発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

2025年3月20日、ISIS co-missionミーティングが開催された。ISIS co-mission(2024年4月設立)はイシス編集学校のアドバイザリーボードであり、メンバーは田中優子学長(法政大学名誉教授、江戸文化研究者)はじめ、井上麻矢氏(劇団こまつ座代表、エッセイスト)、今福龍太氏(文化人類学者、批評家)、宇川直宏氏(現”在”美術家、DOMMUNE主宰)、大澤真幸氏(社会学者)、鈴木健氏(スマートニュース株式会社 共同創業者 取締役会長)、武邑光裕氏(メディア美学者)、津田一郎氏(数理科学者)、鈴木康代氏(イシス編集学校 学匠)の総勢9名。このたび、2シーズン目を迎えるにあたり抱負を語った各メンバーのメッセージに焦点を当て、ミーティングのハイライトシーンをPOSTする!!!!
「型」と「型破り」と「型なし」
「ワールドモデル」の「モデル」という言葉が非常に重要だと思っています。日本語で言えば「模型」、つまり何かを模倣した形のことです。私自身、子どもの頃にプラモデルに夢中になっていた時期がありましたが、模型というのは何かを模して作られた形ですよね。
そして、この模倣された「型」に対して「型破り」という概念が生まれます。つまり型を破るには、まずその「型」=模型が何であるかを特定しなければならない。しかし、「模型」が曖昧なまま、「世界」という非常に抽象的な枠組みの中で「型破り」をしようとすると、その「型」自体が不明確となり、いわば「型なし」になってしまう。
テクノロジーの発展による「速度の増加」が急速に進んだ
私は「ワールドモデル」を考える上で、「ルール」「ロール」「ツール」の“ルル3条”を軸にして考えたいと思っています。
まずはルールについて。これは慣習や常識、共通感覚といった、日常を支配しているものでもあります。いつもこれらを見直す必要があると思います。なぜなら、時間の経過とともに常識や慣習、共通感覚といったものは変化するからです。中世と現代とでは、それらはまったく異なっている。
特に2000年以降、テクノロジーの発展による「速度の増加」が急速に進んだことで、常識や慣習、共通感覚も大きく変化しています。この変化は、身体構造の変化やアルゴリズムの進化など、さまざまな要素に起因しています。こうした支配的な常識は、ポジティブな側面もありますが、同時にそこから脱却する自由が求められる時代にもなっていると感じます。
私たちは今、常識に対して異議を唱えづらい社会に生きています。しかし、その常識の中身は、しばしば大きな社会的・政治的な意味を持ち、しかもメディアやアルゴリズムによって大きく操作されることがある。つまり、常識というものが、政治や社会規範と密接に結びつく時代に、私たちはすでに足を踏み入れているのです。この状況を再認識することこそ、「ワールドモデル」を見つめ直す第一歩になるのではないかと思います。
「遅延」や「減速」が常識に対する対抗策になる
次に「テクノロジーが牽引する速度」についても考えてみたいと思います。例えばジョギングをする時、人は一定の距離を走ることで疲労を感じたり、足にマメができたりします。そうした身体的な反応を通じて、自分の年齢や体重、生命時間を意識する。しかし、速度を機械に委ねてしまうと、この「速度」の感覚は根本から変わります。人間の身体はプロセスの外側に置かれ、純粋なスピードのエクスタシーにアクセスするために、機械を必要とするようになる。そうした速度環境が、20世紀後半から現在にかけて、私たちのワールドモデルを大きく変えてきたのだと思います。
このような速度の加速に対して、逆に「遅延」や「減速」というアプローチも必要ではないか。AIの開発においても、最近では「減速論」が現れつつあります。つまり、テクノロジーの速度を抑えることが、常識や慣習、共通感覚を再構築するための一つの手段になるかもしれません。アルゴリズムや、速度を調整するためのテクノロジーなど、多様なツールも考えられます。以上、お話したことのどれか一つは、現在の常識に対する対抗策として考えられるんじゃないかなというふうに思います。
武邑光裕さんのメッセージをイシスチャンネルで公開しています。あわせてご覧ください。
ISIS co-missionハイライト
「遅延」が常識に対する対抗策になる 武邑光裕さん
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
佐藤優さんから緊急出題!!! 7/6公開◆イシス編集学校[守]特別講義「佐藤優の編集宣言」
佐藤優さんから緊急出題!!! 「佐藤優の編集宣言」参加者のために佐藤優さんから事前お題が出題されました(回答は必須ではありません)。回答フォームはこちらです→https://forms.gle/arp7R4psgbD […]
多読スペシャル第6弾「杉浦康平を読む」が締切直前です! 編集学校で「杉浦康平を読む」。こんな機会、めったにありません! 迷われている方はぜひお早めに。 ※花伝寄合と離想郷では冊師四人のお薦めメッセージも配信 […]
「脱編集」という方法 宇川直宏”番神”【ISIS co-missionハイライト】
2025年3月20日、ISIS co-missionミーティングが開催された。ISIS co-mission(2024年4月設立)はイシス編集学校のアドバイザリーボードであり、メンバーは田中優子学長(法政大学名誉教授、江 […]
【続報】多読スペシャル第6弾「杉浦康平を読む」3つの”チラ見せ”
募集開始(2025/5/13)のご案内を出すやいなや、「待ってました!」とばかりにたくさんの応募が寄せられた。と同時に、「どんなプログラムなのか」「もっと知りたい」というリクエストもぞくぞく届いている。 通常、<多読スペ […]
【6/20開催】鈴木寛、登壇!!! 東大生も学んだこれからの時代を読み通す方法【『情報の歴史21』を読む ISIS FESTA SP】
知の最前線で活躍するプロフェッショナルたちは、『情報の歴史21』をどう読んでいるのか?人類誕生から人工知能まで、人間観をゆさぶった認知革命の歴史を『情歴21』と共に駆け抜ける!ゲストは鈴木寛さんです! 「『 […]
コメント
1~3件/3件
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。