千悩千冊0011夜★「5年前の公開処刑の傷が癒えず悩んでいます」40代女性より

2021/02/04(木)10:48
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しかたなかさん(40代女性)のご相談:
5年ほど前に某サークル内で散々受けた公開処刑の傷が癒えません。処刑をした本人とは今は絶縁になり文句すら言えません。見返してやることもできず、忘れることもできません。どうしたら心が楽になるでしょうか。

 

サッショー・ミヤコがお応えします

「公開処刑」とは穏やかならぬ表現。いわゆるパワハラ・モラハラ的なものと思いますが、たくさんの人の前で恥をかかされるのはまったくハラワタ煮え繰り返るものですね。でも、最も耐えがたいのは、目の前の無関係な有象無象が機に乗じて石つぶてを投げてくることです。しかたなかさんのケースでは、「本人」とあるので、きっと首謀者もいまだに忘れることのできない相手も一人だけだったのでしょう。そのことだけでも、ちょっと浮かばれておきましょう。

「忘れる技術」と「鈍感力」が年々アップしているサッショーに、ここはお任せを。松岡校長直伝の編集術を大々的に使いましょう。「地」を変えると、そこに乗っている「図」の見え方も変わるという方法は、トラウマを解消して前を向いて生きるのに、これ以上なく有効です。

 

千悩千冊0011夜
ウィリアム・ソウルゼンバーグ
『捕食者なき世界』文春文庫

 

 

自然界=生存競争の場だとはよく言われますが、そもそも捕食という行為がなければ、地球に生まれた「生命」という奇跡は、海に溶け込んだ微生物の段階にとどまっていたでしょう。「食うか食われるか」が始まったことにより、生物の爆発的進化が始まりました。カンブリア爆発以来、生物は捕食に有利なよう、いわば「軍拡競争」を繰り広げてきました。貝殻、爪、歯、牙、顎、スピード、知恵、力。しかし『狼王ロボ』の時代をほぼ最後に、大型捕食者の命運は尽きます。必ずしも食べるためだけではなく動物を攻撃する人間たちの攻撃が始まったためです。

この本はあくまでも現在、動物界の頂点に君臨しているように見える人類が、この世界のシステムを保全するために何ができるかを探ったものですが、しかたなかさんのようなつらい体験に別の名前をプレゼントするのに役立てば、とおもいます。

 

   致命傷以外はかすり傷。明日のために生かしたい。

 

◉井ノ上シーザー DUST EYE

「見返す」よりも「気を楽にする」方向に向かったほうがよいでしょう。北国の猛烈な地吹雪の中を駆け抜けて、温かい鍋などを食すると、一時的にせよ気が楽になります。

 

 

没頭し続けられる何かを見つけてはいかがでしょうか。

 

 

 

「千悩千冊」では、みなさまのご相談を受け付け中です。「性別、年代、ご職業、ペンネーム」を添えて、以下のリンクまでお寄せください。

 

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025