千悩千冊0003夜★サッショーしまっせ「ポストイットに殺意を覚えます」50代女性より

2020/11/22(日)10:15
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ゴートクジイシス館住人さん(50代女性・編集者)からのご相談:

本に貼る付箋は、絶対に幅10ミリ、せいぜい15ミリ以下にしたいです。
でもゴートクジイシス館の住人のなかには、あろうことか幅25ミリとか、最悪75×75ミリの巨大な付箋をばさばさと本に貼りまくり、しかもそのままの状態で書棚に本を戻してしまう不届きものがいます。
書棚で巨大な付箋が貼られた本を見かけるたびに、ムラムラと殺意すら湧いてきます。
こういう輩をどうやって懲らしめればいいでしょうか。

 

▲ゴートクジイシス館住人さんの付箋(撮影:後藤由加里) 

 

▲巨大な付箋が貼られた本(撮影:後藤由加里)

 

 

サッショー・ミヤコがお応えします

 

次回から不毛な戦いに持ち込まなくても済むよう、シーザー師が後に触れるように住人さまの意識を変容させる読書をオススメします。よく言われるように「1匹見つけたら100匹いる」のがヤカラの生態、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のも彼らの本性です。

実際、ヤカラな問題に悩む『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』イルセ・サン(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、書店に特設コーナーができるほど多いようです。ここは『図太くなれる禅思考』枡野俊明(文響社)を身につけ、『鈍感力』渡辺淳一(集英社文庫)を鍛えるのが一番かと思います。近く、茂木健一郎先生の『前頭葉がメンタルを決める』(PHP研究所)も上梓されるようなので、ぜひご参考になさってください。

ここからはむしろご相談ですが、せっかくメンタル領域に踏み込むなら、思い切って次の本に没入するのはいかがでしょう。

 

千悩千冊0003夜
マレイ・スタイン
『ユング 心の地図』(青土社)

▲イシスゴートクジ本楼 心理棚(撮影:赤羽卓美)

 

▲イシスゴートクジ本楼 意識無意識棚(撮影:赤羽卓美)

 

住人さまの苛立ちのどこまでが「心的エネルギー=リビドー」に基づき、他者との関係においてどのような「ペルソナと影」を形成しているのか、ご自身の「心の超越的中心と全体性」はどのような姿を描いているのかと行ったことがらに没頭されれば、巨大な付箋さえごくごくミクロな塵にしか見えなくなってくるのでは、と愚考します。

というわけで、本書はサッショー未読ですが、アメリカのユング派分析家(現在はスイス在住)、元国際分析心理学会会長にして現国際分析学会副会長の書かれた本です。ぜひ精読されて、OTASISでその成果をシェアしてくださいませ。

 

   自分の読みたい、読めなさそうな本は、誰かに読んでもらう!
   サッショーみやこ、読んだら、教えとくなはれ

 

 

◉井ノ上シーザー DUST EYE

 

「これだけは生理的に許せない」といった一線があるものです。その閾値は理解できない人には全くもって理解不能なものです。
幅10ミリの付箋というのは、人によっては「太い髪の毛が挟まっているな」「スパゲッティ食いながら本を読むなよ」とか言って、見つけしだい床に払い落とす程度のものかもしれません。
そんな情景を想像するだけで、あなたが憤怒の表情を浮かべることは容易に想像できます。

ではどうするか。
幅25ミリの付箋や75×75の付箋を集めて、まずはゴートクジから除去しましょう。これだけであの輩は困るでしょうが、まだまだ序章です。

これらの付箋すべてに「お前の編集は死んでいる」という、ゴートクジ界隈では最大の恥辱の言葉を書きつけます。そして、許しがたいあの輩と付箋を地獄へ叩き落すのです。
そこは円周の道となっており、貪欲と浪費の罪を犯した者たちの群が走り回り、出会い頭に罵り合い、殴り合っています。そして来た道を引き返し、再び出会い頭に罵り合い…、ということを永遠に繰り返しています。ですが、貪欲と浪費を体現している「ゴートクジの輩」だけは、「お前の編集は死んでいる」という付箋を体に貼られます。そして「この不届きもの」という地獄の住人たちの雄叫びとともに、煮えたぎった溶岩の池に突き落とされます。
灰になったら、輩を引き上げられて元に戻り、そして付箋を貼られる…。
永遠に続くこの地獄絵図を、あなたは高笑いをしながら見物する、至福の時間を過ごすことになるでしょう。

 

「千悩千冊」では、みなさまのご相談を受け付け中です。「性別、年代、ご職業、ペンネーム」を添えて、以下のリンクまでお寄せください。

 

 

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025