地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。
坂本龍一さんの訃報に悲しみが広がる1週間となった。生前好んだ言葉として、古代ギリシアの医学者ヒポクラテスの『箴言』の一節とされる「Ars longa, vita brevis(芸術は長く、人生は短し)」が紹介され、ネット上でもあちらこちらでシェアされている。イシス編集学校で「ars(アルス)」といえば「Ars Combinatoria(アルス・コンビナトリア)」や近江ARSをイメージする面々も多いだろう。ラテン語「ars(アルス)」の語源には「術」や「方法」の意味がある。イシスにとってアルスとは方法である。
週末開かれた伝習座は、指導陣が集って学衆に示すべき指南の方法をめぐる場である。終日、熱気あふれる方法の交わし合いが続いた。第51期[守]基本コースをうけもつ新師範代には「教室名フライヤー発表」の舞台が与えられた。イシス編集学校の教室名はすべて校長松岡正剛による命名だ。2000年の開校以来生まれた教室名はまもなく1000を越えるが、校長は「すでに名付けた言葉は使わない」という縛りをかけ、ひとりひとりの師範代にあわせて言葉を選りすぐってきた。どれもが風変りで、遊び心があって、唯一無二の贈り物。そんな教室名に肖りつつ、師範代はA4サイズ1枚のメディアにイシスの魅力をあらわしていく。教室名フライヤーとは、これまで培ってきた編集の方法をまだイシスを知らない人々に向けて解き放つ編集実践の第一歩なのである。
発表を終えて安堵する師範代に鋭いディレクションが飛ぶ。ディレクションのとりを務めたのは編集工学研究所の若きデザイナー穂積晴明だ。松岡校長はデザインについてふだんどのような点に注目し、注文をつけるのか。穂積は自身が校長から常々言われてきたこととして3つを挙げた。
1.主張がない
どうしてもこれを伝えたいんだというメッセージが入っているか。自分の欲望だけではだめで、感情が乗りすぎると自分の主張を邪魔することがある。
2.気配がない
よくやってしまいがちなのがさまざまなモチーフを並べること。だがそれだけだと説明的になる。気配や余白や暗示性が薄れていってしまう。
3.見立てがない
見立てはたった一つのオブジェに託していく方法。それひとつでどこまでいけるか、語れるか、魅せられるかを試すこと。
「これまで僕自身がさんざん言われてきたことです」と校長の言葉を新師範代に手渡す穂積
イシスで編集を学ぶ者は、既知のモデルに肖ることで未知へ飛べることを知っている。師範代の多くはプロのグラフィックデザイナーではないが、先行するデザインに肖ればデザインはできるのだ。ただし、肖るモデルは必ず圧倒的な中身があるものに限る。その筆頭は松岡校長が手掛けてきた出版物をはじめとしたメディアだ。だからこそ、デザインのプロではない師範代に校長直伝のディレクション、松岡正剛の方法が手渡される。
Ars longa――「方法」こそが長く続いていくのである。
教室名フライヤー発表のコーナーが終わった後、穂積デザイナーを直撃してフォントについての考えを訊いた。穂積が編集工学研究所林頭の吉村とともに千夜千冊を追いかけて愉快なトークを繰り広げるショートラジオ「おっかけ!千夜千冊ファンクラブ」通称オツ千で、校長にはじめて褒められたデザインは文字だと話していたことがある。千夜千冊のトップ画像や感門之盟のタブロイド紙など穂積が手がけたデザインを見ると、異なる種類のフォントがさまざまに組み合わされているがどんな意図があるのか。
「フォントは声色」
迷いなく答えが返ってきた。明朝ならたおやかな声、ゴシックなら野太い声など、文字から聴こえる声をイメージしているという。「どんな声優をあてがうかを考えています」穂積の見立ては明快だった。穂積のデザイン秘話を聞きたいなら、こちらのオツ千もオススメだ。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
本楼に中3男子が現れた。テーブルにつくとかぶっていた黒いキャップを脇へ置き、きりっとした表情を見せる。隣に母親が座った。母は数年前にイシス編集学校の存在を知り、興味を持ちながらもイベント参加にはなかなか勇気が出なかった。 […]
先月、目の前に1冊の本が落ちてきた。部屋に積まれた本の小山から飛び出したのは、松岡正剛校長の著書『17歳のための世界と日本の見方』(春秋社)だ。それからというもの、SNSでイシス編集学校の宣伝を見かけることが急に増え、勢 […]
11/23(日)14~15時:ファン待望の「ほんのれんラジオ」公開生トークイベント開催!【別典祭】
本の市場、本の劇場、本の祭典、開幕! 豪徳寺・ISIS館本楼にて11月23日、24日、本の風が起こる<別典祭>(べってんさい)。 松岡正剛、曰く「本は歴史であって盗賊だ。本は友人で、宿敵で、恋人である。本は逆上にも共感に […]
母が亡くなった。子どもの頃から折り合いが悪かった母だ。あるとき知人に「お母さんって世界で一番大好きな人だよね」と言われ言葉を失ったことがある。そんなふうに思ったことは一度もない。顔を合わせばぶつかり、必要以上に口もきかず […]
申込受付中!10/26開講「山片蟠桃『夢の代』を読む」◎イシス唯一のリアル読書講座「輪読座」
イシス唯一のリアル読書講座「輪読座」。「みんなで読めば怖くない」の精神でこれまで数々の難読古典に挑戦してきました。10月26日からの新コースは、江戸後期の町人にして驚くべき大著を残した異才・山片蟠桃(やまがた・ばんとう) […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-09
地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。
2025-12-02
{[(ゴミムシぽいけどゴミムシではない分類群に属している)黒い星をもつテントウムシに似た種]のように見えるけど実はその偽物}ことニセクロホシテントウゴミムシダマシ。たくさんの虫且つ何者でもない虫です。
2025-11-27
マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/