動くたびにバルーン袖が揺れる。NTTデータ研修の講師は、桂大介師範だ。キュートなモードと起業家の肩書は、受講生の既成概念を冒頭から揺さぶる。
千夜千冊第1604夜『勝手に選別される世界』がスクリーンに映る。「今の社会では、検索数や評判数が価値そのものかのように勘違いされていますよね。実のある意味の束や価値をビッグデータからいかに発見するか、それが本日のテーマです」
コップのお題で広がる多様な見方が、受講生の別様の思考回路を開く。新たな価値を引きだす型のワークを経て、講義は情報の構造化へ向かう。ここで桂師範は、非定型なデータから意味を発見する型を紹介する。誰の心にも備わった物語回路だ。
ヒット商品の実例を読み解き、人間の欲望やその解決の鍵を握る物語母型を浮き彫りにする。私たちの思考法や価値観を支える物語の普遍性と共感力をユーザー体験と重ねる。新しい価値をデザインする情報の見方と仮説の両輪が揃い、一日研修は終わった。
部屋を出ていく社員が桂師範に語った。「編集学校で型を学んで、仕事に生かしたいと思います。ミーティングをやっても堂々巡りのことが多いんです」。
丸洋子
編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。
公園の池に浮かぶ蓮の蕾の先端が薄紅色に染まり、ふっくらと丸みを帯びている。その姿は咲く日へ向けて、何かを一心に祈っているようにも見える。 先日、大和や河内や近江から集めた蓮の糸で編まれたという曼陀羅を「法然と極楽浄土展」 […]
千夜千冊『グノーシス 異端と近代』(1846夜)には「欠けた世界を、別様に仕立てる方法の謎」という心惹かれる帯がついている。中を開くと、グノーシスを簡潔に言い表す次の一文が現われる。 グノーシスとは「原理的 […]
木漏れ日の揺らめく中を静かに踊る人影がある。虚空へと手を伸ばすその人は、目に見えない何かに促されているようにも見える。踊り終わると、公園のベンチに座る一人の男とふと目が合い、かすかに頷きあう。踊っていた人の姿は、その男に […]
デーモンとゴーストの長年にわたる秘密の対話が、ずっしりと持ち重りのする新書となって、名残の月の美しい季節に書店へと舞い降りた。数理科学者の津田一郎氏と編集工学研究所の松岡正剛が、それぞれの専門性の際をインタースコアした対 […]
名月や池をめぐりて夜もすがら 『月の裏側』という美しい本がある。著者のクロード・レヴィ=ストロースは幼い頃、父親にもらった歌川広重の版画にすっかり心を奪われ、遠い東の国に恋をしたという。何度めかの日本訪問の […]