イスラエルで起こっていることから目をそらすな、ガザの惨劇に目を向けよ、…と言いたいのは山々なのだが、そう、ことは簡単にはいかない。SNS時代の自意識というのか、冷笑系のセルフつっこみとの戦いが待っている。令和の社会派は、なかなか大変なのだ。
夕暮宇宙船『未題』は、pixivサイトでも無料で読めるが、書籍版(『小さき者たちへ』)もアリ。売り上げはパレスチナ支援に充てるとのこと。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
新年初めての武術、音曲などの稽古を始めることを「稽古始(けいこはじめ)」「初稽古」といい、新年の季語にもなっています。
イシス編集学校修了生によるエッセイ「ISIS wave」。記念すべき70回目、2026年最初の回は、現在、[離]で奮闘中の佐藤賢さん(55[守]抜力一の糸教室師範代)による、初稽古ならぬ稽古づくしエッセイです。
いざ、編集稽古×合気道×唄&三味線の世界へ。
私の通う合気道道場(万生館道場)では「呼吸力」を重視する。一般的に合気道は力を抜くことを大切にするが、呼吸力はその先の「任せる」まで含むものである。お任せしてしまえば相手と自分は一体となり、動かそうとしなくても相手は自分の思うままになる。例えば腕を強く握られても、相手に腕を任せてしまえば、相手は自分から離れられず、自分の腕を動かした先へ相手も動いてしまう。
「戦う心無からしむ、否、敵そのものをなくする…」
毎回稽古前に唱和する「合気道の精神」の一節であり、その実践として呼吸力はある。
[花伝所]で学んだ指南の型に「受容」がある。学衆の思考プロセスをリバース・エンジニアリングする=《問・感・応・答・返》の「問」と「答」の間に分け入るもので、「学衆の中に入り込む感覚」に近い。そのためには「私」は柔らかくなければならない。
「受容」を意識し始めてから、私のコミュニケーションは変わった。仕事でも文章は柔らかくなった。相手の中に入り文章を書くことを、以前より自然とできるようになったからだと思う。
「呼吸力」と「受容」はどこか、似ている。両者は「自分を柔らかくする」という一点で重なっている。編集にも呼吸力は大事なのだろう。
▲合気道の道場にて
千夜千冊「葉隠」で紹介されている西松布咏さんに唄と三味線を習っている。遊女の忍ぶ恋を唄った「忍ぶ恋路」を昨秋、演奏会にて歌うことになった。なかなか遊女に感情移入できず、師匠に相談したところ「歌いこんでいけば自然と唄の世界観に入っていけるので、無心で歌えばよい」と教わった。その通り歌い込んでいると、ある日涙が出てきて止まらなくなった。それは遊女の「入ってきた」感覚だった。
遊女の気持ちをどうにか理解しよう、という作為をなくし、唄に自分自身をお任せしたことで、遊女の方から入ってきてくれたのかもしれない。無心とはお任せすることなのだろう。
▲去年の演奏会で歌う佐藤さん。右は、西松布咏さん
松岡正剛校長は、最初で最後の自伝『世界のほうがおもしろすぎた』(晶文社)でこのように書いている。
「…その熱中が起こるには、強すぎる自己をあまりに固形化していてはならない。むしろ「私」をフラジャイルな状態にしておいておくこと、それがさまざまな延長の自由を可能にする」
千夜千冊「いのちとかたち」に「稜威」の意味として「別種の生を得ること」とある。何かが入ってくること、とも言えるだろうか。編集は私を柔らかくする道程であった。
▲佐藤さんが毎日、200回振っている木刀
編集/チーム渦(角山祥道、柳瀬浩之)
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2026-01-08
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2026-01-06
背中に異形のマレビトを背負い、夜な夜なミツバチの巣箱に襲来しては、せっかく集めた蜜を略奪するクロメンガタスズメ。羊たちが静まり返る暗闇の片隅で、たくさんの祭りのニューロンがちかちかと放電し続けている。
2025-12-31
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──「これは美味しいから」といただいた農家さんからのオマケ。切れば甘味成分ソルビトールが沁みていた。覗いてみたくなる世界は尽きない。