一年納めの本棚掃除、6万冊の煤払い

2020/12/24(木)23:00
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一年で最も汚い格好をした輩たち。 
 
いや失礼、汚れてもいい服装でうち揃った編集工学研究所、松岡正剛事務所スタッフ20名。装備はサッサとモップと軍手とマスク。特別参加にエディットツアーをつとめたばかりの上杉師範代を迎えて、クリスマスイブに年納めの本棚掃除が行われた。
 
早い者勝ちでめいめい棚の前に陣取る。1階の本楼は日本に関する本ばかり2万冊。縄文から昭和までの歴史、黄表紙から満洲映画までの近世近代メディア、文様や意匠といった技芸、外国人や哲学者による日本論、万葉から現代までの詩歌、神道仏教に民俗学、歌舞伎や能の芸能、露伴・漱石から円城塔・村田沙耶香までの文学といったラインナップだ。 
 
ブビンガにある軍手と掃除用具を手に本棚へ向かう
 
ちなみに2階は廊下と応接室に世界史、世界文学が国別に並ぶ。ワークスペースと学林堂には数学、物理学、化学から脳科学、認知心理学まで、言語論・読書論・物語論、地政学・経済学・経営学、スポーツとマンガが配架される。3階が美術、音楽、演劇、映画、デザイン、建築、そして大部の辞書類が並ぶ。これで計6万冊になる。
 
掃除を終え、「済」の付箋がついた本棚。両端を高さのある本にするのがコツ。
 
埃を払い、ダブり本を取り出し、書棚を整え、意味の順列を組み直す。朝10時半から開始し、中締めは18時過ぎになった。
 
ダブリ本の一部。今年は例年より少なめ。
 
中締めの雑談では、松岡校長からは東京都現代美術館の石岡瑛子展のお勧め、そして千夜千冊1645夜『インド哲学 七つの難問』『知の編集工学』(p333-343)と『遊学』の冒頭、これを重ねてくれれば僕の考えは大体わかるんじゃないかなという示唆があった。最後にスタッフはお題をもらって、28日の仕事納めと年末年始を迎える。     
 
   
  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025