「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。

あけましておめでとうございます。
イシス編集学校は今年、25周年を迎えました。その記念の年に、私たちは松岡正剛校長のおられないお正月を迎えました。たとえようのない寂しさです。
でも、校長が25年間にわたって創り上げ、磨き上げてきた稽古と指南の方法を、私たちは持っているのです。これからもそこに出入りしつつ、それぞれが自分の編集能力を深めていくことができます。この蓄積を少しも無駄にしないように、皆で徹底的に使いましょう。その蓄積をそれぞれの能力とし、それぞれの「人としての深み」にしていきましょう。
昨年の12月25,26日には、本楼と書斎等で、校長と志や活動をともにした方々が集うお別れの会「玄月惜影會」が開催されましたね。私も、校長と長い縁のある多くの方々に再会し、その縁の数と長さと深さを、改めて思い知りました。研究者、文筆家、写真家、企業経営者、政治家、音楽家、報道・放送界の方々など、本当に多くの方々が玄月惜影會に足を運んでくださり、校長の事績の多様さに改めて驚いておられました。
その多くの事績のひとつが、イシス編集学校の方法の確立でした。イシス編集学校は、それぞれが自らの持っている編集能力を知り、自らの力で拓いていくための方法が躍動する場所です。その基盤となる千夜千冊には1850夜の蓄積があります。私たちはこの1850の扉をいつでも開けて、そこから才能を拓く稽古の種を、見つけ出すことができるのです。
私自身、多くを学んできました。守、破、離、多読ジム、風韻講座、花伝所を稽古しながら、この社会にある学校教育とは全く異なる能力の拓き方があることを、実感しました。学校制度ともっとも違う点は、互いを「受け容れる」ことでしょう。受け容れることによって互いの感性と価値観と能力を交叉させ、自らの枝をそこから新たに伸ばし育てることができる点です。それぞれが多様となり、深くなります。その可能性が満ちているのが、イシス編集学校なのです。
これは世間でよく言われる「ほめれば育つ」とは違います。ほめるのは、言葉だけでも可能です。しかし他者を感じ取り他者の連想の中に入って、ともにそれを認識しながら自らが育つことは、イシス編集学校という場があってこそ、できることなのです。
この場が今まで学衆たちの中に何を引き起こし、何をもたらしてきたか。今年から私はそれを発信していくつもりです。どうか皆さん、皆さんの中に起こった変化を、私に伝えてください。
学長 田中優子
田中優子学長による新年のご挨拶を動画でもご覧いただけます
田中優子
イシス編集学校学長
法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。『江戸の想像力』(ちくま文庫)、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)、松岡正剛との共著『日本問答』『江戸問答』など著書多数。2024年秋『昭和問答』が刊行予定。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離][ISIS花伝所]を修了。 [AIDA]ボードメンバー。2024年からISIS co-missionに就任。
[守][破][離][花伝所]を終え、その間に[風韻講座]や[多読ジム]や[物語講座]を経験しながら、この春夏はついに、師範代になりました。 指南とは何か、指導や教育や添削とどこが違うかは、[花伝所]で身 […]
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コメント
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2025-09-16
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2025-09-04
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