宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

ここはやっぱり自分の原点のひとつだな。
2024年の秋、イシス編集学校25周年の感門之盟を言祝ぐ「番期同門祭」で司会を務めた久野美奈子は、改めて、そのことを反芻していた。編集の仲間たちとの再会が、編集学校が自分の核であることを思い出させたのだ。久野は、西へ向かう帰りの新幹線の中、いてもたってもいられず、スマホから54[守]に申し込んでいた。2002年6[守]・ちょっとバロッコ教室、2003年岐阜県ローカルのオリベ編集学校・提燈爛漫教室で師範代登板し、22年ぶりだった。
54[守]は、入門した頃(2[守])と比べると、お題も変わっていた。エディットカフェを使うスタイルも新鮮だった。だが編集稽古の面白さは変わらなかった。卒門後はその勢いで54[破]に進破。突破した久野に、[破]の原田学匠から師範代オファーが舞いこむ。驚いた。
ちょうど友人とこんな話をしていた。
「うちらくらいの年齢になると、今までの自分のキャパでできるとわかっていることだけやっててもダメだよね」
自らの言葉が反転して戻ってくる。オファーから1時間後、久野は「引き受けます」と返事をしていた。
不安はあった。仕事との兼ね合いもあった。
だが、イシスという場では、たとえ今、不足を抱えていたとしても、その先に向かうカマエさえ持っていれば、決して一人ぼっちで放っておかれることはない。その確信が久野の背を押した。
最後に、教室でやりたいことは何かと問うと、ひと言だけ返ってきた。
「しっかりどっぷり浸かりたい」
感門之盟・出生魚教室名発表では、進行の一倉師範と紀平師範から「イシスの新しいネオバロックへ向かってほしい」と託された。オリベゆうゆう教室の久野美奈子師範代の55[破]が、始まる。
アイキャッチ/角山祥道(44[花]錬破師範)
文/高田智英子(43[花]錬成師範)
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
「物語を書きたくて入ったんじゃない……」 52[破]の物語編集術では、霧の中でもがきつづけた彼女。だが、困難な時ほど、めっぽう強い。不足を編集エンジンにできるからだ。彼女の名前は、55[守]カエル・スイッチ教室師範代、 […]
司会2人は本を纏った。 青井隼人師範と石黒好美番匠率いる第89回感門之盟が2025年9月20日、豪徳寺本楼でスタートした。 感門之盟のテーマは「遊撃ブックウエア」。EDITOR SHIP エディターシップを取り上げ、 […]
五色の衣から二十の世界に着替え、56[守]へ走りだした。 今期の花伝所は勢いがあった。第88回感門之盟・放伝式冒頭で所長・田中晶子に「なつく」と評されたように、放伝生たちは、師範から技を盗もうと、何度も応答を繰り返し、ど […]
機があれば、欲張りに貪欲に、くらいつく。 第88回感門之盟に参加できなかった43[花]錬成師範・新垣香子は、インターブッキングに参加することで、残念を果たしたはずだった。しかし、参加したいという念は、それだけでは消化でき […]
その男は、うどんを配り歩いていた。その男とは、香川県在住の54[破]讃岐兄弟社教室・竹内哲也師範代である。彼は学衆の頃からイシスのイベントで会う人にうどんを渡し、P1グランプリではお遍路を題材にする、香川を愛する男である […]
コメント
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2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。