道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
川邊透
2025-11-25 16:01:07
56[守]蓮華ソーソー教室師範代のグッビニ由香理さんは、普段は英国で暮らすヨガ講師です。編集学校の奥に見え隠れする小さな花に誘われ歩み続けるうちに、あることに気づきました。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は、現役師範代のグッビニ由香理さんが注目するセンサーについてのお話です。
■■「師範代になるための5つの条件」に惹かれ
「師範代になるための5つの条件」。花伝所ガイダンスで聞いた時、全てに心惹かれた。松岡正剛校長がかつての[花伝所]の入伝式で語ったこの5つだ。
1.センサーをあける
2.日本語をつかう
3.得意も不得意もはらむ
4.フェチのフィルターをつくる
5.細部につよくなる
師範代になるつもりはなかったが、とっても気になった。自分には無理だろうと思いながらも[花伝所]に来てしまったのは、「本当の私」が、わたしの本心を観て知っていたからなのかなと、ふと思う。
センサーは「見えない世界」を見るための方法だ。見えないところにこそ真実がある。ヨガや瞑想で「Energy flow where attention goes/意識を向けたところにエナジーが流れる」と、師匠から教えられた。意識を向けた時、「見る」は「観察」になる。ヨガやジャーナリング(書く瞑想)で内観をすることも観察である。自分なりに習慣にしているささやかな自己対話であるが、これでわたしの心はとてもリラックスする。
[守][破]を通じて、なんでもお見通しだった師範代の目はたしかにセンサーだと思った。この「観察」の目がとても大事だと[花伝所]で再認識できたことは、自分に変化をもたらしたと思う。見たいものを見る時、「意識を向ける」こと。そうすればそこにあったものに新たな彩りが現れるからだ。
▲内観をテーマにしたジャーナリングのノート
5つの条件をクリアするのは「自分」だっだ。
「自分とはこんなもの」と思う「自分」とは、いったいどれくらい本当なのだろう? [花伝所]ではワークを通して今まで気づかなかった自分と向き合うことになった。
さまざまな「自分」を30個以上列挙する《たくさんの「わたし」》という編集稽古がある。[守]のあとに再びやってみると、全然違う「自分」が出てきて不思議に思ったことがある。今ならわかる。思考する《地》が変わったのだ。
今いる英国で、外国人として暮らしていると、自分を不足の多い人だと思うことがよくあった。「イギリスを地にした私」と「日本を地にした私」。場所によって、奥ゆかしかったり、大胆だったりと変容する。まるで1枚のコインの裏表のようだ。
海外の人の多くは、日本の「癒し」や「調和の精神」に憧れをもち、それに触れたくて日本を訪れる。三段論法的に言えば、私にもそんな美点があるということだ。日本を離れて「見る」ことは、自分を「知る」ことでもあった。彼らにはないものが自分には「ある」という見方と自負が生まれた。
モノや出来事が情報の多面体であるように、不足も創(きず)も美しさも含んだ「わたし」も、かなりの情報多面体だった。それぞれの情報体が、互いに関係線を引きながら常に相転移しているのだと、[守][破]、そして[花伝所]を経て、日本語という言葉を介して実感するようになった。自分の不足こそ生かせるもの。
自分が置き去りにしていたものに光を当てると、それは悦んで動き出す。そんな不思議なエナジーが心に湧いてくるようになった。
まだまだ成長したい。
56[守]師範代として、そう思う。
わたしにはわずかだけれど実感がある。センサーをあけて、観察(意識)の目を向ければ、そこにある小さな花は鮮やかさを増していく。「意識する」とは温かな光線を作ることだ。小さな花を鮮やかにしていく光だ。目を開いて、置き去りにした「わたし」のひとつひとつも掬っていく。豊かなエナジーの彩を重ね、これからもずっと、あちこちに咲く花を感じていきたい。
▲イギリスの秋晴れ。ウィンザー城近くの赤ポスト。頭上には偶然のヤドリギ。
文・写真/グッビニ由香理(53[守]なんでも軽トラ教室、53[破]アガサ・フィーカ教室)
編集/チーム渦(大濱朋子、角山祥道)
コメント
1~1件/1件
2025-11-25 16:01:07
2025-11-25 16:01:07
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
ミメロギア思考で立ち上がる世界たち――外山雄太のISIS wave #69
イシス編集学校の[守][破][離]の講座で学び、編集道の奥へ奥へと進む外山雄太さんは、松岡正剛校長の語る「世界たち」の魅力に取り憑かれたと言います。その実践が、日本各地の祭りを巡る旅でした。 イシスの学びは […]
【書評】『熊になったわたし』×3×REVIEWS:熊はなぜ襲うのか
熊出没のニュースに揺れた2025年、年末恒例の“今年の漢字”もなんと、熊。そこで年内最後に取り上げるのは、仏のベストセラー・ノンフィクション『熊になったわたし――人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる』です。推薦者はチー […]
ロジカルシンキングの外へ――竹廣克のISIS wave #68
曖昧さ、矛盾、くねくね、非効率……。どれもこれも、ビジネスシーンでは否定されがちです。それよりもロジカルに一直線。社会の最前線で闘ってきた竹廣克さんならなおさらのことです。 ところが、イシス編集学校の[守][破]で学んで […]
地域も祭りも「地と図」で編集――大倉秀千代のISIS wave #67
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 地域の中でリーダーとして長らく活躍してきた大倉秀千代さんは、一方で「このままのやり方を続けていていいのか」とモヤモヤし […]
稽古で培われた書き切る力【出版記念インタビュー】石川英昭『幸せな老衰』
記念すべきISIS wave第1回の書き手・医師の石川英昭さんが、再びの快挙です。『幸せな老衰 医師が伝える 叶えるための「3つの力」』(光文社新書)を上梓したのです。 石川さんの「執筆の秘密」を探るべく、チーム渦の大濱 […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-31
鳥は美味しいリンゴを知っている。リンゴに鳥が突っついた穴がある。よってこのリンゴは美味しい。
──「これは美味しいから」といただいた農家さんからのオマケ。切れば甘味成分ソルビトールが沁みていた。覗いてみたくなる世界は尽きない。
2025-12-30
ほんとうは二つにしか分かれていない体が三つに分かれているように見え、ほんとうは四対もある脚が三対しかないように見えるアリグモ。北斎に相似して、虫たちのモドキカタは唯一無二のオリジナリティに溢れている。
2025-12-25
外国語から日本語への「翻訳」もあれば、小説からマンガへの「翻案」もある。翻案とはこうやるのだ!というお手本のような作品が川勝徳重『瘦我慢の説』。
藤枝静男のマイナー小説を見事にマンガ化。オードリー・ヘプバーンみたいなヒロインがいい。