たくさんのキャラクターを持つ師範代へ渡されたのは?ーー54[守]先達文庫授与【86感門】

2025/03/15(土)17:31
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 鈴木康代学匠のメッセージに聞き惚れ、少し紅潮した54[守]20名の師範代が順番に舞台へと上がった。15週間を駆け抜けた師範代には、師範から労いの言葉を紡いだ感門表と、それぞれのために選ばれた先達文庫が贈られるのだ。手にした一冊の本は、寿ぎの場に集まった学衆に広がるどよめきと拍手と共に、師範代たちに次の一手を打つためのアフォーダンスとなる。

 感門表が渡された順に紹介しよう。


54[守]先達文庫



◆榎田智子師範代 (半音タトゥー教室)
『不良少女伝』 平山亜佐子/ちくま文庫



◆木村昇平師範代 (うごめきDOHATSU教室)
『孔子暗黒伝』 諸星 大二郎/集英社文庫

 

◆松田秀作師範代 (たまむしメガネ連教室)

『司馬遼太郎の「跫音」』 関川 夏央/岩波現代文庫

 

◆福地恵理師範代 (ウルフル弘法教室)

『アインシュタイン回顧録』 アルベルト・アインシュタイン/ちくま学芸文庫

 

◆細井あや師範代 (カタコト黄表紙教室)

『ことばの波止場』 和田 誠/中公文庫

 

◆辻和子師範代 (つくつく少納言教室)

『折々のうた 三六五日』 大岡 信/岩波文庫


◆藤井宏行師範代 (展色ヴィンテージ教室)

『異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論』野崎 歓/講談社文芸文庫

 

◆美濃万里子師範代 (なのはなドロシー教室)

『クララとお日さま』カズオ・イシグロ/ハヤカワ文庫

 

◆小林美穂師範代 (モウソウ縁子さん教室)
『古典落語 志ん生集』 古今亭志ん生/ちくま文庫



◆村上直也師範代 (生成りなのに教室)
『新装版俳優のノート』 山﨑 努/文春文庫



◆上原正行師範代 (中ゴシABC教室 )
『雪のひとひら』ポール ギャリコ/新潮文庫


◆登田信枝師範代 (半解マイカ教室)
『お嬢さん放浪記』 犬養道子/角川文庫

 

◆長谷川絵里香師範代 (センス歩く教室)
『江戸とアバター』 池上英子・田中優子/朝日新書

 

◆関博一師範代 (サルサしかかり教室)

『生命とリズム』 三木 成夫/河出文庫

 

◆梁島綾乃師範代 (やぶこぎ博物教室)
『猫の客』 平出 隆/河出文庫


◆竹内哲也師範代 (アゴーン・ブラザーズ教室)
『能の読みかた』 林 望/角川ソフィア文庫

 

◆儀三武桐子師範代 (お伽まばたき教室)
『灯台へ』 ヴァージニア・ウルフ/新潮文庫

 

◆北川周哉師範代 (ちぐはぐ夕顔教室)
『ロウソクの科学』 ファラデー/角川文庫


 

◆松林昌平師範代(遊狂RNA教室)

『友情〜平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」』山中 伸弥・平尾 誠二・惠子/講談社文庫

 

◆小湊倫子師範代 (チリモンどんたく教室)

『子どもの図書館』 石井 桃子/岩波現代文庫

  • 安田晶子

    編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025