快晴の日曜日、街並みはクリスマスで賑わうなか、本楼で今年最後のイベントが行われた。『三浦梅園を読む』第三輪である。イエス生誕の祝祭に梅園を学ぶことができるのは輪読座だけだろう。輪読師であるバジラ高橋も力のこもった口調となった。
内容の細かいところは読み込めなかったと前回を振り返った稲田座衆。しかし、内容は梅園の玄語図に核心に迫るものであった。
玄語図は事象をただ分離していくのではないという気づきをもとに、二つで一つの対が同時的に連鎖していくということを図象した。そして、梅園の方法は森羅万象を説明したり、複雑な世界をつかむための方法ではなかったのではないかという仮説を立てた。
バジラは前回の内容を振り返りながら、それが「推観」であると補足し、わかっていることに対してわかっていないことを付置することは発見の原理であると展開した。
感知できる現象をたどっていき、それを作動させている感知できない何物かを理解しようとする。湯川さんの非局所場理論だって、梅園の方法で生み出されたものなんです。
かつて輪読座で取り上げていた湯川秀樹を引き合いに出し、三浦梅園が発見の方法に迫っていたことを明らかにした。
続く星野座衆は、玄語図に東洋的な動的さを感じたと振り返った。
着目したのは前回のキーワードであった「依徴於正」(いちょうおせい)と『三浦梅園を読む』開始以来ずっと追ってきた「反観合一」。正しい拠り所によって事実を探究するべし、そして、相反するものの関係そのまま観察をするべしということだ。
星野座衆が特に着目したのは「徴」という漢字。
「徴という、偶然性をふくんだささやかな前触れの先に大世界が広がっているところに、東洋的な躍動感が包まれている。既知の情報である選んだものと、未知の情報である選ばなかったものの間のダイナミクスにこそ、想像と創造の可能性があるのではないか」。
西洋の二元論的な思想にはよらない梅園の方法を、なめらかな声色のなかに好奇心を走らせて語った。
バジラの図象資料は今までとは異なるものであった。三枚にわたって文字がぎっしりと敷き詰められている。
これらの正体はクロニクル。寛政の改革とフランス革命が同時期に並んでいるなかに、梅園の師弟関係や著作時期を詳細に記している。
私は独自の年表を作るようにしている。出来事の背景を知ることができるだけじゃない。これは、歴史の再構築なんですよ。
世界に散らばっている断片的な歴史事項を組み替え、現在に対する新たな視点を形成していく。クロニクルは、過去と地続きな目下として世界をとらえるためのツールなのだ。これは「歴史的現在」に立つための足がかりとも言い換えられるだろう。
梅園から続いている現在を私たちはどのように引き取っていく必要があるのか。来年の輪読座も見逃せない。
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・2023年1月29日(日)
・2023年2月26日(日)
・2023年3月26日(日)
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日本哲学シリーズ 輪読座「三浦梅園『玄語』を読む」
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山内貴暉
編集的先達:佐藤信夫。2000年生まれ、立教大学在学中のヤドカリ軍団の末っ子。破では『フラジャイル』を知文し、物語ではアリストテレス大賞を受賞。校長・松岡正剛に憧れるあまり、最近は慣れない喫煙を始めた。感門団、輪読小僧でも活躍中。次代のイシスを背負って立つべく、編集道をまっしぐらに歩み続ける。
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