【Playlist】「更新」と「継承」をめぐる10題

2022/01/25(火)16:30
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学びのプロセスは自己変容を伴う
私たちは、何かを学ぶことで世界観を更新するのだ。
とはいえ、
更新前の世界と更新後の世界とは継承関係にある

 

更新継承

この一見アンビバレントな2つの概念は、
「学び」を親に二点分岐しながら「型」によって媒介されている。

 

遊刊エディストのアーカイブに取材して、

「更新」と「継承」をめぐる問感応答返を概観してみよう。

 

[継承/インヘリタンス]

1.ひきつづいて、うけつぐこと。先代や先任者などの地位や身分、財産、権利、義務などを、うけつぐこと。
2.オブジェクト指向プログラミングにおいて、あるクラスが既存の別のクラスの性質を受け継いでいること。継承関係にあるクラス間では、元になるクラスに対する差分のみを記述するだけで新しいクラスを定義することが可能となり、メソッドやプロパティなどすべての機能を利用することができる。

 

【問】

 イシス編集学校は「型」によって「型」を学ぶ
 だが、待てよ。私自身のイシス歴を振り返れば、始めから「型」を学ぶつもりで入門した訳ではなかった。学ぶことを通して型に気づいていったのだ。気づくまでには長い時間が必要だった。なんだ私たちの全ては型のなかにあるのだ、と。
 ならば、なぜ型を学ぶのか? なぜ型によって学ぶのか? そもそも型とは何なのか?

#1◆[週刊花目付#011]「生きているもの」を「生きたまま」扱う技能

(2021.5.14)


【感】

 歌のもともとの役割は鎮魂ですよね。それが連綿と続いてきたのに、それがぷっつりと途切れてしまったのが現代です。靖国神社を語れないし、盆踊りも形骸化してしまった。その現代において、やはり昔の歌を知ることで、いまとはまったく違う考え方があったことを知るのは大事だと思います。

 すぐに答えはでないだろうから、だからこそ、引き継ぎ、伝えていくということが大事なんだろうなと思います。

 だから、歌を考える、継承していくうえでも、この日本の心のよりどころの根っこを考えていく必要があると感じますね。

#2◆[interview]『うたかたの国』編集者 米山拓矢に聞くうたの未来【は】700年後の返歌待つ

(2021.5.14)

 

 世阿弥が生きた14世紀は現在以上に世の中が揺らいでいた。世阿弥は自然の摂理に逆らえないけれども、それだからこそ何かが引き出せるのではないかと考えた。フィードバックループをまわしつづけ、身体の所作を要素・機能・属性にわけてリバースエンジニアリングを一つひとつ言葉にするうちに、どうやら編集学校における「型」が介在していると気づき、「二曲三体人形図」をあらわした。これを身につければいかようにも転用できるという「型」の発見だった。

 私たちの記憶や脳の中ではすでにたくさんの「面影」が立ち上がっているが、それがなかなか動かせないでいる。世阿弥が面影を意図的に編集し「型」や「稽古」の実践としたように、松岡校長はこうした面影を編集し「編集工学」をつくりだした。「型」や「編集工学」を継承するとは、こうした面影ごと継承していくこと。

#3◆「面影」ごと編集工学を継承する【35[花]入伝式】

(2021.5.08)

 

【応】

 呼吸が止まらぬように、イシスの編集もやむことはない(…)どのコースも毎期あらたな学衆を迎え入れ、師範代さえ一人残らず入れ替わる。(…)その新陳代謝は、イシスの骨格であるお題にまで及んでいる。

 改訂は、「ハイパー」という用語がカギとなった。お題のテーマである「ハイパーミュージアム」の「ハイパー」さを稽古のなかで追求することで、「これまで見たことがないけれど、それでいて、これが見たかったと思わせるもの」に迫る。文体・クロニクル・物語編集術にも通じるISISの編集術の本懐へ飛びこむ企てだ。

#4◆たらこパスタに「ハイパー」を学べ 松岡正剛流プランニング術、革新のポイントとは 46[破]
(2021.7.22)

 

 VUCAの時代と呼ばれて久しい。新型コロナウイルスの影響下で新たな物語や社会像の必要性に迫られつつも、未だに方向性が見出せない。成長神話の限界を感じてはいるが、その枠組みから抜け出せずにいる。気がつけばオンライン会議やリモートワークが当たり前になり、何の違和感もなく毎日を過ごしている。これは一体どういうことか。どうすればいいのか。

 例えば、ダボス会議が選んだ2021年の年次総会テーマが「The Great Reset」であること。本当に「Reset」でよいのか。今までのことをゼロにリセットするべきではないし、私たちは幼い頃の記憶やこれまでの経験などを引き連れて生きているのだから、そもそもゼロにすることすらできないのではないか。それよりも、一人ひとりが身につけているものを取捨選択し、組み合わせる「Re-Edit」に向かうべきではないか

 そのためには複雑なものを複雑なまま捉えて向き合う必要がある。これは相当な忍耐が必要だ。そのための方法の一つに編集工学の「物語」という情報様式がある。物語は、言語に先立って生まれた情報を保存し継承する方法であり、古代より人々は複雑な情報を物語によって伝えてきた。

#5◆「Re-Edit」で編集的社会像へ【AIDA 第3講】
(2020.12.12)

 

 ふつふつ、グツグツ、ぐわんぐわん…。物語講座が音を立てている。

 師範代と共に文叢(教室)に向かい合ってきた師範たちからも言葉があふれる。
 お題からやってくる偶然や外部を取り込むことで物語ができる。お題は未知と出会う扉ということを意識してほしい、大きな意味で物語編集の意味を考えてほしいと、物語に向き合う叢衆を後押しする言葉をつないだ。

#6◆異端で異質。物語講座 14綴から、新たな冒険がはじまる
(2021.9.25)

 

【答】

 じつはイシス編集学校誕生の数ヵ月前に、「守」でも「破」でもなく、「離」の原型といえるようなコンテンツとスタイルの学習実験が、ひそかに編集工学研究所内部で行われていたことは、あまり表沙汰にはされてこなかった。残念ながら、スタッフたちの熱狂的意欲をかきたてすぎて、あっというまに終息させられてしまったという“黒歴史”を帯びているせいなのかもしれない。
 だが、イシス編集学校が20周年を迎えた今こそ、「守」や「破」が充実して「離」へと進化していったのではなく、あたかも宇宙開闢のようにとつぜん「離」が生まれ、そこからベビーユニバースのごとき「守」や「破」のたくさんの教室が生まれていったのだという、新しい「創世記」を語りはじめてもいいのではないか。ただしそのばあい、イシス編集学校で「離」が開講するまでに5年間もの「産みの苦しみ」があったという、いままで流布されてきた別な伝説との折り合いをつけねばなるまい。イシスの物語編集力が試されている。

#7◆ イシス・ジェネシス OTASIS-16

(2020.6.18)

 

 あるところまできたものは、継承のための伝承をつくらないといけない

 経営の数字だけ残してやめていくというようなことはそれはそれでいいけれど、こういうふうに続いてきた感門之盟のようなものは、単なる文脈でもなく、超複雑に何本もの曰く言い難いナラティビティが複合的に編み重なっているわけなので、そう簡単に切り離せるものではないんですね。

もしも諸君が編集学校を継承したいと思ってくれるのなら、編集学校にあるものを読み込んでほしい(…)そこに潜んでいるアンダーシナリオを抜き出してもらいたい。それこそが継承であり、ヒューリスティック(発見的)なことになるでしょう。そういうことを委ねたい。

#8◆’16校長校話「伝承と継承」(3/4) 編集学校という未完

(2019.12.25)

 

【返】

 イシスの[守]で学ぶのは、いわずもがな編集術の型である。その型を代行し、体現するのが編集学校の師範代だ。師範代としての稽古をしない限り、「編集道の守」をまっとうしたとは言えないのだ。
 吉村は、赤チョークに持ち替え、黒板に書かれた守破離の文字をぐりぐりなぞる。「編集道の守は、イシスの[守・破・離]と、師範代を終えるところまでです」
 型には先達の思いが載っている。型を継承することで、思いが共有できるからだ。1252夜『守破離の思想』にはこうある。「師弟相承のしくみのある稽古事は『夢の共有』をもたらす」

 イシスというエディティング・ステートで、みながつねに編集状態であるためには、型とそれを継承する稽古が必要なのである。

#9◆ 突破しても、まだ「守」なの?! 編集道の守破離とは【35[花]入伝式】

(2021.5.11)

 

 継承の前提には「文化」がある。前掲書には「文化とは、世代を超えて集団に引き継がれる知識や技術や価値のこと」と定義されている。文化は模倣によって体系づけられたシステムであるということなのだが、肝心な点は、個体レベルの個人知は一旦「文化」を経由することによって形を変えながら継承されるということだろう。
 われわれが「継承」について語るなら、想定すべきはいちいちの情報単位ではなく、型やスタイルやシステムを捉えることが求められる。

#10◆[週刊花目付#27] 継がれ行くもの
(2021.12.14)

 

【Playlist】「更新」と継承」をめぐる10題(選:深谷もと佳)

 

#1◆[週刊花目付#011]「生きているもの」を「生きたまま」扱う技能

(2021.5.14/深谷もと佳)

https://edist.isis.ne.jp/nest/haname_011/

 

#2◆[interview]『うたかたの国』編集者 米山拓矢に聞くうたの未来【は】700年後の返歌待つ

(2021.5.14/梅澤奈央)

https://edist.isis.ne.jp/cast/utakata_yoneyama03/

 

#3◆「面影」ごと編集工学を継承する【35[花]入伝式】

(2021.5.08/上杉公志)

https://edist.isis.ne.jp/just/35hana_entrance/

 

#4◆たらこパスタに「ハイパー」を学べ 松岡正剛流プランニング術、革新のポイントとは 46[破]

(2021.7.22/梅澤奈央)

https://edist.isis.ne.jp/post/46ha_renewal/

 

#5◆「Re-Edit」で編集的社会像へ【AIDA 第3講】

(2020.12.12/上杉公志)

https://edist.isis.ne.jp/just/aida_s3_001/

 

#6◆異端で異質。物語講座 14綴から、新たな冒険がはじまる

(2021.9.25/衣笠純子)

https://edist.isis.ne.jp/just/new-14monogatari/

 

#7◆イシス・ジェネシス OTASIS-16

(2020.6.18/太田香保)

https://edist.isis.ne.jp/nest/otasis_16/

 

#8◆’16校長校話「伝承と継承」(3/4) 編集学校という未完

(2019.12.25/加藤めぐみ)

https://edist.isis.ne.jp/past/2016-校長校話-伝承と継承-3/

 

#9◆突破しても、まだ「守」なの?! 編集道の守破離とは【35[花]入伝式】

(2021.5.11/梅澤奈央)

https://edist.isis.ne.jp/post/35ha_editing_do/

 

#10◆[週刊花目付#27] 継がれ行くもの

(2021.12.14/深谷もと佳)

https://edist.isis.ne.jp/nest/haname_027/

  • 深谷もと佳

    編集的先達:五十嵐郁雄。自作物語で語り部ライブ、ブラonブラウスの魅せブラ・ブラ。レディー・モトカは破天荒な無頼派にみえて情に厚い。編集工学を体現する世界唯一の美容師。クリパルのヨギーニ。

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