「松岡校長のブックウェア空間を感じて欲しい」鈴木康代[守]学匠メッセージ【89感門】

2025/09/20(土)15:00 img
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読書することは編集すること

 

「読書」については、なかなか続けられない、習慣化が難しい、集中できずにSNSなどの気軽な情報に流されてしまう――そうした声が少なくない。

 

確かに読書の対象である「本」について、松岡正剛校長自身も『多読術』の中で「世の中のすべてを呑み込んだメディア」と表現している。一見すると、読書は世界を受け止めるだけの覚悟や忍耐や努力を要する行為だと想像されがちである。

 

しかし松岡校長は、同書の中で読書について次のように述べているーー「まず言っておきたいことは、『読書はたいへんな行為だ』とか『崇高な営みだ』などと思いすぎないことです」と。つまり、松岡校長は、読書という行為について、普段の生活で服を着たり歯を磨くように、日々の生活の中にあたり前にある、カジュアルな行為として捉えていたのである。

 

鈴木康代[守]学匠は、第89回感門之盟「遊撃ブックフェア」でのメッセージの冒頭に、まず前述の『多読術』を引用した。その背景には、きっとイシス編集学校で学ぶ「編集」行為も、校長にとっての読書のように生活と共にあってほしい、という卒門生への思いが込められているのだろう。

 

回転扉のように熱量が加速した55[守]

 

今期55[守]は、卒門率が約90%に達するという、これまでにない熱量を帯びた稽古の期だった。その熱量の背景について、康代学匠はこう読む。「情報の海に流されたくない」「インプットとアウトプットを充実させたい」「松岡校長の本に惹かれた」といった、学衆それぞれの“多様な入門動機”に支えられていたのではないか、と。

 

さらに康代学匠は、松岡流読書術の「読書とは、読む・感じる・書くが混ざる交際であり、あたかも回転扉のように連鎖していく」という言葉を重ねながら、守の編集稽古を語った。教室で繰り返される「お題→回答→指南」というやり取りは、まさに編集稽古における交際そのもの。そこに学衆の多様な入門動機が交わり、回転扉のように編集の学びが加速していった。その稽古プロセスを通じて、学衆たちの編集への好奇心はさらに充実していったのだろうと。

 

「松岡校長は、『知識を編集するのではない。編集は知識である』と常々言っていた。そのことを体現しているのが、55[守]でした」

(鈴木康代学匠)

 

今期、[守]師範代ロールとつとめた田中優子学長。「イシスは場(講座)やロールが変わると景色が変わる。編集稽古のプロセスを通じて、学衆それぞれの世界が見えた」と多様な学衆と共に過ごした編集稽古の日々を振り返りつつ、「卒門されたみなさんも、色々なイシス講座で場所を変えてください。見える景色が変わり、自分自身が変わります」とエールを贈った。

 

「この場をブックウェアとして感じてほしい」

 

今回の感門之盟のテーマにもなっている「ブックウェア」。「ブックウェア」とは、「本」を活用して、場のハードウェア、知のソフトウェア、人のヒューマンウェアをつなぐことを目的とした「ブックセレクション」および「書籍空間プロデュース」の手法である。

 

感門之盟の会場である本楼も、まさに松岡校長のブックウェアが体現された場であり、多くの学衆が初めて訪れた空間である。メッセージの最後に、康代学匠は次のように締めくくった。

 

「松岡校長は、本楼の本棚がきちっとしていないと気持ち悪いと言っていた。それは、ここ本楼が松岡正剛の頭の中をアウトプットしたブックウェアそのものであるから。2階の学林堂を含めて、校長の空間編集を感じながら、今日の感門之盟を過ごしてください」

(康代学匠)

 

(写真:福井千裕)

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。