宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

いったい誰が気づいたか。この男が、感門之盟の途中でお色直しをしていたことを。
司会の2人が、感門テーマの「遊撃ブックウェア」にちなんで、本を纏ったことは当日、明かされたが、青井隼人師範には「つづき」があった。イシスの本をめぐる活動を紹介する「ISIS now 遊撃ブックウェア」のコーナーで、「前日に購入した」というグレーの新品Yシャツから、グレーのTシャツへと着がえていたのである。
なぜ?
感門之盟が終わった後、本人に直撃すると、青井師範は、待ってましたとばかりに一冊の本を指し示した。今度は、『世界のほうがおもしろすぎた』を纏ったというのだ。みなさんは、青井師範の意図がおわかりだろうか。
「このTシャツを見つけたとき、“これだ!”と思ったんです」
これだ?
近づいてみる。
「見てください。これ、あのサイなんです。晶文社のマークのサイなんですよ!」
ん? なぜ、晶文社のサイ?
「あのサイですよ? 『世界のほうがおもしろすぎた』の、あの晶文社ですよ?」
初師範、初司会にもかかわらず、場慣れした淀みのない進行に、落ち着いた表情。私たちはこの見た目や振る舞いに騙されていたのかもしれない。
青井師範、あなたのほうがおもしろすぎた。
アイキャッチ写真/阿久津健
文中写真・文/角山祥道
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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コメント
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2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。