飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。

未知奥連(みちのくれん)の弦主・森由佳はジュンク堂仙台TR店をぐるーっと一周していた。弦主の生業は、銀行の内勤だ。営業の経験はない。落語家や漫画『ONE PIECE』(尾田栄一郎、集英社)のキャラクターが印刷されたレジ横のチラシを横目にスタッフの様子を窺う。”はじめてのおつかい”ならぬ”はじめての置きチラシ”のゴングが鳴る。
スマイル、スマイル…と頭の中でつぶやきながらレジの女性に近づき、エディットツアースペシャル(以下、ETS)のチラシを見せる。にこやかな対応にホッとした束の間、代わって副店長が現れた。「講演はNG、本に関することならOK」。これが副店長の提示した置きチラシの基準だった。森はあくまで喰い下がる。「編集」というキーワードを武器に、ついに美術棚の一隅を勝ちとった。
仙台では、古書店でもETSのチラシを手に取ることができる。アート、絵本、文学を中心に選書された古書とカフェが半々のスペースで隣り合う火星の庭だ。『遊』のバックナンバーも時々見かける。それから、出版社荒蝦夷がこの春オープンした古本あらえみし。編集者である店主が資料として買い集めた古本と、地方出版社の新刊が喜々として雑居している。
こうして未知奥連弦主の”はじチラ”は無事に幕を下ろした。されど、撒き散らしてこそのチラシだ。寝ても覚めても四六時中、森の都にひそむ想像力に目を凝らし、散らして集め、集めて結ぶ。 2019年8月2日現在(当時)、申し込みは4名!
林 愛
編集的先達:山田詠美。日本語教師として香港に滞在経験もあるエディストライター。いまは主婦として、1歳の娘を編集工学的に観察することが日課になっている。千離衆、未知奥連所属。
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コメント
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2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。
2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
たくさんのあなたが一千万の涼風になって吹きわたる。お釈迦さまやプラトンや、世阿弥たちと肩組みながら。