先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。
この秋、イシス編集学校の基本コース[守]の師範代として登板する西岡有美さん(56[守]ピノキオ界隈教室)。西岡さんは、[守][破][花]の講座を渡る中で、イシス編集学校で大切にしていることと自分が好きなことの共通点に気づき、行く先を見つめます。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス修了生による好評エッセイ「ISIS wave」。61回目の今回は、アイキャッチも新たに、西岡さんの決意をお送りします。
■■サカイメの「わたし」
イシス編集学校は、境目を大切にしている。
サカイメ、あいだ、門、膜、縁側…あちらとこちらを分けているようで、繋げているような場所。
思えば、わたしはサカイメが好きだった。
山と空の稜線、山の家から町に下る時の深い霧のあいだ、おばあちゃんちの縁側。角川武蔵野ミュージアムの鋭いフォルムが快晴の青空を切る鋭線も。
▲たくさんの「サカイメ」。海と空、空と鳥居、鳥居と海、海と砂浜、鳥居の向こうとこっち……。
サカイメは、私の人生のワカレメでもあった。
車に轢かれ、無機質なアスファルトの道上で、拳を握りしめ待った死かその先の人生かの狭間。全身の力をふり絞り、わが子をこの世に産み出した瞬間。ああ、就職試験の日に、あの電車に乗るか乗らないかも、編集学校で幾度か対面した「申し込み」ボタンを押すあの静かな一瞬一瞬も、境目だったのだ。
境目を越える時、それは私の人生の向こう側が動き出す時でもあった。
しかし、越えられない境目もある。
私たち、53[守]入門生は、松岡校長の生と死の境目にあった。初めての感門を翌月に控えた昨年の8月から、永遠に抜け出すことはできないブラックホールの穴のような境目で、未だ身動きが取れずにいる。いや、待て。この大きな穴は、ともすれば、鍵穴なのか。鍵はどこだ。
そして、あの8月から14か月後の今日、わたしは新たな境目にいる。師範代認定され、56[守]登板前の、さなぎ状態の師範代。編集学校のあちら側とこちら側が、わたしを引き合う。未知に向かうそこはかとない恐怖に足が震える。
今こそ、思い出そう。サカイメが私を虜にし、人生に彩りを添えてきたことを。未だ見ぬ、向こう側の何かに出会いたいという一心で、性懲りもなく、わたしは、また、この境目を、震える足で、越えていく。
文・写真/西岡有美(53[守]風土いきいき教室、53[破] 触発ボタニカル教室)
編集/チーム渦(大濱朋子)
★未だ見ぬ何かに出会いたいなら――秋開講の[守]基本コース、残席わずか
第56期[守]基本コース
【稽古期間】2025年10月27日(月)~2026年2月15日(日)
申し込み・詳細はこちら(https://es.isis.ne.jp/course/syu)から。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2025-10-20
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2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。