宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

本楼に輪読座衆は1名?
10月27日(日)13時からスタートする輪読座が存続の危機にさらされている。
これまで、空海、万葉集、日本書紀・古事記、唯識に華厳、折口信夫、井筒俊彦、西田幾多郎、そして南方熊楠とつづいてきた輪読座 日本哲学シリーズ。
今回は、日本陽明学の祖と呼ばれる熊沢蕃山の『三輪物語』『大学或問』を取り上げる。しかし、蕃山の知名度の低さからか、輪読座の募集人数が定員を大きく割り込みそうだというのだ。
輪読師といえば、バジラ高橋こと高橋秀元。松岡正剛とともに『遊』創刊時のメンバーであり、数々の編集プロジェクトを実現し、松岡をして「学者10人分」と言わしめる博覧強記の編集者だ。
松岡の暗示的かつアナロジカルでマジカルなレクチャーに対して、バジラの図象力、明示的な方法解読は対照的かつ他に類を見ないと言われている。2017年年末に高橋の病気入院のあと、輪読座は長期休講、その後、2018年夏から『弁顕密二教論』のネット配信である「甦る輪読座」で復活を遂げた。
しかし、長期休講の影響は大きく、イシス編集学校のなかでも、もう一人の「知の巨人」バジラ高橋の存在を知るひとは少なくなってきた。その余波が今回の輪読座募集にボディーブローのように利いてきた格好だ。
「高橋さんの図解力や方法的読解力には、一度は触れておいたほうがいい。いかに「読み」を方法と結びつけたり、現代の問題と照合できるかという(高橋さんの)鮮やかな手際を知らないと損だ」と学林局 林頭の吉村は語る。
27日からスタートする輪読座では、岡山、奈良、茨城の古河にルーツをもつ熊沢蕃山を取り上げる。蕃山の日本陽明学はどのように復活し、幕末維新にどのような影響を与えたのか。蕃山の思索はいかに現代の我々にも息づいているのか。「教育勅語以降、忘れられた「日本の本来の行動の美意識」を再確認できる機会になる」と輪読師のバジラ高橋は語っている。
さて、今週末に開講される輪読座が今後も存続できるか。開講までに輪読座衆は揃うのかが注目される。
◎輪読座詳細はこちら https://es.isis.ne.jp/course/rindokuza
◎バジラ高橋からの熊沢蕃山 概要PDFはこちら https://es.isis.ne.jp/rdz/rdz-text_08-kumazawabanzan.pdf
”輪読座 日本哲学シリーズ第八弾「熊沢蕃山『三輪物語』を読む」” が開講。皆様のご参加をお待ちしております。
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
【オツ千ライブ!】9/9 20時より 1854夜 佐藤優『国家論』配信
千夜千冊絶筆篇 1854夜 佐藤優『国家論』をオツ千ライブでおっかけ! 千夜坊主の吉村堅樹と千冊小僧の穂積晴明による「おっかけ千夜千冊ファンクラブ」こと、オツ千!。1854夜 佐藤優『国家論』、オツ千LIVEを9/9 […]
【知の編集工学義疏】第3章 <情報社会と編集技術>のキーワード
今こそ、松岡正剛を反復し、再生する。 それは松岡正剛を再編集することにほかならない。これまでの著作に、新たな補助線を引き、独自の仮説を立てる。 名づけて『知の編集工学義疏』。義とは意見を述べること、疏とは注釈をつけ […]
【知の編集工学義疏】第2章 <脳という編集装置>を加速させる
松岡正剛が旅立って一年。 今こそ、松岡正剛を反復し、再生する。 それは松岡正剛を再編集することにほかならない。これまでの著作に、新たな補助線を引き、独自の仮説を立てる。 名づけて『知の編集工学義疏』。義とは意見を […]
千夜千冊エディション『少年の憂鬱』に松岡正剛の編集の本来を読み解くべし。花伝所の放伝生が取り組んだ図解を使って、20分の予定時間を大幅にオーバーして、永遠の少年二人がインタラクティブに、そして「生」でオツ千します。 発熱をおしてやってきた小僧・穂積は大丈夫か? 坊主・吉村の脱線少年エピソードは放送可能か? エディション『少年の憂鬱』をお手元に置いてご鑑賞ください。
【知の編集工学義疏】第1章 <編集の入口>をダイジェストする
松岡正剛を反復し、再生する。聖徳太子の「三経義疏」に肖り、第一弾は編集工学のベーステキストでもある『知の編集工学』を義疏する。連載の一回目は、第一部である「編集の入口」をテーマに「第一章 ゲームの愉しみ」を読み解き、「編集」のいろはを伝える。2022年講義のダイジェスト映像とともにご覧ください。
コメント
1~3件/3件
2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。