【特集】ETS群島リレー02@仙台 森由佳の”はじチラ”

2019/10/06(日)13:43
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 未知奥連(みちのくれん)の弦主・森由佳はジュンク堂仙台TR店をぐるーっと一周していた。弦主の生業は、銀行の内勤だ。営業の経験はない。落語家や漫画『ONE PIECE』(尾田栄一郎、集英社)のキャラクターが印刷されたレジ横のチラシを横目にスタッフの様子を窺う。”はじめてのおつかい”ならぬ”はじめての置きチラシ”のゴングが鳴る。


 スマイル、スマイル…と頭の中でつぶやきながらレジの女性に近づき、エディットツアースペシャル(以下、ETS)のチラシを見せる。にこやかな対応にホッとした束の間、代わって副店長が現れた。「講演はNG、本に関することならOK」。これが副店長の提示した置きチラシの基準だった。森はあくまで喰い下がる。「編集」というキーワードを武器に、ついに美術棚の一隅を勝ちとった。


 仙台では、古書店でもETSのチラシを手に取ることができる。アート、絵本、文学を中心に選書された古書とカフェが半々のスペースで隣り合う火星の庭だ。『遊』のバックナンバーも時々見かける。それから、出版社荒蝦夷がこの春オープンした古本あらえみし。編集者である店主が資料として買い集めた古本と、地方出版社の新刊が喜々として雑居している。

 

 こうして未知奥連弦主の”はじチラ”は無事に幕を下ろした。されど、撒き散らしてこそのチラシだ。寝ても覚めても四六時中、森の都にひそむ想像力に目を凝らし、散らして集め、集めて結ぶ。 2019年8月2日現在(当時)、申し込みは4名!

  • 林 愛

    編集的先達:山田詠美。日本語教師として香港に滞在経験もあるエディストライター。いまは主婦として、1歳の娘を編集工学的に観察することが日課になっている。千離衆、未知奥連所属。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。