エディストライター陣が招集されたのは、2019年7月のことでした。会議の冒頭で、松岡校長は「記者然とした目」と「各自が独特のスタイルを発揮すること」を求めました。『遊刊エディスト』はイシスの機関紙である上に、ライターのエディティング・スタイルの鍛錬の場でもあります。その場で松岡校長は各ライターへ文章指南を提供しました。今にして思うと、とてつもなく贅沢な編集稽古です。
<校長メモより>
松岡ディレクションの言葉を噛みしめながら、筆圧の高い5名の記事を紹介します。
“決め”た編集方針と、“キメ”たタイトルで振り切りました。「白川らくだのみみっちさ」という着眼点が優れていますし、ぬぼーとした写真の表情も失笑を誘います。タイトルと写真と本文で、粋に出来事を切り取るところに、DUST記事の醍醐味があります。その本質は“粋”な“思い切った抑制”で、梅澤奈央の技使いは名手の域に達しています。
「こっくりとした」という語感がたおやかで魅せます。紋切り型に陥らない丸洋子の、短くとも情景と情感が伝わる逸品です。言葉の紡ぎ方が丁寧なので、書き手の欺瞞を全く感じません。静謐を湛える文章に対し、雄弁な帯の柄の「女神イシス」の写真にも注目ください。
登板するスター師範を、「筋・骨・気・肉」で“奴”と言い放ちました。誠意は全くありませんが、さすがの力技。富岡鉄斎の書を思わせる、太さと速度感の書きっぷりの吉村堅樹です。ふくよ師範を知らない人にも、その魅力を存分に伝えて読ませます。イシス学林局の権謀術数ぶりも暴かれてます。
温厚な景山和浩には、吉村のようなアクはありませんが、編集ベテランの鋭い観察眼は「野球チーム見立て」で生かされました。なにかを伝える際に、別のなにかを介すと、景山は絶妙にうまい書き手になります。今後も、より方法に徹した記事を楽しみにしています。
当初、林愛は「書き手としての自意識」を持てあますところがあり、その文章は、無駄に冗長に見えました。ですが、この三冊筋プレスあたりから、腹を据えて遠慮なく言葉の刃を運ぶような書き方となりました。熟練の外科医が腹を躊躇なく裂くメス捌きを思わせます。スタイルを得た書き手の誕生に、目を細めました。
なぜ、わたしはこんなに偉そうなのか。林のポテンシャルを予感してエディストライター陣に招き入れたのは、わたし・井ノ上シーザーだからです。
編集の悦びとは、才能がひらく瞬間に立ち会うことにあります。学衆は師範代を通じて、師範代は師範を通じて、ホントとツモリを往来し、“たくさんのわたし”を発見し、別様の可能性を見出します。すると、より世界が発見的に見えてきます。イシスは、そのような契機を差し出す母体です。
イシス師範代に師範のみなさん。目利き力を磨き、おおいに発揮してください。眼をぐっと開いて、明日のエディストを発掘するつもりで。
井ノ上シーザー
編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。
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