2022年10月30日、輪読座「三浦梅園を読む」第1回目が開催された。
前回までフォーカスしていた湯川秀樹をして天才と言わしめた人、三浦梅園。
三浦梅園を取り扱うのは2回目。かつては『価原』を読んだが、今期は『玄語』を熟読する。
初回は条理学という学問を創出した三浦梅園の学びに対する姿勢を取り扱った。
三浦梅園は、江戸時代の学問のあり方を「かづら学」「へりきり学」「専門学問」と言って批判した。
かづらとは、塀や木に巻きついているつる草のことである。目新しい学問が出てくれば、こぞって巻き付き、元木が倒れれば古い分野として見放す。そしてまた新芽を覆い尽くそうとする。そのような人々はさまざまな異説を流布するだけで、学びの本質を捻じ曲げてしまう。
続いて、へりきり学とは、原理を見つけるために構造だけにしてしまうことである。抽象化してしまい、全ての物事に法則を当てはめようとすることで、全体像が見えなくなる。ヘリがなくなってしまうということだ。それでは学問を捉えることはできない。
最後に、専門学問である。学問のタコ壷化が懸念されて久しいが三浦梅園はすでに江戸時代において、専門性を避けるように書いていた。天地の学を目指した梅園にとっては学際化など当然のことで、学問に垣根などそもそもなかったのである。実際に経済学や哲学、医学や天文など実に多分野で異彩を放った。
このようなことは、現代のアカデミーに対しても同じことが言えるのではないだろうか。特に、トレンドの学問領域に右往左往されて自身の学びの本質を見失っているかづら学派、細分化された専門性に迷走している専門学派の人間は多いだろう。
このような学問から自由になるために、三浦梅園は以下の三つ志を示した。
・「天を師とし、人を友とする」
ここで天というのは正しい認識方法のことである。特に梅園は多様性と同一性が対比的に捉えるのを誤った考えとして、相即の一体としてたがいに抱合する関係にあることを正しい思考とした。
・「言葉の明確化」
輪読師のバジラ高橋はこの重要性を口酸っぱく説いてきた。
「言葉を受け取ったままに使うことをやめなさい。由来がどこにあって、どんな変遷をたどってきたのか。そうやって言葉や概念の由来を全部チェックしなさい」。疑問を持ち調査することで自分の言葉になった後で、真理への議論を進めよということだ。
・「塋を再び素に帰す」
塋(えい)とは人工的に磨かれた玉のことであり、それをもとにもどすことである。自分の認識を正しい位置にセットバックすることである。あるいは投げ返すことである。私たちは歪んでいる理解や思考をもとに戻すことを意識せよということだ。
『玄語』にはたくさんの図象が登場する。
経緯剖対図(写真左)や天神天地図(写真右)など分岐が鮮やかに世界観を物語るように仕組まれている。編集工学的には、二点分岐や一種合成が使われていて編集思考素の極めつけとも言えよう。
そんな玄語図を次回の輪読座では、座衆に描いてもらう。オリジナルの玄語図だ。
『玄語』とはそれ自体が図なんです。みずから図をしるすことで、宇宙像が整理されていく。みなさんにも是非やってもらいたい。
―バジラ高橋
座衆が三浦梅園を持ってどのような図象を描くのか。おそらく玄語図を描く試みができるのは輪読座だけだろう。それぞれの個性が色濃く滲んだ思い切った図象を期待したい。
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【今後の開催予定】
・2022年11月27日(日)
・2022年12月25日(日)
・2023年1月29日(日)
・2023年2月26日(日)
・2023年3月26日(日)
※毎月最終日曜日に開催
※全日程:13:00〜18:00
【受講資格】どなたでもお申込いただけます(イシス編集学校講座未受講の方もご参加可能です)
【参加方法】オンライン(Zoom)
※当日ご参加いただけない方向けに、開催後に講義動画を共有いたします。
日本哲学シリーズ 輪読座「三浦梅園『玄語』を読む」
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山内貴暉
編集的先達:佐藤信夫。2000年生まれ、立教大学在学中のヤドカリ軍団の末っ子。破では『フラジャイル』を知文し、物語ではアリストテレス大賞を受賞。校長・松岡正剛に憧れるあまり、最近は慣れない喫煙を始めた。感門団、輪読小僧でも活躍中。次代のイシスを背負って立つべく、編集道をまっしぐらに歩み続ける。
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