自分で自分にバトンを渡して編んでいく【49破AT賞物語編集術】

2023/01/13(金)13:51
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アリスとテレス賞物語

 選手の足がとまりかけると、車の窓から監督の激励が飛ぶ。するとフラフラの選手の脚の回転数が上がる。日曜に締切を控える49〔破〕物語編集術アリスとテレス賞へ向けての激走は、箱根駅伝にたとえれば復路の最終区だろうか。

 

●唐傘ダムダム教室
「あまり時間がないですが、一行でも一文字でも磨いていけたらと思います。(Yさん)」
「全部書いてからと思いましたが、思ったことを色々と書いていきます。少しずつでも先に進みましょう。(大塚師範代)」

 

●臨刊アフロール教室
「とりあえず勢いで最後まで書いてみました。(Sさん)」
「ここまで書けた! ということで大いに気分をよくしてください。そして稽古なので、ここから推敲して磨いていきましょう。(西村師範代)」

 

●ヤマネコでいく教室

「書き上がったら、ぜひ、声に出して読んでみてくださいね。キュッキュと磨いて行きましょう。(安田師範代)」
「表現を調整し、主人公のゆりに対する言葉をいろいろ試しています。難所です。(Uさん)」

 

 頑張る学衆のできるだけ近くで応えたい。だから途中の指南でも並走する。できたことを讃え、もっと行こうとゴールを指す。最高のフィニッシュのために、走りながらできることを伝える。師範代は、代わりに走ることはできないが、奮起させる言葉で編集の駆動力を上げていく。

 

 物語編集術の稽古が駅伝とちがうのは、原作の読み替えからストーリーの書き上げまでの6つのお題を、自分で自分にバトンを渡しながらひとりで走りきるところだ。苦手なお題をなんとか越えたあと、迷ったことも、試してみたことも、次のお題で“読み”が、関係が、台詞がつながり、展開の可能性に化ける。テープをいち早く切ることではなく、豊かに編み上げることを求めて、振り返り振り返り走るのだ。

  • 野嶋真帆

    編集的先達:チャールズ・S・パース。浪花のノンビリストな雰囲気の奥に、鬼気迫る方法と構えをもつISISの「図解の女王」。離の右筆、師範として講座の突端を切り開いてきた。野嶋の手がゆらゆらし出すと、アナロジー編集回路が全開になった合図。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。