免疫学者の多田富雄さんは、能と免疫学という、異質が行き来する世界を扱うものに向きあわれた。脳梗塞で倒れ、病床で意識を取り戻された時、能の謡曲の「隅田川」や「哥占(うたうら)」をそらんじたという。
科学ジャーナリストの石弘之さん(AIDAゲスト)は、5歳の時から植物学者の牧野富太郎の自宅に出入りした。大学で植物学をやる予定が、マクロな環境や文明と、ミクロな野鳥や鉄条網や砂の変化のあいだをつぶさに観察する記者、探究者になられた。新刊は『噴火と寒冷化の災害史』(角川新書)だ。
松岡校長は、セミの幼虫を羽化させたり、中学科学部でホコリの培養をしてみたりと、リケオ(理科少年)だった。ところが、知らないことに疑問を持って体験することと、理路整然と教えられることのギャップで、高校では生物以外面白くなくなってしまった。この隙間を埋めたのが本だった。やがて、科学者の見方のサイエンスを可視光にする、高木貞治や南部陽一郎や牧野富太郎のエッセイ・論文集『日本の科学精神』全5巻を編集された。
理化学研究所創立100周年を機にスタートした「科学道100冊」プロジェクトが、6年目を迎える。
旬のトピックなど三つの軸で選んだ「テーマ本」50冊と、時代を経ても古びない良書として選んだ「科学道クラシックス」50冊の合計100冊で構成した「科学道100冊 2022」を11月後半に発表する予定だ。
選書だけではなく、ブックレットや展示ツールも制作し、これまで500箇所をこえる全国の学校、図書館、書店に「科学道100冊」の特設棚を編集してもらう仕組みも構築してきた。ジュニア版は親子でも楽しめる。
まもなく、フェアや展示を開催したい団体さま向けに、先行予約をスタートする。本という情報パッケージが記憶し届けつづけている、科学者の生き方や考え方、科学の見方を、「科学道100冊」をきっかけに共読していただきたい。
[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]
//つづく//
橋本英人
函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。
かつて校長は、「”始末”とは、終わりのことですが、エンディングとビギニングは一緒だということ。歌舞伎役者が最後に舞いたい踊りは、自分を目覚めさせる踊りかもしれないわけで、終わりのメッセージとは、何か始まりを感じさせるもの […]
「日本流(経営)の本質は、異質なものを編集する力だったはずだ。ーーー異質なデータを価値ある情報に編集する知恵がこれからの勝負となる。それをセマンティックプラットフォーマーと呼んでいる。」 一橋大学ビジネスス […]
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