遊刊エディストは創刊から4回目の新年を迎えました。今年も、編集部恒例の「エディスト新春放談」をお届けしてまいります。エディスト・ライターやニューカマーをゲストに招き、2023年の新たな展望に野望、夢想に妄想まで、新春から放談していきます。第4回には、2022年にエディストから生まれた「カメラ部」の皆様をお招きしました。インスタもスタートし、様々なテーマで企画が始まっています。
◎遊刊エディスト編集部◎
吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 松原朋子 師範代, 上杉公志 師範代, 梅澤奈央 師範,穂積晴明 デザイナー
◎ゲスト◎
カメラ部
後藤由加里 師範
林朝恵 師範
福井千裕 師範代
後藤 2022年の新春放談で、今年はカメラ部をはじめようと言っていたのですが。有言実行、はじまりましたね。
林さんは初期からのメンバーで、主に動画を担当してもらっています。エディストが始まって以来、松岡正剛校長の行くところに林ありで、いつもビデオを回しています。福井さんは松岡正剛校長からの推薦で参加してくださったんですよね。ただ、先に破の師範代になられたので、今は師範代ロール修了後にカメラ部で活躍いただけるのをお待ちしているところです。
今日は放談にいらしていないのですが、木藤良沢さん、阿久津健さん、牛山惠子さんも今カメラ部に参加してくださっています。
みなさん、今までのところカメラ部の所感はいかがですか?
林 カメラ部はラウンジでの発言が多くはないのですが、夏に合う千夜千冊、通称「ナツセン」、秋にも「アキセン」を企画しました。書籍を撮るんですが、一般のインスタにある書籍の写真とは違う撮り方をしているのが特徴ですよね。白壁とかテーブルにのせて撮るのではなくて、シーンを決めてドラマチックに撮っています。メンバーそれぞれの相互編集で始まった企画で、そこが面白いと思っています。インスタでは編集学校関係ではない、全く違う方々が反応しているのがいいですよね。続けていきたいと思っています。
後藤 季節感のあるものがやりたいということがあったんですよね。選本する人と、撮影する人を分けているのも特色です。ナツセンはエディスト連載ライターに、アキセンは49[破]師範代の皆様に選んでもらった千夜本をカメラ部で撮りました。
福井 ちょうど[破]の師範代をやりはじめの時で。[破]は本との関連が深いコースなので、本と関わっていくぞという構えの時に、秋というテーマで千夜千冊を関係づけていく楽しいお題をカメラ部からいただきました。開講準備の時期でしたが、気負わずに、ふっと回答できるものでした。選んだ本の写真を撮ってくださるということがわかっていなかったので、あとでこんな風になったんだ!と楽しくなりました(笑)。私は写真が撮れませんでしたが…。
後藤 また次回「ハルセン」かな、撮る側でぜひ。実は撮る方も何の本が選ばれるかわからなくて、本が分かってからいろいろ検討しているんです。
梅澤 インスタ、よく見ています! これを見るためだけにインスタアカウント作りましたもの。編集学校はテキストでのコミュニケーションが主なので、みなさんがもっているビジュアル的なセンスって隠れてますよね。カメラ部の活動では、それが写真を通じて現れてきたのがおもしろかったです。たとえば、阿久津さんが撮った赤と青の写真を見てから指南を読んだら、指南から立ち上がる意味も変化するかもな、とか。カメラ部は師範や師範代のイメージが変わるような場だと思いました。
後藤 うれしい♪ 「人物を撮るかのように本を撮る」のはユニークなお題だと思いますし、その人のイメージを写真を通して見るのは面白いですよね。
梅澤 カメラ部の写真には、本の表情だけでなく、撮影者の人となりも二重写しになっているのがたまらないです。きっと多くの本好きに響くのではないかと。
林 インスタの中には、この人インスタ熱心だなという人は結構いますよね。編集学校関係者にはあまりいないんですが。
梅澤 本の紹介を通して、編集学校の外まで影響力をもちはじめた感じですね。
マツコ すでにして林頭のおっしゃる「卯報雲展」でしょうか?
上杉 編集学校のSNSを担当しています。このSNS時代、画像や動画があるかないかで伝わり方が想像以上に変わってきていて、いまや写真や動画のクオリティがとても重要になっています。例えば、インスタ投稿をFacebookにも連動させていますよね。インスタからの投稿の方が、普通のテキスト中心の投稿よりも明らかにリアクションがいいんです。パッと伝わるスピード感もあって、受け取りやすさがあるのだと思います。SNSでのメディア編集にとって、ビジュアルの重要度が高まる中、カメラ部の発足は嬉しいニュースでした。
吉村 ナツセン、まとめ記事をエディストで出したらどうかな。
後藤 出していますよ(笑)
吉村 校長からはフィードバックはもらえた?
後藤 先日アキセンを見ていただいて木藤さんの『バッハ』に「おぉ」とおっしゃられてました。林さんの『スタンド・バイ・ミー』には「これ廃線なの?」と質問がありましたね。
林 実は木藤さんからも同じ質問があったのですが、あれ実は京王井の頭線なんです。
後藤 校長は本から立ち上がってくるモードがちゃんと捉えられているのかを重点的に見ていらっしゃるのかと思いました。私が撮影した『読書の裏側』は「本の厚みが撮れるといい」とアドバイスをいただきました。
吉村 カメラ部の紹介も、もっとしたらいいですよね。
後藤 一人ひとりの得意手とか表象とかをそれぞれ立てて、インスタ連載としてコーナーを持ってみたいんですよね。
福井 12/13に行われたDOMMUNEでの情報の歴史21電子版の発売記念イベントを見て、情歴の世界観を撮りたいなと。
林 情歴の写真化って面白い視点だよね?
福井 今回のアキセンだったら、例えば『スタンド・バイ・ミー』そのらしさで線路と一緒に撮る、“ぽさ”を一緒に撮るといいなと思ったんですが、何か違うものと組み合わさったとき情歴にハッとする感じがあったらそれはそれで面白いなと思って。本と、本に深くかかわる歴象のあるページをだして、そこと重ねて何かを撮るとか。
林 情歴自体を撮ることもできそうだよね。”情歴+ワン”でもいいし、情歴にある歴象と、何かの対象なのか、そこに絡んでくる本を撮るとか。
福井 そういうのがおもしろいかなって。
吉村 そういえば、『情報の歴史21電子版』をまだ入手していない方は、ぜひこちらから申し込んでくださいね。[破]でのクロニクルはもちろんのこと、いつも辞書のようにひけるよう、稽古の際には手元にもっておくといいですよ。
吉村 情報の歴史はある種、アーカイブ・ベースみたいなもので、いかようにも広げたり関係づけたり、深堀できたりするものではあるんだよね。カメラ部が本やCDや人物が撮れるなら、今後の展開として、カメラ部が撮った写真が”情歴アーカイブ”にひもづいていくというのは面白そうです。今後は情歴をウェブ化していきたいのですが、オプションとしてカメラ部の写真がついていると、どうだろう。本の書影や、人物の写真もリンクできるといい。歴象に関連情報としての写真があるとすごくいいよね。
林 DOMMUNEの写真を撮って、電子版ならクリックしたらカメラ部の写真がでることもできますよね。
吉村 30周年の2017年のときに情歴を復刊させようという話ができたときに、松岡校長が写真や動画、音声、ハイパーリンクを入れた方がいいと言われたんですよ。壮大すぎてその時は諦めたんですが、段階的に画像を入れるのも、やりたいことのひとつです。情歴の将来の姿として、校長が望んでいることでもありますね。
林 いずれはGoogleへ100億ぐらいで売ってつくってもらったら、世界中のカメラで撮ってくれますよね。
吉村 カメラ部が撮影をする以外にも、画像を買うこともできるし、色々と可能性はありますね。気に入った情歴の見開きをピックアップしてとることも、エディスト記事としてはできそうだね。
林 情報の歴史拡張計画ですね?
吉村 情歴WEBは、編集学校のインフラとして可能性があると思っています。学生から年配の方まであらゆる年代に開かれたものになるし、自分自身がコミットできる一生ものの「マイ情歴」になると思いますよ。
林 インスタでいいねやフォローしてくれている人に、出版社やアーティストがいるので、そのうち楽しいことができるかもしれませんね。
吉村 あとは本棚ですね。本棚にはトポスがある。去年はHyper Editing Platform[AIDA]の合宿で近畿大学のアカデミックシアターに行きましたが、あそこはトポス化されているので、一冊の本から奥に行ったり横に滑ったりができるんですよね。
後藤 情歴がトポス化したらおもしろいですよね。福井さんの抱負はお伺いしました。エディスト記事に刻まれますのでぜひ実現しましょう(笑)。突破を終えたらすぐにカメラ部に参加していただきたいですね。 それでは、林さんは? 林さんのエディスト連載として「松岡正剛 映写室」も走っていますが。
林 インスタって、社会との窓口ですよね。連載っぽいものとしてナツセン・アキセンがありますが、ひとつの事件を追いかけるようなもの、ひとつのテーマを追いかけるものをやってもいいかもしれませんね。
吉村 林さんのシリーズ「映写室」も、タグがいると思います。映像って、タグ付けされていないので、取り出しがなかなか難しいですよね。工夫したユニークな映像のタグがないと、次にもう一度Re-editしにくいものになると思うんですよ。
林 映像であればYouTubeにタグ付けさせていった方が見やすいかもしれませんね。反応もインスタに映像を出した方が視聴者の動きが早いですものね。インスタは画像をタッチしてみるもので、エディストは読み物なので、見ている人の求めているものが違うのだろうなと。読み物に接する人と、絵や動画に接する人の層がずいぶん違う印象があります。だから、映像が固まって見られる場ができてくるといいのかもしれませんね。
吉村 2023年はYouTubeチャンネルの開設ですね。
林 オツ千YouTubeはあるんじゃないですか?
吉村 穂積と、オツ千を一部Live番組にしてしまって、そこはYouTubeチャンネルがあってもいいかなとは話していました。YouTubeチャンネルでは、多読の出版社や著者コラボとか、過去の校長のコメントも、切り出して紹介するのもできるかもしれません。
林 DOMMUNEの宇川さんがしゃべりの合いの手を小刻みに入れているのを見ていて、うまいなと思いますね。
吉村 林さんが出演してくれてもいいですよ。
林 じゃあ、要検討ですね(笑)。もっとしゃべれる人がいるじゃないですかね。川野さんとかね?
吉村 川野さんの国語のレクチャーが見たいですね、久しぶりにね。
川野 需要がないとね(笑)
後藤 情歴TVですかね。
吉村 情歴電子版はもう少し広げたいからぜひやりたいですね。
福井 [破]に『全然アート』なお題がありますが、講座の中でもテキストではないお題が出ているので、ビジュアル、グラフィックのところにつなげていけたらいいなと思っています。
吉村 校長がグラフィック講座をつくろうかと話されていました。ぜひお願いします!
林 2023年はビジュアル祭りがおこるでしょうか?!
後藤 カメラ部がその最先端に行けるようにしましょう〜。カメラ部の皆さん、ありがとうございました。
「其の伍」に続く…
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2023年 新春放談
其の壱 – エディストは「卯報雲展」なメディアになる (1月1日 0時公開)
其の弐 – [守][破][花]の卯年、エディティング・キャラクターの突出へ向かう (1月1日 19時公開)
其の参 – 言語聴覚士は、迷いながらもメタファーで綴り続ける(1月2日 公開)
其の肆 – 2023新春放談 其の肆 – カメラ部の2年目は“ISISビジュアル祭り”を!(現在の記事)(1月3日 公開)
其の伍 – YADOKARIの野望?夢想?「指南・多読・意匠」への思い(1月4日 公開)
其の陸 – 編集部の卯年、跳ねて弾けてさらなる編集的高みを目指す!(1月5日 公開)
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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