「ピキッ」という微かな音とともに蛹に一筋の亀裂が入り、虫の命の完結編が開幕する。
美味しい葉っぱをもりもり食べていた自分を置き去りにして天空に舞い上がり、自由自在に飛び回る蝶の“初心”って、いったい…。

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
小学生の二児の母であり、編集・ライターとして2社に勤務する前田真織さん。子供との日々のやり取りの中で、気づいたのはイシスで学んだ「自由」だった。
イシス受講生がその先の編集的日常を語る、新しいエッセイシリーズ、第9回目をお届けします。
■■コップの使い道は水を飲むだけじゃない
「学校イヤだ! 休む! ボク今日は家から出ない!」
小3の息子がひっくり返ってわめいている。平日朝の恒例だ。
「そっかぁ。なんでイヤかなぁ~?」
「あそこは勉強するだけ! ヒマ!」
う~ん、「勉強するだけ」かぁ。いつもは気に留めない言葉に、その日はふと引っかかる。
「勉強じゃないことも、するんじゃない?」
「…給食、食べる」
「うん。休み時間の鬼ごっことか。図書室で本も借りるでしょ」
「掃除」
「そうね。歌うとか、踊るとか、ラクガキとか?」
学校を「勉強する」場と限定してほしくない。捉え方次第で自由な場だとわかってほしい。学校の楽しい時間を探しながら、ふと既視感。
――前にこんなことやったなぁ、コップの使い道は水を飲むだけじゃなかったよねぇ……。
何とか子どもたちを送り出し、仕事モードに切り替える。月木は都心へ。水は郊外の別の会社へ。火金は在宅勤務。
2社に勤めるようになって3年が経った。もともと家庭/仕事の「二点分岐」で充実していたけれど、縁あって仕事をさらに分けることに。振り返ればその時から、家庭/仕事1/仕事2のいわば「三位一体」で日常のバランスをとってきた。
仕事はいずれも編集・ライター業だが、関わるコンテンツはさまざまだ。ビジネスパーソン向けのウェブ記事、中高年向けの雑誌広告、ブログ記事、ビジネス書の原稿…etc.。日々「モード」を変えていく。
小5の娘が弾くピアノソナタを聞きながら、あるいは息子の国語の教科書の音読を聞きながら「編集八段錦」が頭をよぎる。彼らの将来を思いつつ、「原郷からの旅立ち」の準備段階だとしみじみすることもある。自分の人生だって途上だけれど。
慌ただしい生活のあちこちでふと、編集の要素に気づく。そんな時、一緒に学んだ仲間を思い出して励まされる。
学ぶ前より後の方が、出会う前より後の方が、私は豊かになっている。
▲「原郷」の象徴のランドセル。前田さんの二人のお子さんは、いずれランドセルを置き、未知の世界へと旅立っていく。
文・写真提供/前田真織(45[守]アフロル・テクノ教室、46[破]多項セラフィータ教室)
編集/角山祥道、羽根田月香
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2025-10-07
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2025-10-02
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(市川春子『宝石の国』講談社)
2025-09-30
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