鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。
新しいことをするのに躊躇していたという増田早苗さんの日常に、突如現れたのが編集稽古でした。たまたま友人に勧められて飛び込んだ[守]で、忘れかけていたことを思い出します。イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。イシス修了生による好評エッセイ「ISIS wave」、今回は増田さんの「変化」をお届けします。
お題が飛んで来た何回目だっただろうか?三日に一度の新しいお題が楽しみになっていた。70歳近くなって色々とやることを少しずつ減らしてきた。無理の無い時間配分で一日を過ごすようになり、新しいことをするのに躊躇する気持ちのが増えてき。でも、お題一つひとつに取り組んでいくと、私の中から新しい何かが湧いてくる気がした。とはいえ、何かを覚えるわけでもなく、判定されて成績が付くわけでもない。いただく指南は前向きな提案に思えた。私って自分が思っているより貪欲? 意欲萎えてない?
私は今は仕事はしていない。ボランティアという形で自分を生かす場をいただいている。結構忙しい役を担い、かなりの時間を費やす日々だ。穏やかな仲間に囲まれて、恵まれた環境にいるのだと思う。主人の方も、退職してから好きな家庭菜園、ゴルフ、バンド仲間との集まり等趣味を楽しんでいる。「年をとればこんなものかな?」の日常だったが、「いややっぱり何か新しいことをしてみたい!」のわずかな好奇心の芽が顔を出したのだ。何故なら、ここ何年もやりたいと思ったことをしていなかったし、する前に諦めてしまうことが多かったことに気づいたのだ。
そういえば、若いころから新しい世界へ飛び込んでいくのが好きだったかも知れないとの思いが頭をかすめた。いつも心のどこかで自分が成長したい、ゴールは分からないけれどもっと何かがあるはずだという思いは持ち続けている。
[守]のお稽古は埋もれていた私の「成長したい」という気持ちの真ん中にストレートに入ってきた。師範代、学衆の皆さんから湧いてくる言葉は新鮮で私の固定観念を良い意味で壊すものだった。それは遊びという編集を通して田中学長のいわれる「ほんとうの知性」に気づかせてくれるきっかけになった。少しではあるが若いときから法華経を学ぶ機会をいただき、仏教の教えに感動し心の平和、調和を意識しながら出逢いを大切に生きてきた部分をさらに深めるものであったと思う。そこに存在するもの、事柄には色はない。良きものにするのも悪しきものにするもの、自分のものの見方次第なのではないか。耳にたこが出来るほど聞かされてきたことなのに、はたして本当に分かっているのか? いたのか?
松岡正剛校長の本質は「変化」だという言葉を知ると、法華経の諸行無常の真理に通じるものを感じた。「変わる」ということを感じること、知ること、思えることが編集的に「わかる」ということ。私の「成長したい」願いは、常に変化を取り込みたい願いであり、そのトレーニングを守でさせてもらえたのだと思う今日この頃である。
▲最近、初孫誕生という大きな変化が増田さんの日常に訪れた。
文・写真/増田早苗(55[守]山派レオモード教室)
編集/チーム渦(田中志穂、角山祥道、大濱朋子)
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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