自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
半歩で躓く者こそが、入門するに相応しい。
イシス編集学校では、入門前の「お試し稽古」として、編集力チェックという企画があり、誰でも無料で参加することができる。
◇◇
開講したばかりの56[守]の教室で、学衆Mが告白する。編集力チェックの、前半のお題「夏の思い出3つ」は挙げられたが、後半のお題「関連のない二つのものを組み合わせる」ことに戸惑い、考えても回答することができなかったという。
それでも[守]入門を決めたMさん。「半分だけ」の回答に届いた指南の言葉や、回答できなかった「もう半分」という悔しい空白に、なにかがあるという可能性を感じたのだろう。
◇◇
かくして入門した教室は、奇しくも「半ちらつもり教室」と名付けられていた。
学衆を迎える後藤有一郎師範代がメッセージする。
「ほんとの世界からこぼれ落ちてきた半端な思いも、かつて何かに向かっていった証。その先の未知に踏み出してみましょう」。
パーフェクトであると満足してしまえば、情報は動かない。半端であればこそ、容易には手の届かない情報の半身を、狂おしく求めることができる。
あの日、答えられなかったお題──「関連のない二つのものを組み合わせる」秘訣も、きっとここにあるはずだ。
文・アイキャッチ:イシス編集学校 師範 阿久津健
(いますぐ編集力チェックを受けたい方はこちらから)
阿久津健
編集的先達:島田雅彦。
マクラメ編み、ペンタブレット、カメラ、麻雀、沖縄料理など、多趣味かつ独自の美意識をもつデザイナー師範。ZOOMでの自らの映り具合と演出も図抜けて美しい。大学時代に制作した8ミリ自主映画のタイトルは『本をプレゼントする』。
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コメント
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2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。