っていればポリポリ食べた。思いも寄らぬ回答に「おおっ!」と声をあげ続けた。
 もう緊張していた「わたし」はいない。「型」というひみつ道具を手にしたジャイアンいう名の師範代が、9人の学衆と遊んでいるだけだった。

(2020.10.30)

 

◆バックナンバー

ああ、それでもジャイアンは歌う――46[守]新師範代登板記 ♯1
ジャイアン、恋文を請い願う――46[守]新師範代登板記 ♯2
ジャイアンの教室名 ――46[守]新師範代登板記 ♯4
ジャイアンは教室とともに――46[守]新師範代登板記 ♯5
ジャイアンの1週間――46[守]新師範代登板記 ♯6
ジャイアン、祭の後――46[守]新師範代登板記 ♯7
ジャイアンの聞く力――46[守]新師範代登板記 ♯8

 

▲教室で初回答する気持ちをコップ&ペンギンで表現。「初めて」の勇気に拍手を贈りたい。

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

  • 守師範、漢字ミュージアムへ行く

    京都は八坂神社の目と鼻の先に、「漢字ミュージアム」があるのですが、つい数日前、こちらを訪ねてきました。同館は、漢字3000年の歴史から日本の漢字受容史のわかる体験型ミュージアムです。 ▲左から、触って遊べる「踊る甲骨文 […]

  • 天使は舞い降りた■武邑光裕を知る・読む・考える(4)

    今52[守]では、「武邑光裕」の名がとてつもない頻度で飛び交っている。氏による52[守]特別講義が迫っているからだ。その交わし合いの中から生まれた連載「武邑光裕を知る・読む・考える」。第4弾は、越境の地から日本と世界を活 […]

  • クリスマスの朝から大興行「シン・お笑い大惨寺」

    いよいよ明日12月25日、クリスマスの朝に「シン・お笑い大惨寺」の大興行が始まる。 ここまで告知記事を9連打してきたが、「結局、何が始まるの?」という方も多いだろう。すでにテスト問題にこうじている方も、全体像は掴めていな […]

  • 大展開まであと2日◎シン・お笑い大惨寺

    スクープです! たったいま、アヤシイ電波を傍受しました。大惨寺奥の院「座識楼」からの檀家むけ試験放送です。 世間を賑わしつつある「シン・お笑い大惨寺」が、出武将によってラジオになってました!!    そして、「 […]

  • 異種交流で浮き世離れせよ■武邑光裕を知る・読む・考える

    2024年1月21日、メディア美学者・武邑光裕氏による52[守]特別講義が開催される。この事件を前にして、52[守]が「武邑光裕本」と格闘した。題して「武邑光裕を知る・読む・考える」。共に武邑ワールドを探訪したい。   […]